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EURO2008 オランダ対ロシア / 準々決勝3

2008 年 6 月 22 日 日曜日

■Netherlands 1 – 3 Russia
ロシアの戦い方の大半は予想していたとおりでしたが、オランダの攻めは予想していたよりもずっと悪かった。これまでオランダが大量得点を挙げて勝ち上がって来られたのは鋭いカウンターから得点できたからで、崩しきった得点がほとんど無いといっていいのはグループリーグ三戦目のエントリで書いたとおり。この試合も結局フリーキックから決定的なチャンスを得ることが出来たけれど、崩してチャンスを作ったのはほとんど無く、いつものオランダ代表そのままに守備も脆くなっていた。
まず守備から書くと、不幸な出来事があったとはいえブーラルーズを先発させるのはやむを得なかった。彼が入っているからこそここまでの堅守があり、オランダの不安材料だった部分を見事に封じ込めてくれていたのだから、本人が嫌がったとしても出しておくしかなかったんです。精神的に辛い状況であっても、彼のこの試合でのパフォーマンスは素晴らしく、堅固な守備を構築することが出来ていたんですが、問題は彼にはなく、彼を交代させてヘイティンハを入れたことでしょう。彼はユーティリティプレイヤーですから右サイドバックを務めることも出来ますし、それなりに守備力のあるセンターバックですが、後ろへの動きは非常に悪いんです。彼をもし途中投入するのであれば、センターバックのオーイエルを右に出して、センターバックとして起用していた方が、三戦目でそれなりに結果を残せたポジションですし、よかったはず。そこはファン・バステンのミス。で、ブーラルーズも守備はよかったんですがそれ以外の部分ではこの試合完璧だったとは言えず、三戦目から多くやるようになってしまったオーバーラップを継続してやってしまっていましたよね。前にカイトが入っていましたからサイドからの攻撃力というところからすると上がらなければならなかったんですが、でも彼が上がることで出来るスペースを考えると積極的に上がるべきではなく、状況を見極めて前でキープできたときにだけサポートするだけでよかったはず。
あとは両センターバックの裏へ向かうスピードの無さ、ラインコントロールの稚拙さがグループリーグで出なかったのがここにきて出てしまいましたか。大会前にこの状況を見てグループリーグで負けるだろうと予想していたんですが、よくここまで持った方でしょう。本来ならエンヘラールとナイジェル・デ・ヨングの二人が中盤のスペースをカバーし、相手に前を向かせて裏を狙わせないことでこの弱点をカバーしていたんですが、この試合のエンヘラールには運動量が無くボールホルダーを抑えることもこぼれ球を拾いきることも出来ず、途中交代で離脱する事になりました。デ・ヨング一人でカバーできるほどロシアの攻撃は薄くなく、運動量も少なくない。あの交代がされたときは既に攻撃に出なければならなくなっていましたから仕方ないとはいえ、エンヘラールがそれまで同様の動きが出来てれば、それだけで少しはマシになっていたでしょうね。

