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EURO2008 ポーランド対クロアチア / グループB

2008 年 6 月 17 日 火曜日

■Poland 0 – 1 Croatia
4-2-3-1で戦うのなら、ユーロのグループリーグを通してこの試合のようにスモラレクはトップで使わない方がよかったんじゃないでしょうか。彼の身長もありますが、動きの質が1トップには向いておらず、ポストプレイヤーでも純粋なストライカーでもないんです。他の選手と連動して動き、出来たスペースを利用して得点を奪うタイプなので、どちらかといえば、セカンドトップに彼を置いて、もう一枚下の位置か左右どちらかのミッドフィールダーの位置でゲームをコントロールさせた方が、ポーランド代表のやり方からすると活きたんでしょうね。それが出来なかったのは、プレイメイカーがロジェール・ゲレーロで、彼の動きの質を見る限りでは守備を免除されて始めて輝くことの出来るタイプのようですから、トップ下に置いておかなければ輝くことが出来ない、一枚下げてしまうとあのトリッキーなプレイもドリブルも、ピンチを招きかねない位置ですることになるからリスクが高い、守備もあまりしてくれないだろうからもう一枚の選手に相当な守備能力と運動量がなければならない、というわけですね。左に流れることが多いので左で使えればよかったんですが、クジノベクを外すくらいならロジェール・ゲレーロを起用しない方を選択したほうがチームの完成度としていいわけで、実際に開幕戦はそうした、ということなんでしょう。

クロアチアは一位勝ち抜けを決めていたので、先日のポルトガル同様にリザーブ主体でしたが、ポルトガルと違うのはそれぞれがきちんと機能していたということ。さすがにペトリッチやクラスニッチはオリッチのような圧倒的なプレッシングをする選手ではありませんから、前から積極的にプレスをかけてボールを奪い素早いカウンターの形は見られませんでしたが、モドリッチの陰に隠れてしまいがちのラキティッチの献身的な上下動とゲームメイクが効果的で、上手く左からゲームを組み立ててましたね。あとはペトリッチがボールを持ち上がってラストパスを出すなど、ゲームをコントロールしていたのはこの二人。プラニッチのオーバーラップが効果的だったり、中央の底でゲームを支えていた二人も見事で、ニコ・コヴァチとモドリッチが組んでいたときとはタイプが違いますが、完成度の高さは恐るべきものがありますね。右サイドバックのシミッチも衰えたとはいえタイミングは的確。ボールコントロール一つ、状況判断一つとってもポーランドを圧倒していたのは事実で、ポルトガルがした不甲斐なく、試合のコンセプトも見えなかった試合とは雲泥の差がありますね。トーナメントへ出て決勝まで行こうとするのであれば、レギュラーメンバーに怪我や累積による出場停止で欠員が出たときも、遜色なく埋められるメンバーが必要になってきますが、クロアチアにその心配はないようですね。唯一はプラニッチが務める左サイドバックだけが明確な控えを提示できていないことでしょうか。何かあった場合にはシムニッチが務めることになると思うんですが、攻撃力はまるでプラニッチに及びませんし運動量も同じですね。守備能力だけが上回るだけ、と考えればここにもし何かがあればクロアチアは、同じサッカーを継続できるのだろうかと心配になりますが、それ以外のポジションに関してはその必要もなさそうです。

