■Athletic Bilbao 2 – 2 FC Barcelona
ビルバオの守備姿勢は前がかりで、バルサの後方に対して追いかけ回し、深くまで入り込もうとしている。ディフェンスラインも高く保ち、サイドバックをより押し上げることでバルサのウイングに対してのプレッシャーにもしている。ただバルサはタッチライン際にまで大きくサイドバックを開かせてボールを動かし、相手のゾーンを広げようと動いている。ビルバオが積極的に追うことがより広げられる要因になり、バルサの中のポジションチェンジに対して反応を鈍くしている。
バルサはポジションチェンジを盛んに行い、特に相手の中盤が前へ出て来ることを利用して、バイタルエリアではなく、相手の中盤の手前で横に動き、ゾーンを左右へ揺さぶっている。それでもビルバオは中央にブロックを構築して、そこの入ってくる相手を掴まえて守るのではなく、マークの距離を縮めて前を向いて受けさせないよう、接近した守備をしている。ブロックを作ってゾーンで守るのとは違い、マークの受け渡しをあまりせず、マーカーがそのまま付いてくることが多いため、ポジションチェンジに対して大きく陣形を崩してしまう。特にドリブルは、個人にそのまま付いているマーカーを外してしまえば、他のマークを外してまでサポートしにいかなければならないため、バルサとしてはフリーな選手を作る効果を得ると共に、マンマーク気味の守備と反対側を利用することでもあるから、向かってくる守備をさせず、戻らせる効果があり、機能している。バルサもビルバオと同じくフォアチェックによる守備を徹底しているため、ショートカウンターからフリーランで裏を取ろうとするのも効果的で、ビルバオが前へ重心をかけづらい環境を作っていく。
ただマークの距離を縮めて守られているため、足下への鋭いパスもカットされやすく、前を向いて連続して繋いでいくことは難しい。ピッチ状態もそれに影響をして、パススピードを保ちきれず、ボールコントロールを自分の範囲に収められないことも多くかわしきれていない。上手く動きによって揺さぶれていなければ、次々に来る守備によって防がれてしまう。
ビルバオもタッチ数が少なく早いリズムで繋いでくる。フォアチェックの運動量がそのまま攻撃にも現れ、ジョレンテへのパスを軸としている。ピケとジョレンテの距離は比較的遠く、ロングボールにしても足下へのパスにしてもマークの距離がそれほど近くなく、足下へ納めさせている。そしてサイドアタッカーを利用してバルサのサイドバックの外側を突く。中央と外側に起点を持ちつつ二列目からの変化も加え、厚みのある攻撃をしてきている。ただジョレンテの高さを最優先にケアしなければならない場面をサイドからの攻撃では作られやすく、そこへのクロスを警戒するあまり二列目からの飛び出しに対しての反応が薄く、ゴール前へ人数を集めて警戒しなければならなくなっている。前から攻守の切り替えはしっかりできているものの、一気に押し下げられたときにアンカーこそ戻れても、サイドバックが引き出されているために中の人数が相手を抑えるには十分であるとは言えず、厚みも用意できない。そのためマイナスのボールへ対応しきることが出来ず、ビルバオに先制点を奪われてしまった。幸運だったのはすぐにアビダルのクロスからセスクが難しいヘディングを決めて同点に追いつけたこと。
同点に追いついてからしばらくはメッシがフリーになり、その間に善戦の他の選手が動いてマークをずらしている。マンマーク気味に推移するということはドリブルに対応するためには自分のマークを放棄しなければならず、判断を難しくさせている。反応の遅れはメッシのドリブルを止めるために前へ出なければならないタイミングを逸することでもあり、スピードアップできている。その後のチェックに出てくる選手は誰かしらのマーカーであり、背後にスペースを作って出てくるためスルーパスを通すチャンスを得られる。この試合のアドリアーノは多くの横への動きをして変化を生みだし、フォワードの横の動きとポジションチェンジはマーカーを左右へ引っ張ることにもなり陣形を保たせない。