‘EURO2008’ カテゴリーのアーカイブ

EURO2008のまとめ

2008 年 6 月 30 日 月曜日

■大会開幕前予想

■本大会日程及び結果

グループA
開催日 試合カード 予想
6/7 Swiss 0 – 1 Czech ×
6/7 Portugal 2 – 0 Turkey
6/11 Czech 1 – 3 Portugal
6/11 Swiss 1 – 2 Turkey ×
6/15 Swiss 2 – 0 Portugal ×
6/15 Turkey 3 – 2 Czech ×
グループB
開催日 試合カード 予想
6/8 Austria 0 – 1 Croatia
6/8 Germany 2 – 0 Poland
6/12 Croatia 2 – 1 Germany ×
6/12 Austria 1 – 1 Poland ×
6/16 Poland 0 – 1 Croatia ×
6/16 Austria 0 – 1 Germany
グループC
開催日 試合カード 予想
6/9 Romania 0 – 0 France ×
6/9 Netherlands 3 – 0 Italy ×
6/13 Italy 1 – 1 Romania ×
6/13 Netherlands 4 – 1 France
6/17 France 0 – 2 Italy ×
6/17 Netherlands 2 – 0 Romania ×
グループD
開催日 試合カード 予想
6/10 Spain 4 – 1 Russia ×
6/10 Greece 0 – 2 Sweden
6/14 Sweden 1 – 2 Spain
6/14 Greece 0 – 1 Russia
6/18 Greece 1 – 2 Spain
6/18 Russia 2 – 0 Sweden ×
準々決勝
開催日 試合カード
6/19 Portugal 2 – 3 Germany
6/20 Croatia 1 – 1
PK1-3
Turkey
6/21 Netherlands 1 – 3 Russia
6/22 Spain 0 – 0
PK4-2
Italy
準決勝
開催日 試合カード
6/25 Germany 3 – 2 Turkey
6/26 Russia 0 – 3 Spain
決勝
開催日 試合カード
6/29 Germany 0 – 1 Spain

EURO2008 ドイツ対スペイン / 決勝

2008 年 6 月 30 日 月曜日

■Germany 0 – 1 Spain
ドイツの立ち上がりはよく、スペインの立ち上がりには堅さがあった。その隙をドイツは積極的に狙い、特に攻撃に多くの特徴を持つ左サイドから攻める事が多く、ラームとポドルスキの部分へさらにヒツルスベルガーやバラック、右から流れてきたシュバインシュタイガーが使うなど、全体を左側へ寄せ、スペインのバランスを崩すことに成功していました。右サイドのスペースをカバーしなければならないセルヒオ・ラモスを前に吊り出して面のスペースを突いていたんですが、そのケアの多くをプジョルがしなければならず、中に人数をかけることが出来ていれば、そしてドイツがクロスを上げるところまで持っていけていれば多くのことが動いていたのかもしれません。ただプジョルのカバーが的確で、二度ほど周囲との連携からサイドからのクロスをケアしきれない場面がありましたが、それ以外に彼のプレイを否定すべき要素はありませんでした。それもドイツがサイドからの攻撃を成功させられなかったようその一つ。
それと立ち上がりの部分では、本来なら中盤でスペースを埋めながら特定の選手を抑えきるマルコス・セナが、入ってくる人数の多さと多用さに誰一人捕まえきれない状況を作らされていましたから、大きなチャンスだった。そこで勝負を決めにかかるほどドイツは焦っていませんでしたし、様子を見なければならない時間帯で勝負のタイミングが訪れてしまったことが大きな不幸でした。それ以後のドイツに明確な形が出来なかったのは、左のポドルスキが、もともと運動量が多くなく試合から消えがちな選手だとはいえ、今まで以上に完全に試合から消えてしまって役に立たなかったことが多少なりとも影響しています。その分左のシュバインシュタイガーが多くのポジションチェンジとチェイシングをしながら試合に絡み続けていたのが印象的であると同時に、後半になって運動量を落とす原因になってしまっていました。
ヨアヒム・レーブがこの大会で評価を落としていると何度か書いてますが、この辺のポドルスキへの固執というか、思考の硬直っぷりが駄目なんですね。もうちょっと思い切った采配を出来る監督だったはずが本大会になって状況の見極めを誤るようになったのはとても大きい。逆にスペインのアラゴネス監督の采配が予想の範疇にあったとしても、その外にあったとしても、重要な駒をいとも簡単に目的のために外せる、その決断力の差もまた勝負を分けた一つの要因でしょう。