EURO2008 オーストリア対ドイツ / グループB

2008 年 6 月 17 日 火曜日

■Austria 0 – 1 Germany
ドイツ代表は開始からあまり攻めることは出来ず、殆どの時間帯においてオーストリアのペースでしたね。それはドイツが引き分け以上でトーナメントへの進出が出来ることと無関係ではなく、勝てば進出を決めることが出来るオーストリアとは全く別のメンタリティで試合に臨んでいたからでしょう。でも、ドイツはポルトガルのようにメンバーを落としていたわけでもなく、勝つべきだというのは意識として持っていたんでしょうが、3-4-3で挑んできたオーストリアにまるで形を作らせてもらえませんでした。
オーストリアの3-4-3は、守備時には5バックにも近い形になり、運動量が少なかったドイツの攻撃陣と相まって大渋滞をディフェンスラインに作り出していました。それをこじ開けるの非常に難しく、マリオ・ゴメスやクローゼらがもっと掻き回すように動き回り、的確に裏のスペースを狙えば、多少はチャンスを釣ることが出来たんでしょうが、これまでの試合同様に動きが堅い。カウンターをしてオーストリアの守備が整う前に攻撃をしようとしても、3トップが高い位置から中央に絞りがちなドイツのサイドバックのスペースを利用し、そこへウイングバックが加わって人数をかけてサイドを崩すオーストリアのやり方に、両サイドハーフですらディフェンスラインに吸収されてしまっていたドイツでは鋭いカウンターができるはずもなく、連続してクロスを入れられることからフォワードも下がってしまいさらに連続して攻撃を受ける悪循環を作ってしまっていました。それでも失点をぎりぎりのところでしなかったのはドイツそのものなんですけどね。危うかったのは事実。
両フォワードはオフサイドを気にして一歩目の出だしが遅く、ポストプレイを要求するパスにしても一歩目の出だしが遅く、フォワードが主導権を持ったパスではなく、パスの出し手が主導権を持ったパスだとはっきりして、出てきたパスに反応しているだけ。それでも調子がよければ相手より先に触ることが出来るんでしょうが、一歩が明らかに遅いんで、ミスになってしまうことが多かった。さらにはクローゼはゴメスと組んでいると相手を活かすためだけのプレイをしているように見え、もっと効果的な動きが出来るはずなのにそれをしないでいる時間が長いんですよね。ポドルスキと組んだあとはシュートに持っていける動きをするようになりましたから、ゴメスにかかっているプレッシャーを外すためにも得点を取らせておきたい、と気持ちの表れなのかもしれません。ゴメスの調子を上げることがチームのプラスになるとしても、クローゼの積極さが出てきた方がよりドイツのためになると思うんですが……。

この試合の行方を決定づけたのが選手や監督ではなく、審判だったのは非常に残念なことです。国際大会におけるスペイン人審判の異質さは際だっていて、今大会、メフート・ゴンザレス審判が裁いた試合がもう一つあったと思いますが、他の国の審判に比べファウルの基準がずれていてカードの枚数も多かった。いい評判はないですね、スペイン人審判は。
そしてこの試合でも、理解しがたい形で両チームの監督を共に退席処分にしてしまい、その後の展開を大きく変えてしまっていました。特にオーストリアにとってこれは痛い判断で、3-4-3の形で奇襲をかけるほどのことをやったものを、アシスタントコーチがどれだけ把握し、それに添った選手交代が出来たのか疑問の残るところで、細かな部分では、後半になってディフェンスラインから早いボールを展開してサイドを切り崩す場面が減ったのも、もしかすると監督がいなくなった影響なのかもしれません。戦術家としての顔を失いつつあるレーブ監督がいなくなってもドイツはあまり影響を受けませんでしたが、オーストリアにとっては致命傷にも近かった。お願いだから、リーガ・エスパニョーラでそうであるように、試合を壊しまくらないでください。イトゥラルデ・ゴンザレスよりはこれでもましだとはいえ、スペイン人審判は駄目だよ、大事な試合で起用しては。

バラックのフリーキックが決まったときのオーストリアの対応はあまりにもお粗末。ボールを動かしたあとに詰める選手がおらず、あれではプレッシャーがないのと同じだから簡単にゴールを決められて当たり前。守備の綺麗な形は両チーム共になく、人数をかけて攻撃を受け止めるだけ。状況に合わせた守備も少なく、少なくとも守備の部分の見所は少ない試合でした。攻撃はオーストリアの前半はサイドの徹底利用で興味深かったんですが、後半、特に失点をしてから積極性を失って慎重なパスに終始してしまったんで、興味を失いました。

EURO2008 スイス対ポルトガル / グループA

2008 年 6 月 16 日 月曜日

■Swiss 2 – 0 Portugal
両チームが敗退とトーナメント進出を決めていて、本来はこの試合に価値はなく見るほどのこともなかったんですが、一応見ておきました。何のことはない、開催国のためだけの試合でしたけどね。