ロシアの攻撃と守備のやり方は共通していて人数をかけてボールを追い越しながらパスを相手陣内で繋げる。それをやるとオランダのカウンターの餌食になってしまいそうなものですが、これまでそれにやられてきた相手と違っていたのは、ボールを奪われた瞬間に、というよりもボールを奪われる前から守備が始まっていて、オランダにカウンターの一歩目となるパスを出させないようにしていましたね。その一本目のパスを不正確にすることでカウンターの出足が徐々に鈍っていって、仕舞いには連続したロシアの攻撃になるわけです。ボールをファン・ニステルローイなりスナイデルが収めて、それを追い越す動きを左サイドバックのファン・ブロンクホルストがする。そのパターンをさせないようにロシアはまずボールを奪われた瞬間にボールを奪いに動き、正確なつなぎからオーバーラップをさせないようにした。ある程度繋がれたとしても、寄せる速さから裏を狙うタイミングを計ることが出来ないためポストプレイをしようとするオランダのつなぎのパスをインターセプト狙いで相手の前に入り込むようセンターバックの出足を早め、二段構えでカウンターを阻止していました。一度その戦い方でカウンターが使えないという意識をオランダにすり込んでしまえば、グループリーグで見せたような鋭さは出ませんから、その時点で術中に嵌ってしまっていたと言ってもいいでしょう。
オランダは相手を崩すために敵陣内でパスを回して、ドリブルをして、とやっていましたが、それが全く効果的でなかったのは、得点を焦るあまりディフェンダーが前に並んでコースが限定されているにもかかわらずミドルシュートを多く打ち、ドリブルで切り崩そうとしてもサイドの広大なスペースを利用するのではなく密集している中へ向かっていこうとするのだからファウルは貰えてもそれ以上の効果は得られません。パスにしても回している間に本来ならサイドに残ってクロスを上げたり、一時的なボールの収めどころとなり形を作り直すためにサイドバックがサイドに張っていなければならないんですが、左サイドバックのファン・ブロンクホルストは左サイドでボールを回している間にセンターフォワードと同じ位置にまで入り込んでしまって得点を狙う動きをしてしまってました。中に入って得点を狙う動きをファン・デル・ファールトやスナイデルがしてくれないから彼が飛び込んでいったんでしょうが、それをするのは逆サイドの選手の役目で、同サイドの選手がそれをやってしまうと手詰まりになったときにパスを預けて作り直すことが出来ず、バックパスをする位置すらなくなってボールを奪われてしまうんです。何故彼があそこまで中に入っていってしまったのか解りませんが、残念ですね。
彼以外にも多くの選手が中への意識を強く持ちすぎ、右サイドに左利きのファン・ペルシーを置いているから彼も中に入ってくる、左サイドに右利きのアフェライを置いているから彼も中へ、と、飛び出す選手もなく中へどんどんと入り込んでも大渋滞を引き起こすだけでミドルシュートのコースも自分たちで防いでしまうようなもの。ワンツーで抜け出すスペースも消してしまいますね。
上手くロシアがカウンターの可能性を早めに諦めさせ、オランダがそれに乗っかって焦りを強めた、ただそれだけのことなんですが、グループリーグとトーナメントでは勝負の質が違うんです。選手を休ませたチームがことごとく敗退しているのが何の影響なのかは知りません。ただ言えるのは、中二日のロシアの方が総じて運動量が多く見えたこと。実際のデータが出るところで書いてませんから何とも言えませんが、ともかく予想通り。

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EURO2008 クロアチア対トルコ / 準々決勝2

2008 年 6 月 21 日 土曜日

■Croatia 1 – 1 Turkey(PK1-3)
トルコは何度も書いてきたハミト・アルティントップの中盤起用をやっと実現してくれて個人的には嬉しい限りでした。彼の献身的な動きは走破距離にも現れているはずで、恐らく両チームを通じて一番になっていることでしょう。これまで右サイドバックで起用していたことで縦の動きのみに限定してしまっていたことがどれだけ無駄なことか解ってもらえたんじゃないかと思うんですが、今日はセンターハーフとして出場していたお陰でプレイエリアはかなり広かった。中央を中心としてカバーの仕事をしていたのでリスクを冒した攻めはあまり見られませんでしたが、効果的だったのは事実。延長後半まで失点せずに耐えられたのも、もしかしたら彼がここで踏ん張っていたからかもしれませんね。
ただ、両者共に得点できなかったのは暑さによるミスだけではなく、選手の守備が優れていたからもでないんです。どちらの選手もこれまでのグループリーグの戦い方とは大きく違う戦術をとっていたからに他ならず、それが意図したものかそうでないのかは別にして、試合をつまらなくした要因でもあります。例えばクロアチアのこれまでの戦い方はオリッチの運動量を起点とした前線からのフォアチェックでパスコースを限定し中盤でカットをすることを目指したもので、高い位置からのプレスが機能し、カウンターが機能することで得点してきた部分が大きかったんですが、この試合はオリッチの追い込みも見られず、中盤の選手たちの連動した動きも少なかった。ボールを奪う位置は自陣ペナルティエリア前になりがちで、カウンターも鋭さを失っていた。
トルコもその影響を受けてある程度高い位置でボールを回すことが出来ていましたが、クロアチアの守備が後ろになっただけで意識まで低下しているわけではありませんから、組織だった攻撃をしないトルコが崩せるはずもなく、パスは回せているがそれ以上ではないままでした。ニハトを1トップにしてその下に4枚というよりはニハト1枚の下に両サイドに二枚いて、その下にスリーセンターがいたような形で、トルコの布陣もメンバーはそうでなくとも守備的でしたからね。
これまでは失うものが何もなかったトルコにグループリーグを突破してトーナメントに進出してしまったが故に失うものが出来た。だからリスクを冒せなくなってしまって、攻撃をするチャンスが多くありながら攻撃が出来なかった。それはクロアチアも同じで3枚の司令塔を用意しながら誰一人ゲームを作ることなく走ることも追い越すこともなかった。ペトリッチ投入後も彼本来のポジションであるフォワードのファーサイドの位置を使わせてあげることなく、トップ下に置いて守備を重視させた。両者共に全くリスクを冒さずに攻めようとしていて、それが解消されるまでに80分を要していました。見ている側からするととんでもなくつまらない試合だったのはそのせいです。