スペインは押し込まれる時間を多く迎えながら主な戦い方をポゼッションではなくカウンターに絞ることで対処していました。特にカウンターの場面でフェルナンド・トーレスにポストプレイをさせて押し上げをさせるのではなく、裏へ抜け出すことに徹底させたお陰でドイツに裏の意識を植え付けることでディフェンスラインを押し下げることに成功し、前半の得点と合わせて間延びした状況を作り出し、徐々に自分たちのペースに持っていけていました。そのしたたかさと共にドイツを苦しめたのは、ドイツがポルトガル戦と似たように中央を固め、サイドに比較的スペースを多く空けているようにしたため、イニエスタを中心としてドリブルを仕掛けることが出来るようになっていたことですね。ポルトガルのそれと違うのは、ドリブルが常にゴールの方向を向いたもので、クロスではなくグラウンダーでの勝負を使用というもので、抜ききる必要もクロスを上げることもパスを通す必要もなかったこと。スペイン側の意図としてコーナーキックでも構わないという意識があったからこそ、ドイツは中央を固めた守備でパスをカットしてカウンターに移行するというプランを実行できず、スペインのカウンター時に多く見られた逆サイドへ展開するボールの多さに振られてしまうことも増えて、組織だった守備を持続するのが難しくなっていました。そういったことの積み重ねがリードしたあと、特に後半の残り時間が少なくってきたあとの焦りを生み出させる攻撃の布石になっていましたね。

一点目であり決勝点のあの場面に焦点を絞るとすれば、あの一点を決定づけたのはフェルナンド・トーレスのスピードであり決定力なんですが、彼よりも決定的だったのは、ドイツの守備が二つのラインで成り立っていることを熟知していたシャビが、ディフェンスラインと中盤のラインのちょうど真ん中に出来るスペースに飛び込んだことでしょう。あの一瞬は中盤はまだディフェンスラインに吸収されておらず、前への意識も持っている状態だった。ディフェンスラインは裏への意識があって、さらにそれまでスペインが後方でのボール回しに終始していたことから前への意識をそがれていた。その意識のずれのまっただ中へ飛び出して、そこにきっちりとパスが出てくる意識の統一が素晴らしく、そこからのパスも本当にドイツにとって致命的な位置へ送り出している凄さ。ああ、もう、本当に凄い。感嘆しかでてきませんヨ。

スペインに訪れた戴冠の日を喜びながら、またもシルバーメダルに留まった彼の姿に涙しそうになった。うん、まぁ、スペインもドイツも好きなんだけど、レバークーゼン時代からバラックはアイドルだったし、比較をするならドイツ代表の方がスペイン代表よりも好きなんだ。スペインは代表よりもバルセロナの方が好きで二の次なんて思っていたけど、代表選手たちにもあったその意識がこの大会ではまるで感じられないくらいに一体になっていて、それが優勝の原動力なのかもしれない。

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EURO2008 ベスト11と最優秀選手を勝手に選出

2008 年 6 月 29 日 日曜日

本物の最優秀選手はEUROの場合は決勝終了後でしたよね。それよりも一歩先に勝手に選出してしまおうという記事です。もちろん決勝の前に書いていますから活躍は含まれませんし、決勝でどの選手がどれだけの活躍をして最優秀選手に選出されるかも知りません。これは予想ではなく、自分が勝手に印象度で選出しただけで、最優秀選手に重きを置いているよりもベスト11の選考の方がメインです。さらに個人的趣向に思いっきり偏っていますのでご了承ください。