ポルトガルはメンバーを大幅に入れ替えて、これまでの試合で出られていなかった選手を中心に据えて、継続出場はペペとパウロ・フェレイラとリカルドぐらいでしょうか。対するスイスはフォワードに怪我人が多く出ているものの、キーパーのズベルビューラーとフォンランテンだけが入れ替わった程度。いくらリザーブだとはいえ、ポルトガルの選手たちでしたから、実力が大きく落ちるわけでも戦術的に大きく変わってしまうわけでもなく、勝ちを開催国に譲るつもりでこのメンバーを選んだのではないことは、ファウル数や出されたイエローカードの数から見ても明らかでしょう。
ポルトガルの選手たちがそれでも上手くいっていなかったのはディフェンスラインの部分が不安定だったのが大きかったのかもしれません。ペペはずっと出続けていますが、彼がディフェンスリーダーになれるほどの経験を積んでおらず、ラインコントロールもいまいち。ブルーノ・アウベスにしても高さやパワーはあっても横の動きがよくなく、試合勘の問題から不安定でしたし、右のミゲウにしても同じですね。いくつものパスミスをして決定的チャンスを与えてしまうミスも犯し、セットプレイでは簡単にシュートをされてリカルドが止めなければ、もっと早い段階で失点していてもおかしくなかった。中盤の底を担当したフェルナンド・メイラも悪くはないんですが、やはりスイス側が持つモチベーションと比べると、ポルトガルの選手が持つそれは弱いんですヨ。どこかきちんと統率しきれていない印象が強かったんですが、最後のPKだけはポルトガルのミスではありません。あれは共催国からのプレゼントでしかなく、ああいった行為がオーストリア対ポーランドでもありましたが、大会の価値とチームが勝利した価値を落としているのを気付かないのだろうか。本当に残念でならない。

ポルトガルの攻めも守備も、前からの切り替えが非常に遅く、デコを中心としたメンバーがフォアチェックからコースを限定してプレスをすることでディフェンスラインの負担を軽くするんですが、今日の中盤はまるでその役目を担えておらず、どちらかといえばフォアチェックよりも下がって陣形を整えようとする意識の方が強いようでした。さらにクアレスマにしてもナニにしても結果を残してスターティングメンバーとして次節も出場したいという意識が強すぎて守備が雑でしたから、その部分の負担が他にかかっていたのもあります。ナニもクアレスマもドリブルの技術は素晴らしくてもバランス感覚はまだまだ荒削りで、スローダウンさせることで後ろの上がりを促して人数を多くした攻めを多用してもよかったように思いますし、エウデル・ポスチガも序盤は特に酷くて、得点を焦るあまりオフサイドエリアに出続けて気付かないままボールを要求し続けていたり、相手のミスから得点チャンスをプレゼントされた場面でも迂闊すぎて得点できなかったり、と印象が悪くなるプレイばかりで、彼が今大会の残りに出てくることはなさそうです。
前半で得点できるチャンスは多かったんですけどね。それをものに出来ない選手たちが控えにいてもジョーカーとしては使えませんから、スタメンが頑張るしかない。もしスタメンが完璧に抑え込まれたらあのメンバーで変化がつけられるのか、と考えると、トーナメントを勝ち抜いて優勝するためには不満の残る出来でしたね。主力を休ませられたのが好材料だっただけで。

EURO2008 トルコ対チェコ / グループA

2008 年 6 月 16 日 月曜日

■Turkey 3 – 2 Czech
グループリーグ最終節に相応しい劇的な幕切れと後味の悪さ。

序盤のペースは完全にチェコのもので、中への意識が強いトルコのパスをチェコの綺麗な4-1-4-1のラインが中盤のスペースとパスコースを消し、中盤から前へボールを出させないプレスを完全にこなしていました。全体で見るとトルコの方が大幅にパスの成功数とポゼッションでは上回っているんですが、効果的なパスをさせていなかったという点ではチェコの守備が上回っていました。それが続いたのは、後半が開始してチェコ側が選手交代を利用してフォーメーションを4-3-3に近い形へと変化させるまでで、それ以降は、サイドから攻める意識が強くなったトルコの攻撃を、4-1-4-1のラインを形成したのでは止められませんから、徐々に統制されたラインが崩れて、ボールが来る、来ないに関わらず、ペナルティエリア内に選手を入れてしまうことが多くなってしまい、深い位置までえぐられることでクロスを入れられる回数も増えてしまっていました。それがあのチェフのミスに繋がったのかもしれません。雨が降っていなければキャッチングミスをしなかったんでしょうが、天候とボールのコンディションを考えれば、あれは単なるミスでしかなく、それを生み出したのは、捨て身の攻撃で延々と攻撃を続けるトルコが圧倒的にボールを支配してチェコは攻撃が出来ず完全に受け身に回ってしまっていたことでしょう。キーパーとしてはその流れを断ち切るために、キャッチングをして選手を落ち着かせ、フォーメーションを整える時間を得ようとした。ただそれだけのことがあれだけの結果を生んでしまったわけですね。そこに至るまでのトルコの攻撃は右からのクロスは数多く入れられていましたが、カズムとアルダが右サイドでプレイし、ローテーションのように動いていましたが、既に飽和状態になっており、そこへアルティントップも来て、事実上三枚が右サイドの高い位置でプレイしていたわけですから、あまり上手くいっていなかった。アルティントップが中へ絞ってバランスを取る動きになったときは上手く回っていたんですが、それでも縦関係の二枚ではなく同位置での二枚ですから、連携はいまいち。抑えられるだけの要素は残っていて、あと数分を耐えることが出来ていれば、焦りから自滅していた可能性すら見えてきていました。それだけに惜しく、失点の動揺からあっという間に逆転されてしまったのも――。