リュシュトゥのミスは相変わらずで、延長に突入する前にも飛び出しの判断を誤りピンチになったのもありましたし、味方からのバックパスをコントロールミスして自陣ゴール方向に転がしてしまうなんていうのもありました。結局の所、彼は全く成長をしていないわけで、延長のところでも飛び出しの判断を誤ってモドリッチに先に拾われ失点。バルセロナに所属していたときの絶望的なまでの酷さを思い出すには十分だったんですが、彼が幸運だったのは味方が延長後半ロスタイムという状況で得点を取ってくれたことでしょう。ビリッチ監督からすると交代も認められずプレイを切るタイミングをいくらでも見いだせる中での失点でとんでもなく不運だったわけですが、延長に入る前にもっと攻撃的に行かせるようにし向けるとか、交代のタイミングをスルナが足をつったタイミングで交代しておくとか方法は色々ありましたし、それよりもまずトーナメントに入った途端に消極的になったチームに問題があるわけで、グループリーグ三戦目のBチームがした試合で前からのチェックを失ってしまっていたのをそのまま引き継いでしまったのが一番の問題でしょう。そのサッカーをするための構成になっていないんだからしてはいけない。あれは三戦目のメンバーだからこその戦い方で、一、二戦目のメンバーに近い形でするのであれば、その時にした戦い方にしておくべきでしょう。選手たちが悪いのかそれとも監督が悪いのか。少なくともトルコのやりたい形が見えないサッカーよりは上をいってくれるはずだと期待していたんですが、こんなくだらなくつまらないサッカーをするなんて…。
トルコが奇跡を起こしたのではなく、クロアチアが自滅したと取る方が自然です。

EURO2008 ポルトガル対ドイツ / 準々決勝1

2008 年 6 月 20 日 金曜日

■Portugal 2 – 3 Germany
ドイツが勝つためのサッカーをした、というのは身も蓋もない言い方なのでそれはしません。少なくとも、勝つためだけに引いて守りカウンターでのみ得点を挙げたわけではありませんし、得点の形も決して泥臭いものではない。最後の部分以外はいいサッカーだと思っています。

