■Lyon 0 – 3 FC Bayern Munchen
怪我人などによってセンターバックに問題を抱えるバイエルン・ミュンヘンは、デミケリスはベンチからのスタートになったものの、先日のブンデスリーガで負傷退場したヴァン・ブイテンを出場せざるを得ず、バドシュトゥバーがセンターバック、同じくコンディションの不安視されていたコンテントが左サイドバックを務めることになるいくつかのハンデを背負っていました。加えてリベリーを第一戦の退場から欠くことになっていましたが、リヨンもトゥラランを欠いていることと、第一戦のような長距離のバス移動が存在しないことと勝利してこの試合を迎えられたことを考えればバイエルンは多少有利な状況だと言えるのかもしれません。
最初にチャンスを迎えたのはバイエルンで、クリスが処理ミスをしてオリッチが持ち味のプレッシングによって奪いつつ裏へ抜け、中で待っていたフリーのミュラーにパスを出し、絶好のチャンスを得たんですが、外してしまい、不安定な試合開始の状態で一気に大きなリードを手にすることは出来ませんでした。
リヨンはある程度の高さにディフェンスラインを保ち、コンパクトな守備の中で前からチェックに向かい、バイエルンのディフェンスラインに余裕を持たせないようにして、少しでもコントロールがルーズになれば奪ってしまおうという姿勢が見えていました。それぞれが相手を掴まえておくために運動量を豊富にしながら縦のコースを切り、ボールを受ける瞬間には強く寄せてボールを後ろに下げさせ、前へのドリブルの展開をさせず、前への意識を削るには十分な守備をしていました。
相手を掴まえるための運動量はそのまま攻撃に繋がり、サイドにボールを預けて展開することの多いバイエルンに対してリヨンもサイドを意識した守備をしていた。そこから攻撃に移るときにもサイドのバストスらを利用したものが多く、サイドバックの裏を狙ってフィードをして、そのこぼれ球をオーバーラップしてきたサイドバック、あるいは中央が広う形が多く見られました。デルガドもゴヴーもサイドでプレイでき、バイエルンの高さやハイボールに対する処理に難のあるサイドバックとフィードに競り合うことで中央でヴァン・ブイテン相手に空中戦を挑むより遙かに確率がよくボールを収められていました。さらにサイドから攻めることで、バイエルンの特徴でもあるセンターバックがサイドのケアに出てきてしまう部分を利用して、ヴァン・ブイテンやバドシュトゥバーを引き出し、さらに裏を使って薄くなった中央へクロスを入れてくるのが主な形のようでした。
流れてきて受けようとするリサンドロ・ロペスやバストスをバドシュトゥバーやコンテントは掴まえ切れておらず、フィードに対応させてしまっていて、またヴァン・ブイテンも右に流れてこられると対応しなければならない。その時にリヨンがしているように前を向かせないぐらいに密着していられれば問題ないんですが、バイエルンの守備はそれほど相手に密着できておらず、動かれた後に動き出し、後手を踏む形で相手にボールへ先に触れる環境を提供してしまっている部分がありました。
両者のサイドでの攻防が序盤の主な部分で、バイエルンの攻撃もサイドに人数を割いたものでした。アルティントップは右でプレイする時よりも大きくサイドを利用する意識が強く、タッチライン際を縦にドリブルで利用をしていましたし、ロッベンにはシッソコを中心としてマークをつけておく。両サイドにきっちりとした起点を作りながらもバイエルンには多少の焦りに似たプレ猪狩、ファン・ボメルやヴァン・ブイテンが積極的に縦パスをフォワードに出してボールを失ってしまっていた。両ウイングが相手を引きつけておけるお陰でリヨンの中央に守備の厚みが無くなり裏を狙いやすく見えることもありますし、カウンターになれば縦のコースを切れていたマークも付かないために早めに裏を狙って、というのも理解は出来ましたが、距離が長くカットされやすく、効果的だとは思えませんでした。
それでもバイエルンは先のブンデスリーガで見せたような先細りの展開ではなく、しっかりとワイドに使っていることは大きく、ロッベンが中へポジションを移せばラームが大きく空いたスペースへと上がり、左はアルティントップが使い、コンテントがサポートする。きっちりとペナルティエリア横までドリブルで持ち込んでいましたし、サイドバックとの連携もできている。あとは中へ勝負する姿勢が見られれば最高の状態だったんですが、それを見せるよりも早く得点をしたことでそれ以後はそこまでをする必要が無くなりましたし、試合の大きな流れを決めてしまっていました。