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EURO2008 ロシア対スペイン / 準決勝2

2008 年 6 月 27 日 金曜日

■Russia 0 – 3 Spain
この大会のロシアが多くの試合でしていたような高い位置からの激しいプレッシングから攻撃に移るスタイルが出来なかったのは、前半からロシアがそれをする意図がなかったからではなく、スペインがそれを上手くかわしていたからなんです。スペインは前半の早い段階で一度奪われてしまったのでどうなるかと思ったんですが、その後は立て直せたお陰でプレッシングの影響を受けることなくプレイできるようになっていました。
あの高い位置からのプレスは全員が連動してプレスを行うことで機能するものですから、心理戦の要素が強く、一人でもそのプレスをしても効果がないと思って動きを鈍らせてしまえば、そこにスペースが出来、相手に逃げ道を用意してやることになってしまいますから、全員が首尾貫徹してプレスをし続けなければならないんです。しかし、スペインはそれをかいくぐるための方法を持っている。例えば先日にあった日本対バーレーン戦でも似たような光景があったんですが、あの時のバーレーンは日本の選手たちがプレスに来ると精度は関係なくロングボールを蹴り続け、プレスに来る意志を挫いてプレスをほぼ無効化していました。スペインの場合はバーレーンのようなことはしなくてもプレッシャーの中でボールを扱うことに長けていますから、一人がプレッシャーの中でキープし続けファウルを貰うことも可能ですし、側にいる味方にパスを出してプレスの外にある逆サイドまでボールを運ぶことも可能。相手ボールにすることなくプレスをかいくぐられてしまえば、ロシアはこれを続けたら奪えるという意識を持つことが出来ず、全員が連動しなくなっていく。プレスを受ける側は一度も奪われてはならず、プレスをする側は一度奪えればそのイメージを全員が共有し続けなければならい。難しさはありますが、この部分の戦いで敗れたことでロシアは武器としていた部分の多くを失ってしまいましたね。後半開始直後に一気に気持ちを入れ替えてプレスをしましたが、結局それをやっても無理だとスペインに見せつけられて、手薄になったところをカウンターで突かれることまでやられる始末。もし前半からこのプレッシングをどこまでもやろうとしていたら、ロシアの守備が初戦の時のようになってしまうのはもっと早い段階で訪れていたでしょうね。だから前半にプレスを早い段階で諦めていたのは正解だったと思ってます。

スペインは低い位置でボールを奪われる事こそほとんど無く、プジョルやマルチェナ、カシージャスといったところは殆ど目立つことはなく試合を終えましたが、高い位置ではチャレンジするパスの多さから奪われる場面は結構ありました。でもそこからカウンターに移らせなかったのは、マルコス・セナがカウンターに移る一つ目のパスをアンカーでありながらファーストチェックで潰し、カウンターへと連動して動き出す一歩目を躊躇させていましたし、他の選手たちの戻りも速く、守備の形は崩れなかった。プジョルが前と右のセルヒオ・ラモスが上がるスペースをケアし、セナが上記の部分とキーマンのアルシャヒンを徹底して封じ込め続ける。結局アルシャヒンが目立ったプレイを出来たのは終了間際のシチョフのヘディングへのアシストをしたくらい。その堅さはスペインらしさとは遠く感じますが、近年のリーガ・エスパニョーラを見ていればよく見られる光景ですから別に驚きもせず、よくまとまっているなぁ、と思うくらい。これまでの代表なら華麗なパスで観客を魅了し、守備でもほころびがないように見えることがあっても、それぞれの一部分から崩壊が始まることが結構あった。例えば練習中に殴り合ってみたり、民族的乖離からチーム瓦解していったり、スペインであるが故の難しさが常につきまとっていたんですが、アラゴネス監督が選手選考の段階で多くの批判を浴びながらそうならないためのチーム作りを徹底してきたおかげで、今回はその心配がまるでありませんでしたからね。ラウールを外したこともその一つの要因で、残念だけど妥当なものでしたから。