シュバインシュタイガーがクロアチア戦で犯した報復行為のレッドカードにはがっかりさせられ、彼の成長を疑いたくなったし、これからの出場も危うくなったんじゃないかと思っていたんですが、この試合で十二分に名誉挽回を果たして、全得点に絡む活躍はマン・オブ・ザ・マッチに相応しい活躍です。もとから正確なキックをもっていて、サイドから上げるクロスだけでなく、左サイドからの巻き込むミドルシュートも彼の得意技なんですが、左からのグラウンダーのクロスに飛び込んだ場面には驚かされましたね。体を張ることをいとわない選手ですが、左側でプレイしているときのボールを持ってドリブルを仕掛けるイメージが強くて、また、バイエルン・ミュンヘンでの右サイドでプレイしているときのバランサーとしての動きの印象が強くて、カウンターになったときに一枚であそこにいる、というのは今まではあまり見られなかったと思うんですヨ。あとは二点のアシストをしたフリーキックもよかったんですが、それよりもあの粘り強いディフェンスは大きくドイツを助けていましたね。ドイツは主に中のスペースを消す動きを中心としていて、サイドのケアはそれほど多くしていなかった。意図的にそうやっていたんですが、二失点目になった場面だけはサイドに多くの人数を吊り出されて失敗していました。
試合全体を通して言うと、中を固めてサイドのケアはサイドアタッカーの選手一枚に任せ、クロスを上げられることよりも中へのパスをケアする方を選んでいました。シモン、ボシングワの縦のラインが最も多かったんですが、そうやって縦へのパスは出させてもらっていたが、横に並ぶ選手たちへのパス成功数が低いのを見ても明らかなように横へのパスコースを切られていた証拠でもあります。その中でポルトガルのシモンやクリスチアーノ・ロナウドと両サイドバックが連携して攻めてくるわけですから、それだけでもサイドでドイツは数的不利を作られる。そこに状況を的確に読んでデコが流れて3対1の状況を作り出して攻めようとするのだから、大きな負担になりますよね。ドイツの左サイドはラームが粘り強く対応したとしてもポドルスキに守備の負担を求めるのは酷ですから何度も崩されていましたし、一失点目のプレイも彼の軽い守備から始まったことを考えればしかたがない行為。そのために中へ絞れるアルネ・フリードリッヒを右に置いていますから左からのクロスにはある程度対応できる。でもドイツの右側が左ほど簡単にやられることがなかったのはシュバインシュタイガーが中へのドリブルではなく、どんなフェイントをされても縦へのドリブルコースを消し続けたこととボールを奪うのではなく、マークし続ける粘り強さを持っていたことでしょう。

ポルトガルに本格的なストライカーがいないことをずっと弱点だと言い続けてきましたが、この試合のようにクロスでギャップを作り、ディフェンダーとキーパーの間にボールを入れ続けることが出来ればその必要はあまりない。でも得点できた場面や決定的なチャンスになってシュートまで持っていけた場面ではそうであっても、苦しいときにポルトガルは中へ向かってドリブルをしてパスで崩そうとする意識が働いてしまって、ドイツ人の密集している地域に特攻をかけているようなもので、そう簡単には崩れませんし、何より人数が多いから一本パスが通ってもシュートへ行く前に寄せられてしまう。そういったときに本格的なストライカーがいれば、サイドにあれだけのスペースを残してくれているのだからクロスを徹底的に放り込み、高さではなくタイミングの部分でドイツに真っ向勝負を仕掛けていってもいい。190cmを越える二枚のセンターバックに挟まれていても、180cmそこそこの選手がヘディングゴールを多々決めてしまうのがブンデスリーガ。クロスの質とストライカーの質が高ければ高いほど、身長の高さなんてものはそれほど有利な条件じゃなくなってくるんですヨ。ヌーノ・ゴメスもエウデル・ポスチガも勇気を持って何度も何度も挑戦できるストライカーではなかったのが原因かもしれません。もしくはドリブラーたちがより確実な崩し方を模索してクロスを上げようとしなかったのが原因か。
ドイツが、ポルトガルのように得点を出来る位置でファウルを犯し、フリーキックをあまり与えてくれなかったのも一つの要因でしょう。ドイツは二度のチャンスを逃さず決めてしまったのだから。