序盤のチェコの攻撃は、縦へのロングパスからコレルがポストプレイをし、右ウイングとセカンドトップを兼任していたシオンコのフリーランニングで攻めたり、クロスを送り込むことで、少ない手数で形を作っていましたが、左からの形は極端に少なく、プラシルのフィジカルの弱さを突かれて抑えられてしまっていましたね。両サイドが機能していればもっと楽に攻めることが出来ていたんでしょうが、右からだけでも得点を出来たのはマテヨフスキーがきっちりと中に入ったシオンコの代わりに右へ流れたり、パスを散らす役目を担い、バランスを取ることが出来たからでしょう。ヤロリームになってからこの部分が弱くなり、それが押し込まれる要因にもなっていたようです。怪我での交代だったので、どうしようもない部分ですが、押し込まれてしまうようになった段階で足の速いバロシュやスヴェルコシュ、フェニンらのいずれかを投入して、クリアボールを人へ狙うのではなくスペースへ狙い、選手を走らせることで、状況を打開してもよかったですし、クリアボールの精度が落ちてこれるに収まらなくなったり、コレルが守備に戻ってしまって前に人がいなくなった時点で何らかの手を打って、連続して攻撃を受け続ける状況から解放されるように手を打ちたかった。特にチェコはまだ交代枠が残ってましたからね。

終了間際のヴォルカンがやったコレルへのプレイは状況を考えればレッドカードが出てもしかたがなく、この試合の逆転勝利の価値をも落としかねない悪いもの。それが最初に書いた後味の悪さなんですが、あのプレイはしっかりとボールが外に出たあとのプレイでした? よく見えなかった(確認する時間もない)んですが、ボールがラインを割るまでにそれなりの時間があった部分なので気になっているんですが、ボールが外に出る前にやってしまっていればPKだってあり得たはずで、せっかくの勝利をふいにしかねない軽率なプレイでした。勝っていてもエリア内でキーパーが交代枠を使い切っているのにやるべきでない。もしチェコが焦らず正確なミドルシュートでも打てていれば、圧倒的に優位な状態でPKなどまで持ち込めてしまえるのだから。

EURO2008 ギリシャ対ロシア / グループD

2008 年 6 月 15 日 日曜日

■Greece 0 – 1 Russia
基本のコンセプトは両者同じで、高い位置から守備をして攻守の切り替えを速くして攻める、というもの。後半は死力を尽くした戦いだったためにカウンターでしかありませんでしたが、当初のコンセプトはそんな感じ。
細部には違いがあり、ロシアはカウンターで利用するのは中央ではなくサイドのスペースと裏へのパスを中心とし、ロングボールよりもショートパスを繋いでポゼッションに近い形を作る。でも前へ出るスピードは落とさないから事実上のカウンターですね。
ギリシャの方はロングボールを前線の選手へ当てることが多く、終盤で繋いで裏へ、ということよりもポストプレイを基調としているように見えました。ただロングボールに正確性が無く繋がる場面が少なかったことや、ロシアのディフェンダーらに高さがあって簡単には競り負けない強さを持っているために、それがロシアのしているものと比べて有効だったとは思えません。ゲカスを投入したあとは多少裏への意識が出たように見えましたが、それはあくまで個人が裏を狙う選手だっただけのことで、チーム全体の意思統一として裏を狙うと決められていたわけでないようでしたから、その点で大きく劣っていたとも言えるわけです。
ロシアの方が、よりパスのスピードが速く、前線へ持っていくスピードも速く、裏を徹底して狙うことで後ろ向きのディフェンスを強いて、高さはあってもスピードのないデラスとキルギアコスを翻弄していました。さらにはダイアゴナルに走る選手の多さがマーキングを困難にしてフリーの選手を多く作り出すことに成功して、シュートを打てていました。これらは選手の質よりも動きの徹底による部分が大きく、どのレベルの選手らであってもここまでの徹底が出来れば、相手がよほどのレベルにない限り効果的な攻めは出来そうです。ただギリシャが優れていたのは最後まで集中を持続していたことで、ロシアが裏に抜け、両センターバックが追いつけなかったとしてもシュートコースに体を投げ出して防ぐことも、辛うじて足が届く場面もあり、それが一失点に抑えられた要素でしょう。