ロッベンが中に入った状態でスローインになり、そこからさらに左にまで進出したことでリヨンはそれぞれがマークする相手を失い、全体のゾーンに幅を持たせることも厚みを持たせることも出来ていませんでした。中盤の選手たちの足は止まっていて裏へ抜けるミュラーへ対応したのはディフェンスラインの選手たちだけ。他がただ足を止めて見ているだけでスペースを埋めようともカバーに向かおうともしていなかったことがオリッチのゴールを呼び込む結果になっていました。
この得点によって三点が必要になったリヨンは苦しく、それまでのようにマークの厳しさをもたらすことが出来なくなり、バイエルンの縦パスに対して予め寄せて前を向かせないようにしておくことが殆ど出来なくなってしまっていました。攻撃にしてもサイドでまず受けさせて裏へ抜ける一手間をかけることが少なくなり、中央に寄った位置で直接裏へ狙うことも多くなり、サイドで落とせていたからこそ利用できていたクロスも回数を減らしてしまい、きちんとした形を作ることができなくなってきていました。失点後のチャンスをバストスが決めていれば、まだ違った展開をもたらすことが出来ていたのかもしれませんが、それも外してしまったことで大勢は決まってしまってしまい、試合を落ち着かせてしまった。
バイエルンは守備に重点を置くだけで問題なく試合を運べるようになり、中盤のシュバインシュタイガーとファン・ボメルを攻撃のサポートのために前へ上げることなく、相手のカウンターとなる一歩目を押さえるため距離を縮めておけるようになり、前を向かせる回数も減り、後ろから追いかける形の守備も減り、安定をもたらしていました。攻撃は、リヨンが三点を必要としているために人数をかけていられなくなったことや、予め掴まえておけなくなったことで、カウンターを中心として少ない人数でも前へ勝負をすることが出来るようになり、ミュラーやオリッチが相手を引っ張りつつロッベンをフリーにさせてドリブルで仕掛ける。裏へボールを出して走らせる回数を増やし、リヨンのディフェンスラインを下げさせて運動量を増やす。距離を伸ばして精度の高い繋ぎをさせないようにしていき中盤の人数を減らして掴まえやすくする。
後半になってリヨンがフォワードの枚数を増やしたとしても、状況は大きな変化をもたらしませんでした。後半開始直後こそリヨンが多少の守備の復活を見せたものの、2トップにした効果が現れず、フィードにフォワードを競り合わせる回数は増えたものの、ゴミスはディフェンダーを背負ってのプレイが上手くなく、フィードへの対応もそれほど高い精度を持って出来ておらず、バドシュトゥバーにすら後方から抑え込まれてマイボールにする回数が増えたとは言えませんでした。前へ人数を送り込むことが出来た程度でしか無く、徐々に攻撃へと傾く意識が守備を疎かにさせて、バイエルンのカウンターをさせるようになってしまい、クリスの退場へと繋がっていく。
あのファウルの判断は仕方がないとしてもカードが出されるほどではありませんでした。深く入っていたもののスライディングはボールへと入っていて、イエローカードを提示するような悪質さはありませんでした。その後の審判を侮辱するような行為にカードが出されたことは仕方がないとしても、大きく試合を壊す判断だったのは間違いなく、ファウル自体の悪質さで言えばその後にあったマクーンとアルティントップとの接触の方が上でしょうし、そちらにこそカードが出来るべきでした。
これで数的有利にもなったバイエルンは、後方でボールを回しつつワイドに開いてカウンターのボールを引き出し、裏を狙って効率のいいサッカーを展開するようになり、無理をせずしてしたたかにオリッチの二点目を演出しました。リヨンはもう守備時にディフェンスライン一枚の人数しか揃えておけず、厚みを用意することは出来なくなっていましたから防げるものではなく、状況からも集中力を持続できているようにも思えず、さらにバイエルンの勝ち抜けを確実なものにし、より一層の意識を削られて、リヨンは組織としての攻撃は望めなくなってしまいました。こぼれ球を拾うための運動量も出せず、組織的な崩しも縦の連動も乏しく、オリッチのハットトリックを演出しただけ。
ここまでの余裕が出来てしまったバイエルンは、ブンデスリーガのために休ませる交代までもをしてこの試合を締めくくったものの、マッシモ・ブサッカ主審がもう少し違った判断をしたり、リヨンにいくつもあった決定機を枠に飛ばすことが出来ていれば十二分に解らない展開に持ち込めていた可能性があるわけですが、それでもいくつかの場面で見られたリヨンの徹底不足とオリッチのコンディションの良さを考えれば結果は変わらなかったかもしれません。