あと書くとすれば、ドイツはフリングスの負傷欠場でどうなるかと思った守備的ミッドフィールダーの位置ですが、ロルフェスがなかなかの働きをしていましたね。ドイツの守備の取り方は、中へ絞り気味の4バックの前に4人のセンターハーフを置いてバラック、クローゼ、という形だったでしょうか。味方によってはイングランド式の守り方で、ディフェンスラインとセンターハーフのラインの間にスペースが出来て、試合序盤に幾つか突かれたように危険なエリアが出来るんですが、ラインを低くし過ぎない、ラインが低くなったら前のラインも押し下げることでその部分を減らしてカバーしていました。だから終了間際のようなどん引きサッカーみたいになってしまったわけですが。
それはともかく、ロルフェスはフリングスのように一枚後ろに残ってアンカーの仕事をするのではなく、センターハーフとしての仕事に近かった。サイドバックやサイドアタッカーからのパスを中央で受けて配球する。状況に応じて前へも出るが基本は後ろ、というのはありましたが、彼とラームのパス交換が試合の中でもかなり多い部類だったのが、効果的にプレッシャーをかわせていたことを物語っていますね。
中二日のドイツが前の試合でスタメンの多くを休ませたポルトガルに勝った、といっても短期決戦の中では一試合休養を取ることが必ずしもプラスに働かないんで、どうだったんでしょうね。日程的にとてもドイツの方が厳しかったのは確かですが、それだけに肉体的にも精神的にも緊張を保ったまま挑めたのかもしれません。

EURO2008 ギリシャ対スペイン / グループD

2008 年 6 月 19 日 木曜日

■Greece 1 – 2 Spain
スペインは完全にリザーブメンバーでスタメンを休養させていましたね。やり方としてはポルトガル、クロアチア、オランダと同じく、突破を決めたチームだからこそ許される戦い方なんですが、その中でも一番大きくメンバーを変えてました。スターティングメンバーで出ていた中ではイニエスタだけがいつものメンバーで、あとはセスクと途中交代で入ったサンティ・カソルラぐらいでしょうか。対戦相手もポルトガル同様に敗退が決まっているギリシャ相手で、他の二カ国とは違いモチベーションを維持する上でも難しい試合だったのは事実でしょう。

スペインの攻撃手段は、これまで2トップだったところを1トップに変え、その下に四枚を並べた攻撃陣をポジションチェンジさせながら1トップのグイサがディフェンスラインを押し下げる役割を担ってました。ギリシャはそれにマンマーク気味に選手をつけて中盤でのポゼッションを抑えてディフェンスラインでボール回しをさせたかったようですが、序盤に何度かシャビ・アロンソがした大きなサイドチェンジと、あまりに頻繁なポジションチェンジにマークをずらされすぎて途中で諦めていたようにも見えましたが、基本は変わりません。スペインはその間に何度かマークをずらしてフリーになり裏へ、と効果的な動きをしているように見えますが、実際の所はグイサが孤立してしまってストライカーである彼をアシスト面で活用しなければならない苦しさが見えてます。もっとポストプレイに特化した選手がいればその選手に任せてもいいですし、スペースを空ける動きを得意とする選手がいるならその選手に任せてもいいシステムなんですが、スペインの中盤には飛び出していけるような選手が少なく、そういった戦い方をしても効果的ではないんでしかたないかなと、思うわけです。デ・ラ・レッドのシュートはそんな形でしたが、グイサは見事に相手ラインを押し下げてましたね。シュートももちろん見事でしたけど。

本来なら引き分けても関係なく、負けてすら構わない試合なんですが、それでも勝利できる強さはトーナメントに向けての好材料(毎回こんなのばっかりですがw)
特にスターティングメンバー以外を殆ど起用せずに、状況にある程度あわした戦い方ができたのを評価しておきたく、難しい試合になるだろうイタリア戦も途中交代で幾つか変化をつける際には、今日で他選手たちがどういった場面で出てくるかが鍵になるんですが、デ・ラ・レッドのように飛び出していける選手は貴重ですし、シャビ・アロンソの低い位置からサイドへ出される的確なロングパスも、イタリアがピルロ抜きでさらに堅いディフェンスになるかもしれないことを考えると十分に役に立つでしょう。意表を突いたハーフウェーラインからのロングシュートや、ペナルティエリア外からのミドルシュートも大きな武器になりますしね。マルコス・セナもそれは得意なんですが、イタリアが引けば考えてもいいかな。
セットプレイの弱さは相変わらずなので、そこさえ耐えられれば不安材料は小さい、はず。

