EURO2008 ドイツ対トルコ / 準決勝1
- Date
- June 26, 2008 11:00 AM
- Category
- EURO2008
■Germany 3 - 2 Turkey
この試合の最も大きな障壁は、WOWOWの試合解説に現れたネズミ男岡田武史監督。サッカーを見ていないと公言していたように、まるで素人かのようなコメントから、監督らしいことをいっても日本代表で全く実践できていないことを発言しまくり、まずはそれを自分のチームで実践ないし、それらしい方向性が見えるような戦い方をしてからにして欲しい。簡単な言い方をすれば「お前が言うな」。試合中に出てくる言葉も見当違いなものが多く、「バラックが動いておらず中央ででーんと構えているだけ」と発言している最中に出ていたスタッツでは、バラックの走破距離は二番目に多く、むしろ多く動いていることが証明されている。直後のプレイでサイドに流れたら「動き出しました」と前言撤回。チーム自体のイメージも古いイメージで凝り固まっていて今のチームを知らない発言ばかり、選手個人に対する発言も先入観だけ。
試合に関係ないところはそれぐらいにして、内容――の前に、トルコのことを少し。
試合前にはベンチ入りメンバーは二人になってしまうんじゃないかといわれていたトルコですが、実際には三人フィールドプレイヤーがベンチ入りして辛うじて使える状態で、それ以外にも一応登録はされていたわけで、控えキーパーがフィールドプレイヤーとして出場する事態は避けられました。その辺はこのレベルの大会でして欲しくないことでしたから、いいことでしたね。ちょっとがっかりでもありましたけど(笑
試合開始時に問題視されたドイツの運動量の無さはそれほど大きな問題ではなく、ヨアヒム・レーブ監督が先発メンバーを変更してこなかったことの方が問題なんです。ポルトガル戦は、1トップにすることで中盤の支配力を上げながらポルトガルのボールポゼッションを上げきらないようにすることや中央のケアをする意図があったとしても、この試合で1トップを維持する必要はどこにもない。トルコの攻撃が前がかりになったとしても人的な問題から中央に人を割けるわけではないですから、中盤の人数を多くしても特別大きな影響はないんです。結局の所、ポドルスキはどうやったって守備をしないわけですから、そうならば最初からクローゼと2トップにしてしまって守備の部分を他の選手に担当させてしまった方が安定するんですけどね。この辺の状況に合わせたメンバー変更を予選ではやっていたんですが、本大会に入ってから硬直してしまっているのが彼の評価を落としている要因ですね。
このポドルスキが守備をしない負担が同サイドのラームにかかっていたんですが、最初の失点も二つ目の失点も彼の所。一つはスローインからポドルスキと動きが被ってのもので、守備をしない彼の分をラームが読んで動いたら予想外の動きをしてしまってああなった、とでもいうべきでしょうか。約束事としてはラームの動きの方が正しく、ポドルスキはスローインを入れた方をケアするべきですから、ラームを責めるのは厳しい。それよりも中の対応がお粗末だったのはいうまでもなく、レーマンがコーチングをして対応を決めなければいけなかったんですが、それも見られませんでした。それ以外にもアルティントップのフリーキックをクロスだと思いこんで予め前にポジショニングをして、さらに飛び出し、危うくそのまま決められそうになったり、コーナーキックやサイドからのフリーキックのボールも最初からクロスと決めてかかって前目にポジショニングをして自ら危うい場面を生み出すなど、2002年のワールドカップでシーマンがやった凡ミスを彷彿とさせる、年齢から来る身体能力の衰えを読みでカバーしようとする悪い癖が出て、チーム全体のリズムを崩しかねない動きをしてましたね。もしこの試合で負けるようなことがあれば、彼が全責任を負わなければならなくなるくらい悪い動きですヨ、本当に。二失点目のニアサイドを割られたときも、ラームがお粗末だったとはいえ、周囲を予め確認できてなくクロスが自分の所まで転がってくるのを前提としたポジショニングをして、キーパーの責任にしかならないニアサイドをぽっかりと空けたままボールが来るのを馬鹿みたいに腰を落として待つだけ。あれでは失点するのも当たり前。ボールを取るのなら自分から取りに行かなければなりませんし、取りに行かないのであればもっとニアサイドをケアすべきだった。ディフェンダーへのコーチングを含めてね。だからあれほどこのポジションのミスが最大の不安要素だと大会前から書いていたのに。
