■FC Bayern Munchen 4 – 1 Werder Bremen
バイエルンがボールをなかなか縦へと出せないのは、センターバックの二枚が深く位置し、ボランチがボールを受けに下がったとしても、それと連動してフォワードが下がるわけではなく、縦の距離を縮められず、ボランチ同士が縦関係になったとしてもパスコースの選択肢になっていないため。クロースが一列下がってボランチと同列にまで下がることで、前を向いてサイドバックやサイドアタッカーへスムーズにパスを出せるくらいに改善される。ようやくそこから攻撃がスタートし、ブレーメンの守備を押し下げてバイエルンはセンターバックを押し上げて全体をコンパクトに出来るようになるものの、その形を作るまでが長い。ブレーメンがセンターバックにまでプレッシャーをかけに出てこず、ハーフウェーラインを越えるまで自陣に残っているのだから、個人で引きつけて持ち上がってもいいはずだが、それもせずにパスを受けてパスコースを探すのみに留めてしまっていることが、状況をより難しくしてしまっている。
ブレーメンはドリブルに注意を払わなくても守れることでパスコースを切る事に専念して前を塞げばよく、パスカットからのカウンターも、バイエルンのパスの位置が低いことで高くから行える。カウンターもゾーンをボールサイドへ寄せてパスコースを限定するバイエルンの外側、逆サイドへのサイドチェンジを強く意識したボールを何度も出していて、バイエルンを横へ走らせようとする意図が見える。速攻を封じられても、ピサロとアルナウトビッチのフォワード二人が、縦関係になって引いて受ける、飛び出しを狙ってセンターバックを引っ張るのを同時に行うため、バイエルンは両センターバックが得意としている体をぶつけて動きを限定することもパスカットを狙うことも出来ていない。無理に遅らされながらも向かうことでファウルになってしまっており、フォワードにボールが収まることを警戒すれば、センターバックが中盤のサポートやサイドに流れる判断も遅れて、ブレーメンの押し上げに対応できなくなっていき、前を塞いでくれないことでバイエルンの中盤は戻りながら守備を強いられ、先手を取られている。
パスでリズムを作れないバイエルンの生命線はカウンターで、前に残したリベリーのテクニックとスピードを活かしたものになる。ブレーメンが積極的にオーバーラップをさせていることもあって、カウンターになれば数的にも同数以上を用意することは難しくなく、先制点を得られた場面では、縦への鋭い動きだけではなく、ダイアゴナルな動きを加えることで、リベリーのシュートコースを空けられるほど数に余裕があった。
先制点を得たことでバイエルンは攻撃面でリスクを冒せるようになったのか、パスからパスを続けるのではなく、少しであっても前を向いてボールを持ち上がろうとする姿勢を見せ始め、ボールを出してからすぐに動き直す姿も見られるようになった。動きながらボールを扱うようになれば、ブレーメンが塞いでいたパスコースにもずれが生じ、オーバーラップを加えることで縦とパスコースを塞ぎ続けられなくなり、複数で囲まれにくくなる。フォワードの二枚がセンターバックに積極的にプレッシャーをかけようと出てくることや、サイドバックの上がりや中盤の押し上げによってブレーメンの前線を減らすことが出来れば、バイエルンのセンターバックも二枚のフォワードへの距離を縮めて狙いを絞れる。縦関係を取らせず外を狙わせることでセンターバックが外へ張り出してケアをしてもきちんと抑えられていて、ブレーメンの縦の勢いを落とさせることで中盤の守備も高い位置で前を向いて行える。
ただバイエルンのセンターバックがスピードに乏しく、裏へ抜けられることを怖がっている点は変えられず、ブレーメンにきちんとした形でボールが収まってしまうと、一気に引いてしまう。ブレーメンが、待ち構えず、積極的に縦パスに対して体をぶつけようとし、コントロールを乱させて奪い、一気にカウンターへ繋げようとするような積極的な守備をしていることと、攻撃になればセンターバック二枚だけを残して押し上げていることも影響をしている。自らスペースを与えていることを加えてカウンターを受けやすくしてしまっているのが深くまで攻め込まれる原因にはなっているものの、守備をさぼらず球際をしっかり締めていることでペースは与えず、むしろ攻守に素早い切り替えが連続することで、バイエルンはカウンターをしやすく、パスで動かす問題点を隠せている。
後半も両者とも球際の激しさや速さは変わらず有り、特にバイエルンは守備への切り替えが早くなった。ブレーメンのボールを引き出すポイントがフォワードではなくサイドへ移行すれば、すぐに縦を塞いで足を止めさせ、その間に囲い込んで奪い返し、すぐに攻撃へと戻れるようになっていた。入り方自体は問題なかったものの、フォワードへの縦関係の対応を誤り、同点に追いつかれてしまった。起点になったピサロこそ抑えていたものの、もう一枚のローゼンベリを掴まえられていなかった。選手交代をしたとはいえ、前半からこのフォワードの縦関係からの崩しを狙って来ていたのだから警戒して置くべき部分だった。
攻守共にスピードアップした試合展開の中で、両者共に不必要に体を寄せていったり、球際の激しさを増やしたり、あるいはファウルを貰うためのプレイを増やすことで、熱くなりやすく精彩を欠いている。クイックに展開することでスピードがありカウンターも迫力があるものの、コントロールを疎かにして次のプレイに繋げられなかったり、無理に向かいすぎて逆を取られたり、両者の攻守共に雑に見えてくる。時間は多くあるにもかかわらず、バイエルンの攻撃は焦っているように見え、守備で積極的に追い回すことは本来の守備の形から大きく外れているわけではないものの、後方との関係を疎かにしてバイタルエリアに入られてしまっている。
幸運だったのはブレーメンも攻撃に出るあまり、パスカットを優先してしまって裏へ抜けられるリスクを軽く見てしまっていたこと。それによってマリオ・ゴメスが囲まれることなく一枚でボールを収められ、ミュラーが飛び出してPKを得たように、単純に裏を使ってもブレーメンは追わなければならなかった。PKを途中交代のロッベンがきちんと決めて勝ち越し。
守備を崩壊させてでも攻撃に出ようとしているかのようなブレーメンは、あまりにも縦への意識を強め、急ぎすぎて試合を構築していくことが出来ていなかった。前へ全力で走る選手はいても、サイドで起点になっている選手がマークを受けて抑えられていてもサポートに近づく選手がいない。横への展開先がないことでプレッシングから逃れられないにもかかわらずオーバーラップをしていくことで、後ろの枚数が極端に減ってしまってバイエルンの選手たちはボールを囲い込むだけで抑えられるのだから大きく引き戻されることはない。そこからカウンターを仕掛ければ、ブレーメンの重心が前へ傾いているため、守備の形を作る前に仕掛けることが出来、ディフェンダーの隙間が大きく空いてしまっているそこを突くことが出来る。そうやって三点目を取り、ブレーメンはそれまでの球際の激しさに加え、苛立ちを募らせ、アーロン・ハントが危険なタックルをして退場。この退場によって一気にブレーメンの勢いは削がれ、それまでのクイックすぎる展開から一転してバイエルンのボール支配を許し、積極的に前へ出ることこそやめたものの球際のラフさ自体は変わらず、再びPKを与えて四点目。途中投入だったローゼンベリを下げてまで中盤の構成を戻さなければならなかった。ウェズレイ投入直後にはワーグナーがしっかりと得点機を得て、守備のためだけの交代ではにと示したものの、精神的にも落ち、低下した運動量を取り戻すことはできなかった。