EURO2008 ロシア対スウェーデン / グループD

2008 年 6 月 19 日 木曜日

■Russia 2 – 0 Sweden
ロシアがここまで魅力的なサッカーをするとは思っていませんでした。この大会で最も現実的で勝つサッカーをしているのはオランダでしょうが、それが魅力的ではないのはカウンターによってポジションを崩すことはあっても、彼らが持っていたトータルフットボールを捨ててしまったサッカーだから。これはあくまで個人的な感想で、オランダのサッカーが魅力的だと言う人もいるでしょうが、あれだけの選手を集めたチームがカウンター主体で戦うことの違和感がそう言わせるんです。

ロシアの前半は、攻撃の意識を強く持ち、全員がサイドに開き全員が中に入る、全員がボールを追い越し、全員が試みる意識を持っていた。パス交換のスピードがあまりにも速いのは、ポジショニングがいいからではなくポジションを取る動きが多く速く的確だから。どんどんとボールを動かしながら人が最も動き、混乱するスウェーデンの守備は、自分のゾーンに入ってくる人数が一人ではなく複数でマークに付ききれず、さらにそのマークに付くべき選手がすぐに自分のゾーンから離れてしまう。そんな状態で強固な守備を築けるはずがなく、運動量を同じように上げてマークをしようとしても、スウェーデンの攻撃陣も全て投入しなければ防ぐことは出来なかったでしょう。ただそれには難点もあって、ロシアの運動量は、前半だけで動きの少ない試合であれば一試合分に相当するほどに動いていますから、その影響を受けて前半終了間際の運動量の低下とスウェーデンの決定的なチャンスを数度作られる要因になったわけですね。後半になってから、ボールを動かす動きが減ったことや左右に大きく開く動きが減ったのもその影響でもありますし、前半と後半のプランを変えてしまったからでもあります。
ロシアが二点目を奪えたことでスウェーデンは勝ち上がるために二点が必要になった。そうなれば一点が必要なだけとは違い、攻撃に人数を多く出さざるを得ませんから、ロシアはカウンターによってもう一点を狙うだけでよくなる。しっかりとしたゾーンを形成しながら、プレスのタイミングを間違わないように連動して仕掛け、奪えばカウンター一本。こうなると魅力的なサッカーとはほど遠いやり方になってしまうので、興味は一気に薄れてしまうんですが、興味がスウェーデン側に移行しないのもまたこのチームのサッカーが面白くないから。
ラーションの動きの質はあまりにも素晴らしくて、彼一人が大きなアクセントになっているのは事実で、テクニックやスピードでそれをしているのではなくて、オフ・ザ・ボールの動きでチーム全体を動かすサッカーをしているんですね。でも彼が活かすべきはずのイブラヒモビッチのコンディションがあまりにも悪く、運動量が少なく、パスを出した後の動きが無く、パスを受けるときの動きもない。ここのだけではなく、スウェーデン全体の関係が、パスの出し手は一つでも早く先にと焦りから前への意識が強すぎるパスを出し、受け手は何とか確実につなぎたい、ボールを触ってなんとかしたいという意識から足下に受けたがる。意識のずれが攻撃の歯車をかみ合わなくしていて、状態を悪化させていましたね。
その意識のずれを作り出したり、意表をつく戦い方や試合中に戦術の思い切った転換をしたり、というところはヒディンク監督らしいやりかた。まぁ、とんでもない金額の報奨金の力ともいわれるかもしれませんがw

EURO2008 オランダ対ルーマニア / グループC

2008 年 6 月 18 日 水曜日

■Netherlands 2 – 0 Romania
クロアチアはスターティングメンバーを大きく変更をしても、自分たちのスタイルを殆ど変えることなくサッカーを進めることが出来、ポルトガルは全く自分たちのスタイルを作れなかった。オランダはどちらに転ぶのか、と見ていたんですが、どちらかといえばオランダは一軍でも二軍でもなくその中間に近い構成でした。もちろんここでいう二軍とは実力が落ちるとかそういう意味ではないので悪しからずご了承ください。