両者共に負ければ敗退必至だったために攻撃が中心となっていて、見ている側とすれば面白い試合だったんですが、そうなると逆に書くことが無くなってしまう(笑

EURO2008 スウェーデン対スペイン / グループD

2008 年 6 月 15 日 日曜日

■Sweden 1 – 2 Spain
スペインにとって誤算だったのは、プジョルとシャビという中心人物二人が負傷し、大事を取って交代しなければならなかったことでしょう。それでも前日の日本代表のように、条件が緩い中でリードしているにもかかわらず、負傷している中心選手を引っ張り続けるという愚かなことはせず、スペインは早々と交代させていましたね。グループリーグ全体を考えれば、この試合が一番難しい相手となるわけで、勝ち点が1になってしまってもまだ大丈夫だと言えるぐらいに、スペインにとっては緩い条件で、スウェーデンも似た状況でしたから、大事を取るのは当たり前。怪我から復帰後コンディションが上がりきっていないイブラヒモビッチをスウェーデンが下げたのも、こちらも食中毒から復帰後まだ本調子ではないイニエスタとこの試合で怪我をしたシャビを下げたのも、これが状況を考えれば当たり前。日本代表の選手交代が異常だったというだけでしょう。

スペインの攻撃は開幕前に危惧していたとおり、ポストプレイを中心として相手ディフェンダーの前でボールを受け、そこから展開しようとするものへ変化してしまっていました。一試合目は裏への意識が高く、ディフェンダーのフォアチェックで体を寄せられて奪われそうになる逆を突けたのが大きかったんでしょうが、この試合はことごとくディフェンダーに体を寄せられて満足のいく形をペナルティエリア付近で作れていませんでした。いくら中盤の構成力が高くパスを回し続けることが出来たとしても、パスの受け手の位置がディフェンダーの前であれば体をぶつけるだけでその後の展開を抑えることが出来、精度を落とすことが出来るわけですから、中盤からのパスに対する恐怖感がまるで違ってきてしまうんですね。裏へ出され続ける方が、ディフェンダーとしては一本でも決まってしまえばそれが失点になるがためにより恐怖を感じるものであり、後ろへ走らされることで消耗もしますから、スペインはロシア戦同様に裏への意識を強く持つべきでしたね。ただそれを上手くケアをして、裏へ出る動きをしないようにし向けていたのがスウェーデンのディフェンスで、ある意味ではそちらの方が一枚上手だったとも言えるわけで、ビジャやトーレスに非はないのかもしれない。
ロスタイムのゴールが、カプデビラが相手の裏へ出したパスだったというのも何かこの大会のスペイン代表を占える要素になるかもしれませんね。あのパスを意識的に出し続けることが出来れば、ディフェンスラインを下げさせる効果も生まれてきて、豪華な中盤が余裕を持ってパスを回すことが出来るようになり、ミドルシュートをも狙える環境になっていくはず。逆にそういったパスが今後でなくなっていけば、相手にとって抑えるべきポイントが明確になってしまうので点を取ることが難しくなっていってしまうでしょう。
狙うべきは裏。

スウェーデンのサイドアタックがギリシャ戦とまるで違い、コーナーキックを一本も奪えないままだったのはヴィルヘルムションがいなくなってしまったことと関係あるかもしれません。代わりに入ったエルマンデルも悪い選手ではありませんが、ヴィルヘルムションのように縦への突破力とドリブル、そして粘ってファウルを受けたりコーナーを得られる、ということは出来ていませんでしたし、リュングベリと連動したポジションチェンジから二枚で崩す、というのもありませんでしたね。もかすると、ズラタン・イブラヒモビッチの同点ゴールで、引き分けでもいいという意識が生まれてしまったのかもしれませんが、このチームの生命線はサイドアタックだと思ってますから、そこが機能するように改善していかなければ辛いかもしれません。