スペインの攻撃が明確に動き出したのはビジャが怪我をしてセスク・ファブレガスと変わってからかもしれません。それ以前にもビジャがスペースに出る動きをしながら相手を吊り出してみようとしたり、フェルナンド・トーレスと共にダブルポストのような形になって後ろの押し上げを促そうとしていたりしていましたが、前へチャレンジしなければならない選手たちが、シルバを含めて殆どしていませんでしたから、前後で分離しがちで、ある意味ではビジャとトーレスの個人頼みのサッカーになりかけていたと言ってもいいでしょう。でも1トップになったことで、というよりもセスクが多く動きチームを活性化させたことで、ロシア側のマークのずれを生み出し、シルバも動けるようになり、シャビが飛び出せる状況が出来てきた。スペースを利用しなければ攻撃が立ち行かず、飛び出さなければ人数が足りないのだから自然とそうなるわけですし、何より中盤の全てがボールを持っていても奪われない選手だから相互の信頼でオーバーラップを出来るというのも大きいですね。後方から前へと動きが出ることで、フォワードがポストプレイをするための後ろ向きの受け方をしなければならない状況が減り、前向きでボールを受けることが出来るようになり、それがさらに後ろからの飛び出しをしやすくする、という好循環になってました。そこからは速く、一点を取ってしまえば前がかりになる裏を突けますから、初戦と同じようになっていく。簡単なことではないけど簡単に見せてしまうテクニックが恐ろしいです。
でも自分にとっては、ドイツとスペインというよく知る二つの国が決勝で戦うことになってくれただけでもう満足。内容はともあれ、自分としては最良の大会かもしれない。

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EURO2008 ドイツ対トルコ / 準決勝1

2008 年 6 月 26 日 木曜日

■Germany 3 – 2 Turkey
この試合の最も大きな障壁は、WOWOWの試合解説に現れたネズミ男岡田武史監督。サッカーを見ていないと公言していたように、まるで素人かのようなコメントから、監督らしいことをいっても日本代表で全く実践できていないことを発言しまくり、まずはそれを自分のチームで実践ないし、それらしい方向性が見えるような戦い方をしてからにして欲しい。簡単な言い方をすれば「お前が言うな」。試合中に出てくる言葉も見当違いなものが多く、「バラックが動いておらず中央ででーんと構えているだけ」と発言している最中に出ていたスタッツでは、バラックの走破距離は二番目に多く、むしろ多く動いていることが証明されている。直後のプレイでサイドに流れたら「動き出しました」と前言撤回。チーム自体のイメージも古いイメージで凝り固まっていて今のチームを知らない発言ばかり、選手個人に対する発言も先入観だけ。
試合に関係ないところはそれぐらいにして、内容――の前に、トルコのことを少し。
試合前にはベンチ入りメンバーは二人になってしまうんじゃないかといわれていたトルコですが、実際には三人フィールドプレイヤーがベンチ入りして辛うじて使える状態で、それ以外にも一応登録はされていたわけで、控えキーパーがフィールドプレイヤーとして出場する事態は避けられました。その辺はこのレベルの大会でして欲しくないことでしたから、いいことでしたね。ちょっとがっかりでもありましたけど(笑