オランダはブーラルーズをそのまま起用しているところに、右サイドバックの適材がいないのではないかと勘ぐってしまうんですが、いざとなれば途中出場をしたメルヒオット以外にもナイジェル・デ・ヨングもオーイエルもできますから、選手が居ないわけではない。でも彼らが入ったときに今のスタイルを続けられない、ということなんでしょう。メルヒオットにしても堅固な守備からカウンター、というのにはあまり向いているとは思えず、どちらかといえば、今日は出場しませんでしたが、ジオことファン・ブロンクホルストの役割を右から担う方が合っているのかもしれません。でも不思議なもので、バベルが怪我をしなければ、ここの部分にほころびが出来ていたかもしれないんですよね。ブーラルーズは追加招集メンバーですから。
もう一つ書くと、オランダの守備はある程度の高さを無理矢理維持しているように見えました。後半のルーマニアが攻勢に出たあと、オフサイドの笛が増えたように思うんですが、あれは精度とタイミングの問題であって、統率され尽くしたラインでオフサイドを取っているようには見えず、もし裏を狙われたら、という部分のケアがあまり出来ていませんでしたね。カウンターへの対処も戻りは速くても組織だって出来ておらず、自分たちが得点している形を相手にやられたときに、そのままそっくり失点してしまいかねない危うさを感じました。ルーマニアの少ない人数の攻めでそれですから、人数をかけられるとかなり辛いんじゃないでしょうか。

ルーマニアのディフェンスは4-1-4-1を形成して、キヴをこの試合はアンカーで起用していました。左に入ることが多かったムトゥは守備での貢献が少なく、そこを突かれて何度か形を作られてしまいましたが、それ以外の部分では、二つの4人のラインが綺麗に構成されていて、距離も非常に近く、縦パスだけではずるずると下がらない堅固な守備ができていました。中盤でパスを収めさせて前に展開させるのも少なく、バックパスからロングボールは許容範囲でショートパスを繋がれたのは数える程度。決定的なチャンスを作られたもの、となるとさらに少なくてフンテラールにポストプレイをさせてロッベンがシュートを打った場面ぐらいでしょうか。
オランダの攻撃が、これまでの二試合とは違い、裏を狙う回数が少なくウイングもルーマニアのディフェンスに阻まれてボールをもらうことが難しく開始位置が低くなっていました。サイドでのドリブルも縦へのドリブルは許してもらえているような雰囲気でしたが、クロスに対して自信のあるルーマニアからすれば、それで十分なディフェンス。
これまで前に出てきた相手に対して鋭いカウンターで得点を挙げていただけに、どれだけ引いて守る相手を崩して点を決めることが出来るのかと思っていたら、得点は結局カウンターからでしたね。後半開始早々にルーマニアが人数をかけた攻撃に移行してきたところへ、二回連続してファン・ペルシーが裏を取って、そのあとにカウンター。相手の自信があるハイボールで勝負せず、グラウンダーのクロスを入れたのが功を奏しただけで、ちょっと遅れたもののカウンターの形であることには違いが無く、二点目も攻守両面に動いき精神的にも疲弊したルーマニアの足が止まっていたので、崩しきった得点、というのはありませんでした。その辺はがっかりで、これから先のトーナメントを占う上では不安点。一発勝負のトーナメントとグループリーグでは勝負の質が違いますからね。崩しきれなくて困る可能性が高いのはスペイン、ポルトガル、オランダのようなチーム。イタリアやドイツは崩しきれなくてPK戦になっても構わないメンタリティがありますから。スペインはPKの名手が多い国だからなんとかなるかもしれませんけどね。キーパーもキーパーなんで。