EURO2008 オランダ対フランス / グループC

2008 年 6 月 14 日 土曜日

■Netherlands 4 – 1 France
トータルフットボールという幻想を捨て去り、リアリスティックなサッカーを展開するようになったオランダはとにかく強い。ファン・バステン監督が自慢をするように相手に攻めさせたあとのカウンターはとにかく鋭く、ボールを追い越していく選手らにポジションは関係なく、ゴールを決めきるだけの決定力を多くの選手が持っているのも魅力。そのカウンターを支える守備がきっちり出来ているのも、この大会の活躍の要因なのでしょう。大会前からすると、まさか、の展開なんですけどね。ここまで二試合続けて完璧な形を見せられるとぐうの音も出ない。

フランスは第一戦からフォーメーションを変更してきて、ようやくリベリーに自由を与えられる4-2-3-1のシステムになったお陰で、攻撃の質はルーマニア戦と比べても格段によくなってました。リベリーが動く左右への振り幅が大きいがためにマークに付ききれていない場面が幾つかありましたし、両サイドのゴブーとマルダの二人、あるいはサイドバックと連携することによってサイドを切り崩してクロスを上げられるようになっていましたし、そういう意味では勝つことだって考えられる試合のはずでした。左にアビダルではなくエヴラが入ったことで縦の突破力も出来ましたしね。ただ失点をするタイミングが明らかに早すぎたことで、攻撃にどうしても出なければならない状況を作り出されてしまったことで、オランダのカウンターがやりやすい形を作らなければならなくなりましたし、中盤の底を務めるマケレレとトゥラランの二人よりも、オランダのエンヘラールとナイジェル・デ・ヨングの二人の方が、こぼれ球への反応も、ポジショニングも、攻撃の芽をつみ取るのも上手く、運動量も豊富でした。特にトゥラランのポジショニングの不安定さは如何ともしがたく、攻撃に集中するにしてもパスで試合を動かすほどの力もなければ、オフ・ザ・ボールの動きでフォワードを助けるほどの運動量もなく、守備でも貢献できずマークも離してしまいがちで苦しかったですね。そのぶんマケレレが前線へ飛び出してみたり、カバーリングで奔走したり様々な仕事をこなしていましたが、お世辞にも攻撃センスがある選手とは言えないので相手の脅威になるほどではありませんでした。もしもフラミニを呼んでいれば少なくとも運動量の面でチームを活性化させることは出来ていたでしょうね。それ以外の面ではジダンへ依存していたフランスの攻撃が未だにそれから脱却できていない印象を受け、プレイメイカーが居たとしてもそこへボールを配球する一枚後ろの選手が不足しているのもまた事実。あとはペナルティエリア内で抜群の強さを発揮できる本格的なストライカーがいないのも、苦しいプレイを要求されたときに苦しいまま誰かを頼んでプレイすることさえ出来ないまま終わる、という要因になっているのかもしれません。

オランダはエンヘラールを途中交代でアウトさせた采配には疑問でしたが、それ以外は的確で結果もついてきてますね。攻撃の迫力と鋭さ、華麗さに目を奪われそうになりますが、やっていることは至極現実的なサッカー。中盤の底に守備に長けた二人を置いてサイドバックの片方はオーバーラップを殆どしないセンターバックを兼任できる選手を置き、主に攻撃は前の数人で行う。ロングボールではなく繋げるサッカーを出来るのは攻撃のタレントが揃っているからこそのサッカーですが、がっちりと固められた守備からカウンターへ移行するのはよくある戦術。それをリスクを冒してどんどんと選手が上がっていくのもまたよくある戦術。
でもあの精度の高さでそれをやられるというのは脅威でしかなく、例えばカペッロからシュスターのレアル・マドリーがやったように、あれだけの選手たちを揃えたチームがカウンターをやると、下位のクラブがビッククラブを相手にするのとは訳が違い、一本のカウンターが決まればそれが得点に繋がるだけの決定力になる。それに加えて、ロッベンとスナイデルのキレっぷりはどうにもならないでしょ。