トルコの方も、キーパーの不安がつきまとっているわけです。前の試合から出場するようになったリュシュトゥもミスの多いキーパーだというのは周知の事実。現に前の試合でも幾つかのミスと致命的になりそうな飛び出しの判断ミスもあり、この試合は両キーパーのミスが試合を分ける重要な要素になるだろうと思っていたら、その通りになってがっかり。急造のセンターバックを助けなければいけないと思っていたとしても、あの位置からのアーリークロスであのボールスピード。フォワードの位置もペナルティエリアに入ったばかりのところで距離がある。それなのに彼は信じられないタイミングで飛び出して無人のゴールにクローゼのヘディングを許すなんてとんでもないことをしてくれたわけで、両キーパーのお陰で試合が台無し。
さて、ラームの部分をもう少し書くとすれば、この部分を利用してくるのはトルコのカズムとサブリという攻撃力のある二人なんですが、前述の通りラームとポドルスキがこちらのサイドは見ていた。ポドルスキの守備意識の低さはともかくとしてラームも守備能力が高いディフェンダーではないんですよね。ドイツの中では特別小柄で、右サイドバックを担当するアルネ・フリードリッヒやフリッツらと比べると落ちるのは事実。そのラームが攻撃力のある二人の攻撃をそのまま受け止めることは不可能で、守備に長けた選手であったとしても90分をお完璧に抑えることは出来なかったでしょう。それでもラームが先発したのはヤンゼンが信用を失ってしまったからで、ヴェスターマンという選択もあるんですが、彼の方がより横の揺さぶりに弱くスピードもないので、トルコの攻撃スタイルを考えるとラームを先発させざるを得なかったんでしょう。それにラームには守備の不安を補ってあまりある攻撃のバリエーションがありますしね。その得意なはずの攻撃回数が少なかったのは、守備の部分をカバーしなければならなかったから自重していただけで、実況解説ゲストの言うような彼自体の問題ではなかったように見えました。
ドイツの守備全体がラームのような危うさを抱えていたのは、トルコがしてくるサッカーが見えてこないのも要因の一つでしょう。グループリーグから通じて、「これ」という形が未だに見えてこないトルコに対応するには、ポルトガルのように両サイドの部分を使わせながら中をケアすればいい、というようにはっきりとした対応策がないんです。だから多くの場面でフォアチェックをするのではなくリトリートを選択し、相手に余裕がない場面でのみチェックをかけるという状況に応じた守備をしていました。さらに後半は前半の方向から修正をしたようで、状況判断の部分もだいぶ改善されていましたね。中央へ飛び込んでくる選手の少なさを利用して、左をメッツェルダーに多くケアをさせたり、前へメルテザッカーを出させてみたり、センターバックの部分を動かすことで他の手薄になっているところのカバーを目指してました。それが出来たのも怪我を押して出場したフリングスのバランス感覚あってこその戦術なんですが、何度もトルコがサイドの高い位置でボールを持ちながら、ペナルティエリア内に誰もいない場面が見られたように、思った通り。いくらアルティントップが運動量を武器に攻守に動き回り、アクセントをつけていてもエリア内にまで入り込めばカウンターを喰らった時に彼がいないと致命的になってしまいますから入り込めず、状況の改善は一向に出来ないまま、さらにカズムを左に回したことでラームの負担が減ってしまったのもありましたね。
最後のゴールはラームの意地だとかなんだとかいうのではなく、あれはドイツの一つの形であって偶然の形ではないんです。それまでのスロースタートも会場から吹かれる笛が病み上がりのメルテザッカーに判断ミスさせたり、ということもひっくるめて全てがどうあれ、最後にはドイツがピッチ上に立っているだけのこと。
「フットボールはシンプルなスポーツだ。22人のプレーヤーがひとつのボールを巡って闘い、そして最後にドイツが勝つ」とリネカーが言ったとか言わないとか。ドイツに対する侮蔑であり賞賛の言葉であると同時に、サッカーの本質を表してますね。
試合を支配しているものが常に勝者となるのならこれ以上簡単なことはない。もしそうならトルコはここまで勝ち上がる前にどこかに敗れ去り、ドイツもまたどこかに敗れ去っているだろう。07/08シーズンのバルセロナは常に勝ち、レアル・マドリーは負ける試合が多くなってなければならなかったはずだ。試合を支配することが何の意味も持たないのは、カウンターでの得点が多いこの大会では特に顕著で、支配を目指したチームが敗れ去っていることもね。でも今日の試合はお粗末。