試合開始時に問題視されたドイツの運動量の無さはそれほど大きな問題ではなく、ヨアヒム・レーブ監督が先発メンバーを変更してこなかったことの方が問題なんです。ポルトガル戦は、1トップにすることで中盤の支配力を上げながらポルトガルのボールポゼッションを上げきらないようにすることや中央のケアをする意図があったとしても、この試合で1トップを維持する必要はどこにもない。トルコの攻撃が前がかりになったとしても人的な問題から中央に人を割けるわけではないですから、中盤の人数を多くしても特別大きな影響はないんです。結局の所、ポドルスキはどうやったって守備をしないわけですから、そうならば最初からクローゼと2トップにしてしまって守備の部分を他の選手に担当させてしまった方が安定するんですけどね。この辺の状況に合わせたメンバー変更を予選ではやっていたんですが、本大会に入ってから硬直してしまっているのが彼の評価を落としている要因ですね。
このポドルスキが守備をしない負担が同サイドのラームにかかっていたんですが、最初の失点も二つ目の失点も彼の所。一つはスローインからポドルスキと動きが被ってのもので、守備をしない彼の分をラームが読んで動いたら予想外の動きをしてしまってああなった、とでもいうべきでしょうか。約束事としてはラームの動きの方が正しく、ポドルスキはスローインを入れた方をケアするべきですから、ラームを責めるのは厳しい。それよりも中の対応がお粗末だったのはいうまでもなく、レーマンがコーチングをして対応を決めなければいけなかったんですが、それも見られませんでした。それ以外にもアルティントップのフリーキックをクロスだと思いこんで予め前にポジショニングをして、さらに飛び出し、危うくそのまま決められそうになったり、コーナーキックやサイドからのフリーキックのボールも最初からクロスと決めてかかって前目にポジショニングをして自ら危うい場面を生み出すなど、2002年のワールドカップでシーマンがやった凡ミスを彷彿とさせる、年齢から来る身体能力の衰えを読みでカバーしようとする悪い癖が出て、チーム全体のリズムを崩しかねない動きをしてましたね。もしこの試合で負けるようなことがあれば、彼が全責任を負わなければならなくなるくらい悪い動きですヨ、本当に。二失点目のニアサイドを割られたときも、ラームがお粗末だったとはいえ、周囲を予め確認できてなくクロスが自分の所まで転がってくるのを前提としたポジショニングをして、キーパーの責任にしかならないニアサイドをぽっかりと空けたままボールが来るのを馬鹿みたいに腰を落として待つだけ。あれでは失点するのも当たり前。ボールを取るのなら自分から取りに行かなければなりませんし、取りに行かないのであればもっとニアサイドをケアすべきだった。ディフェンダーへのコーチングを含めてね。だからあれほどこのポジションのミスが最大の不安要素だと大会前から書いていたのに。
トルコの方も、キーパーの不安がつきまとっているわけです。前の試合から出場するようになったリュシュトゥもミスの多いキーパーだというのは周知の事実。現に前の試合でも幾つかのミスと致命的になりそうな飛び出しの判断ミスもあり、この試合は両キーパーのミスが試合を分ける重要な要素になるだろうと思っていたら、その通りになってがっかり。急造のセンターバックを助けなければいけないと思っていたとしても、あの位置からのアーリークロスであのボールスピード。フォワードの位置もペナルティエリアに入ったばかりのところで距離がある。それなのに彼は信じられないタイミングで飛び出して無人のゴールにクローゼのヘディングを許すなんてとんでもないことをしてくれたわけで、両キーパーのお陰で試合が台無し。

