■Athletic Bilbao 1 – 4 FC Barcelona
よりにもよってこの決勝戦を怪我人だらけで挑まなければならないのは不運でしかありませんでした。イニエスタとアンリを欠いた左側は特に苦しく、この試合はプジョルが左サイドバックを務め、トゥーレ・ヤヤがセンターバックに入ったことから、より左側の攻撃力の減退を感じさせていました。ボヤンが左に回るにしろ、エトーが左に回るにしろ、それぞれの特性からして、イニエスタやアンリほど縦の突破で深くえぐり、そこから中を向いてドリブルで抜き去ることは殆ど出来ない。キープ力にしても二人ほどあるわけではなく、最初からゴールを意識した中へのものになりやすい。となると、ワイドに開いた展開を左側に求めることは難しく、サイドバックもプジョルだからオーバーラップからクロスも望めなかった。
開始早々のバルサは後方で回し展開先を見つけられなかった。ビルバオの守備が早い段階から連動して行われていて、シャビやメッシを囲い込む守備をされていたことから、展開先を見つけられず、アンカーのセルジ・ブスケツの所にも背後に一人は位置されていて、ボールが前へ出ない環境は十分にありました。ですが連動性は問題なくあり、相手のプレッシャーに気圧される部分はあったとしても、まだ勢いで負けることはなかったように見えました。相手のラフ気味に来るものに関しては警戒しているようでしたが、全体の密度を上げて、自分たちのパスが通る距離感を保つことが出来ていた。失点するまでは。
あっという間にコーナーキックから先制点をトケーロに決められたことで流れは一旗に立ちきられてしまいました。ケイタがマークに付いていたものの、バルサのこれまでの守り方同様に、この場面でもゾーンで守っていましたが、ニアサイドのケアは十分に出来ていてもファーサイドのケアは相変わらず甘い。キーパーに頼る部分が大きく、キーパーがケアできないスピードであったり、場所に落とされてしまえばこの有様になる。ジェステのボールもよかったし、トケーロのポジショニングもヘディングもよかった。だけどそれ以上にこの守り方の限界が見えてますね。コーナーキックに限らずセットプレイを得て、キーパーが躊躇する位置にクロスを上げて高さで競り勝てばいい。どのクラブと対戦したとしても得点を取られかねない弱点になってます。
バルサが勢いを失ったのとは対照的に、ビルバオは勢いをどんどんと増して、プレッシャーを与える速度は大きく増していました。シャビを抑えることに成功し、パスが回らないことからアンカーの横に並ぶまでの位置にまでシャビを押し下げていましたし、メッシにボールが入ったときには三人で囲い込んで潰している場面も多くありました。ボールを前に収めることが出来ず、その二人を抑えられてしまえば、欠場している選手らのように展開力ある選手が足りないために、バルサのディフェンスラインを押し上げることはリスクを考えると困難で、後方から押し上げが聞かないということは得意の前からのプレッシャーも機能しないことを意味し、相手に気圧されたように前が守備にいけず、後方は下げられ、前後に伸びきって戦わざるを得なくなってしまっていました。もちろん、ビルバオのディフェンスラインが低い位置を保っていることもあってフォワードがそこに留まり、シャビが下げられたこともあってロングレンジのパスが増えてしまい、ワイドに使えているわけでもなかったので、余計に後方から上がってくる選手が追い越せたり、連動した攻撃が出来なくなっていました。シャビが引いてこなければ、ボールの引き出しと展開がうまくいかないのだから仕方のないことで、それに合わせてメッシが近い距離を保つために下がってきては囲まれてしまい、上手く展開できないまま特にシャビ、メッシが上手く近い関係を保てず、パスが裏へ裏へと単調なものになっていました。もし、トゥーレ・ヤヤのゴラッソがなければ、疲弊していき、自滅していたかもしれませんね。
ディフェンスラインから、相手が引いで守っているところ、そのスペースが広大な部分を一人でドリブル突破し、ミドルシュート。バルサの面々が、誰一人裏へ抜けようとしていなかったのはとても問題でしたが、だからこそ彼がミドルシュートを撃つことになったんでしょう。これは功を奏したものの、本来ならそれに合わせて誰かが裏を狙う意識を見せてラインを押し下げつつ狙わなければならないんですが、誰もそれを見せなかった。なのにビルバオのディフェンスラインが、誰か裏に抜けようとしているかのように、リトリートしてくれたお陰であのシュートが打てただけで、半分はトゥーレ・ヤヤの素晴らしいプレイのお陰、もう半分はビルバオのミスのお陰でしょう。時間稼ぎも含めて、意識が後ろ向きになってしまっていた影響かもしれません。
後半になってからプジョルが上がる頻度が増えたのは象徴的な部分で、前線がボールキープしている間に上がることは少なかったんですが、それが上がれるようになっているということは、前でボールをキープできるようになってきているということでしょう。相手のプレッシングが上手くかからなくなり、ボールを回せるだけの時間が得られるようになったのもある。後方からの押し上げが、相手を押し下げ、一方的な形を作りつつありました。相手のプレッシャーも前半の消耗から緩んできていましたし、得点を取って以降は、バルサ側が開始直後のような勢いを取り戻しつつありました。そして伸びきっていた部分が解消され、それぞれの距離感が戻っていて、特にシャビからボヤンとメッシの距離が縮まり、ロングレンジのパスを出すことも減り、それらから前へ展開、横へ展開がスムーズに行われるようになり、相手のプレッシングも疲弊から少なくなり、ボールを回せるだけの時間を得られるようになった。
代わりにビルバオ側が押し込まれて前と後ろの距離が開いてしまい、ロングボールが増えてピケとトゥーレ・ヤヤに跳ね返される場面が多くなってましたね。
それらから予測のつくとおりの展開になり、コーナーキックのこぼれ球から展開して、最後はメッシ。三点目はカウンターからダニエウ・アウベスとメッシが相手を引っ張り、ボヤンが裏へ抜けて上手くゴールを決めて、殆ど勝負ありでした。ただ、先日のビジャレアル戦でそうだったように、二点差は安全な得点差ではないので、もう一点の追加点が必要だったんですが、今回はきっちりシャビがゴールを決めて勝負あり。
四点目がはいるとさすがにビルバオは目に見えて動きが落ちたわけで、先日のビジャレアル戦は、この三点差にするゴールが決められず後に追いつかれたわけですが、上手く教訓として出来たようで安心しました。大きく苦しみましたけどね。
試合以外の部分では、三点目の後に観客席から物が投げ込まれ、ダニエウ・アウベスに当たった場面がありました。スローインの最中で当たった物が何だったのか解りませんでしたが、プレイ続行できたわけで、大きな怪我にならなかったのは幸いでした。物が投げ込まれた周囲はアスレティック・ビルバオのサポーターしかいない場所で、得点差など状況を考えればどちらの陣営が投げ込んだのか明らかでしたが、投げ込んだ奴は即座に周囲のサポーターに囲まれ、警備員に連行され、ビルバオのサポーターたちは、そいつに向けて「出て行け」のコールを浴びせていました。投げ込んだ奴は最低で、周囲の人たちはそれを許さなかった。
自浄作用があるのは素晴らしいことで、悪いことが起こったにしろ、素晴らしいビルバオのサポーターたちの対応のお陰で大きな問題にならず終えられたのは喜ばしいことでした。まぁ、言葉を全て理解しているわけではないので、自分の勘違いが含まれている可能性がありますが、バルサのタイトル獲得も嬉しいことですが、こういった”いい対応”ってのも嬉しいことです。