EURO2008 フランス対イタリア / グループC

2008 年 6 月 18 日 水曜日

■France 0 – 2 Italy
フランスがスターティングメンバーを変更してきたのは結果からいうと失敗しましたが、試みとしては悪くなかったと思ってます。ただディフェンスラインのデュラムを下げてアビダルにしたことは解せないんですよね。テュラム本人が前回の試合後に「ミスをした」と認めたように彼の失敗があったとしても、キャプテンを務める選手を一試合のミスで外すべきではなく、ギャラスも経験のある選手ですが、イタリアのやり方を熟知しているテュラムを置いておく方が、右にさっぱりだったサニョルに代えてクレルク、左にエヴラと攻撃に特徴を出せる二人を入れたのだから、カバーリングの面で安定していたかもしれませんね。
そこよりも本来なら変えるべき部分があって、ゲームメイクを担当する部分を、3試合通して一切いじってこなかったことでしょう。ヴィエラを招集してしまったことでまったくバックアッパーがいなかったこともそうですが、この低い位置でゲームを組み立てられるだけの人材を配し、前の豪華な人材を行かすことを考えなかったのがドメネクの采配ミス。トゥラランとマケレレの繋ぎでは、確実なパスこそ出ても長い距離にピンポイントで出せるわけではありませんから、大胆なサイドチェンジが出来ず裏へのパスも出てこない。だからといって、アンリやベンゼマがディフェンダーを背負ってプレイして特徴が出せるわけでもない。サイドからクロスを入れてもヘディングも強くないから足下へのグラウンダーを多用しなければならない。選手起用に大きな矛盾があるように思えてならないんですよね。なら何故トレセゲを入れておかなかったのか、とかトゥラランに替えてナスリを先発させ、マケレレと縦関係を作りつつゲームメイクをさせるとか、前二試合で攻撃が機能していなかったのだから、改善すべきでしょう。
対するイタリアのゲームメイクは、ピルロが担っているわけですが、低い位置から組み立てられることで、ロングパスもショートパスも変化がつけられる。この試合は前の運動量が少なく、力を存分に発揮していたとは思いませんが、この位置からでも自分たちの形でスタートできるのは大きく、ピルロを封じてもデ・ロッシが代わりにパスを出せるのも大きい。守備も安定してこなせてパスも出せる、そういう違いですね、この試合は。どちらか一方だけでは駄目なんです。

試合の流れを決めてしまったのが23分頃のPKでしょうか。アビダルがした行為は、ファウルに相当してPKを与えられるには十分なプレイでしたし、シュート体制に入っていましたから、カードが出てもおかしくはなかった。でもレッドカードを出すべきでしょうか。得点チャンスを潰したことはPKを与えることで補われていて、それにイエローカードを出して警告をすることでペナルティを与える。それでも十分なジャッジだったのかもしれません。でも、あれはあまりにも決定的すぎた場面だったことや、トニが前でアビダルが後ろ、という位置関係も最悪なものだったから、レッドカードであっても文句の言えるようなものではありません。ただ、試合は壊れましたね。
あれ以降、ピルロが自由にボールを持てるようになり、持てない場合にはデ・ロッシがボールを持てるようになる。余裕を持ちすぎたイタリアの選手たちはリスクを冒してオーバーラップをしなくなり、ゲームを支配し続けるチャンスを得ながら、それをしようとしなくなってしまった。守備でも運動量が落ちてプレスに行かず、ラインを整えて自分のゾーンを維持するだけ。ボールに向かっていないから、クロスを上げられる回数が増えて、下手をすればチェコの二の舞になることだってあり得たんです。お粗末なディフェンスを割れなかったのもフランスで、彼らはトルコにはなれなかった。あそこまでの必死さも可能性もなかった。
フランスにツキがなかったと言う人がいるかもしれない。でもツキを呼び込むだけの作業をしてこなかったんだと自分は思っています。あれだけの要改善点がありながら、そこ以外を改善してもどうしようもなく、ベンゼマのシュートが入っていれば、とか言ったとしても、クペが防いだ決定的なシュートの数を考えれば、それも言えません。
本当にツキがなかったのはルカ・トニ。彼のゴールが一本でも決まっていれば、これから先のイタリアにとって、ピルロが出場停止でも明るい材料になったんですが。