さて、ラームの部分をもう少し書くとすれば、この部分を利用してくるのはトルコのカズムとサブリという攻撃力のある二人なんですが、前述の通りラームとポドルスキがこちらのサイドは見ていた。ポドルスキの守備意識の低さはともかくとしてラームも守備能力が高いディフェンダーではないんですよね。ドイツの中では特別小柄で、右サイドバックを担当するアルネ・フリードリッヒやフリッツらと比べると落ちるのは事実。そのラームが攻撃力のある二人の攻撃をそのまま受け止めることは不可能で、守備に長けた選手であったとしても90分をお完璧に抑えることは出来なかったでしょう。それでもラームが先発したのはヤンゼンが信用を失ってしまったからで、ヴェスターマンという選択もあるんですが、彼の方がより横の揺さぶりに弱くスピードもないので、トルコの攻撃スタイルを考えるとラームを先発させざるを得なかったんでしょう。それにラームには守備の不安を補ってあまりある攻撃のバリエーションがありますしね。その得意なはずの攻撃回数が少なかったのは、守備の部分をカバーしなければならなかったから自重していただけで、実況解説ゲストの言うような彼自体の問題ではなかったように見えました。
ドイツの守備全体がラームのような危うさを抱えていたのは、トルコがしてくるサッカーが見えてこないのも要因の一つでしょう。グループリーグから通じて、「これ」という形が未だに見えてこないトルコに対応するには、ポルトガルのように両サイドの部分を使わせながら中をケアすればいい、というようにはっきりとした対応策がないんです。だから多くの場面でフォアチェックをするのではなくリトリートを選択し、相手に余裕がない場面でのみチェックをかけるという状況に応じた守備をしていました。さらに後半は前半の方向から修正をしたようで、状況判断の部分もだいぶ改善されていましたね。中央へ飛び込んでくる選手の少なさを利用して、左をメッツェルダーに多くケアをさせたり、前へメルテザッカーを出させてみたり、センターバックの部分を動かすことで他の手薄になっているところのカバーを目指してました。それが出来たのも怪我を押して出場したフリングスのバランス感覚あってこその戦術なんですが、何度もトルコがサイドの高い位置でボールを持ちながら、ペナルティエリア内に誰もいない場面が見られたように、思った通り。いくらアルティントップが運動量を武器に攻守に動き回り、アクセントをつけていてもエリア内にまで入り込めばカウンターを喰らった時に彼がいないと致命的になってしまいますから入り込めず、状況の改善は一向に出来ないまま、さらにカズムを左に回したことでラームの負担が減ってしまったのもありましたね。
最後のゴールはラームの意地だとかなんだとかいうのではなく、あれはドイツの一つの形であって偶然の形ではないんです。それまでのスロースタートも会場から吹かれる笛が病み上がりのメルテザッカーに判断ミスさせたり、ということもひっくるめて全てがどうあれ、最後にはドイツがピッチ上に立っているだけのこと。

「フットボールはシンプルなスポーツだ。22人のプレーヤーがひとつのボールを巡って闘い、そして最後にドイツが勝つ」とリネカーが言ったとか言わないとか。ドイツに対する侮蔑であり賞賛の言葉であると同時に、サッカーの本質を表してますね。
試合を支配しているものが常に勝者となるのならこれ以上簡単なことはない。もしそうならトルコはここまで勝ち上がる前にどこかに敗れ去り、ドイツもまたどこかに敗れ去っているだろう。07/08シーズンのバルセロナは常に勝ち、レアル・マドリーは負ける試合が多くなってなければならなかったはずだ。試合を支配することが何の意味も持たないのは、カウンターでの得点が多いこの大会では特に顕著で、支配を目指したチームが敗れ去っていることもね。でも今日の試合はお粗末。

EURO2008 選手の評価と批判

2008 年 6 月 25 日 水曜日

ユーロ2008大会で、活躍を期待されながら活躍できなかった選手たちの評価を書いておきましょう。多くの場合に監督の責任がついて回っていますが、それでもピッチの上でプレイするのは彼らですから、その中で改善していくことが出来なかったのは彼らの責任でもあるわけですね。でもこれは悪意があって書いているのではなく、期待していたからこその落胆で書いているんです。その辺をお間違えなく。批判は書いてても楽しいものではないんで中途半端に終わっていたり足りない部分が多かったりすると思います。過度に自己満足のエントリなので多くの人にはスルーしてもらいたい部分でもあります。

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EURO2008 スペイン対イタリア / 準々決勝4

2008 年 6 月 23 日 月曜日

■Spain 0 – 0 Italy(PK4-2)
イタリアにもスペインにも90分で勝たなければならないという強迫観念にも似たプレッシャーは微塵もなく、延長に入っても構わないという戦い方をしてましたね。お陰で試合が動いたのは後半30分を越えた当たりから、と超スローペースの試合だったんですが、退屈な試合ではありませんでしたね。ただPK戦にはいるのを嫌がったのはイタリア。スペインの方も勝つために色々と工夫をしていましたが、リスクをお冒して攻め続けることをせず、人数をそれまで以上にかけて攻めることもなく、交代人事もバランスを崩してまで攻めを意識させなかった。ルイス・アラゴネス監督はなんとしてもPK戦より前に勝負を決めたがっている印象でしたが、選手たちの方が落ち着いていてバックラインからフォワードに至るまでの覚悟が見て取れました。PKの名手を多く生み出している国ですから。
逆にこういった戦い方になれていて、一本のチャンスさえられれば何とか出来てしまうだろうと意識を持っているはずのイタリアが勝ちを焦っている部分があって、交代もポジションの違う選手を交代させて前がかりの意識を持たせ、延長に入ってからはバランスを崩した攻めもサイドバックを中心にやっていました。PK戦を嫌がり、今のうちに得点を入れて勝たなければならないと思って負けたのが前日のオランダ。失う物のなかったロシアにやられた彼らとは違い、スペインも失うものを抱えていたために同じ轍を踏むことはなかったんですが、PK戦では勝負のポイントを失っていた彼らが負けるのは道理。
意外だったのはスペインがあそこまで落ち着き、崩せなくても焦りがなかったことですね。

試合開始当初の中盤はイニエスタとシャビの二人だったんですが、あの二人はどちらもピボーテ、そしてアンカーを務めることが出来るほどのバランサーであり、イタリアと戦うときのリスクマネージメントを考えてプレイしている部分が強く出ていて、パスもカットされる可能性が高い部分を嫌がって安全なパスを選びがちで、イタリア守備陣の間を抜けていく、一本のパスを出すことを嫌ってました。崩しきることを考えた場合それでは不十分で、隙間の少ないところをパスで回し、飛び出し、突っかけ、得点をしていくのがスペインなんですが、この二人の意識ではそれが出来なかった。失敗しない試合の入り方をするにはこの二人でなければならず、もしセスク・ファブレガスが途中投入されてからやっていたような一本で勝負が決まるかもしれないパスを、試合開始から彼がスタメンで同じプレイをしていれば、いずれイタリア側にカウンターのチャンスを与えてしまっていたでしょう。崩すのはリスクと隣り合わせで、相手がどんな意図を持っているか理解しなければならない。セスクが投入されたタイミングは、イタリアがカモラネージを投入した直後でカウンターではなく能動的に動いて状況を変えようとしたタイミングで、そうなってしまうとイニエスタとシャビのようにリスクマネージメントをし続けなくても、相手の攻撃の意図が変わってきたのでセスクがしたタイプのパスであっても問題なくなったんですね。ただ他の選手たちの意識はあまり監督の意識とは別に変わりきらず、崩しきる方向に傾かなかったんですけど、結果オーライ。本当ならせっかくのスペインの試合なのでPK戦ではなく、得点を取って勝って欲しかったんですが、仕方ない。0-0のまま終えたのはイタリアがカテナチオだとか守備的だとか後ろ向きだとか、そんな無駄なものをしたからではなくて、スペインの選手が、開始直後のセルヒオ・ラモスの無思慮なプレイ以外で、常にリスクを考えていたからの引き分けで、実に現実的な、ノックアウトラウンドであるトーナメントを勝つための考え方をしているからです。
ま、カシージャス様々な部分とプジョルが引き締めているから出来る部分でもありますが、こういう戦い方が出来るのならトーナメントでも期待が出来ますね。次のロシアはそんなことはお構いなしのプレイをオランダ戦同様にしてくるはずなので、あまり役には立たないと思いますが。

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