ダニエウ・アウベスも高いポジションを保っているため、ビルバオはフォアチェックと相まって上下動を相当にしなければならなくなっている。マンマークを基本としていればサイドバックのオーバーラップに対応するためには攻撃の選手を下がらせなければならず、ジョレンテをも下げてバルサのセンターバックに余裕を持たせる場面が増えた。徐々に個人が個人を抑えられなくなり、カバーリングをする必要に迫られてきているものの、バルサのフォワードのいずれもがセンターバックに対して向かっておらず、得点のマーク対象をビルバオの二枚のセンターバック共に持っていないため、カバーリングをして守備の距離を大きく広げられてはいない。
バルサの守り方はビルバオとは対照的にマークには付かず、引いて守備に戻るジョレンテに対応するためにピケやマスケラーノが出て行くことはなかったし、攻め込まれた後にしても、ディフェンスラインの前で横に動かれてもそれに引っ張られることなく自分たちの担当するゾーンから離れていかなかった。ただ集中自体はジョレンテへと向けられているため、アンデル・エレーラやムニアインの動きに対して少し甘く、背後を取られる場面を何度も作られてしまった。
バルサがマークの距離を詰めてフォワードへのパスカットせず、その背後で待ち構える形を取っていることや、フォアチェックからドリブルも使われてしまうことで自陣深くまで押し込まれる場面も多く見られる。一度押し込まれてしまうと、フォワードまで戻って守らなければならないのは両者共に同じで、バルサも奪ってからクリアをするのみで繋げなくなっている。セカンドボールを拾われて構築されるほどピッチ状態がよくないため、連続してシュートチャンスを作るほどではないにしろ、連続して攻撃されて押し上げられない状況は早めに改善すべき状況に見える。
後半になるとピッチ状況はさらに悪化をして、水溜まりがボールの勢いを多く殺すようになってきた。パスはスピードが落ちだけではなく止まり、ドリブルにしても地面に掴まえられて前へ持っていけなくなってきている。特にバルサの左サイドはその影響が濃く、ハビ・マルチネスが最初の犠牲者になったものの、イニエスタのシュートミスから失点にまでは至らず、徐々にそこを避けようとする意図が見られるようになっている。
バルサの運動量に合わせてマンマークに付いているビルバオは少しずつ反応が遅れ、パスが止まりやすいこともあってドリブルとスピードを活かした攻撃の多くなっているバルサに多く走らされるようになっている。攻守両面での運動量の蓄積がマンマークの対象からポジションを離すことになる。裏を取りやすくパスが通りやすくなっているものの、ピッチ状態らそれを選択するには勇気が要り、あまり選択できていない。だがビルバオはそのぶん前へ人数をかけて攻撃のための組織として残しているため、ゴールキックにも前へ人数をため、バルサを押し込んで前へボールを正確に運ばせないことでビルバオの後ろの問題を前からの動きが覆い隠している。
アレクシス・サンチェスを投入したバルサは交代によって前へスピードをもたらしてフォアチェックとカウンターに移行しやすい環境を作る。止まる危険性のあるパスよりもドリブルを優先する場面も目立ち、ダイレクトパスでは動かせない。両者共にフィードをフォワードに当てようとすることも増え、全体をコンパクトにスピードアップするよりも、少しばかり間延びをするように縦に伸びた。バルサは前へ預けるにはそれを得意とする選手がいないために上手くいかず、ビルバオは問題なくそれが行える。個人が持つ時間の増加とボールコントロールが上手くいかないことも併せて接触プレイの増加がファウルになる。泥臭いプレイではバルサはペースを掴めず、マークを外すアレクシス・サンチェスの動きもパスを呼び込むほどにはなれず、ビジャも投入して裏へ抜けることを明確にしても、そこへパスを狙えるだけの状態が作れず、タイミングとしてそれが出来たとしても、接触プレイが邪魔をする。
上手くいかない流れの中、マスケラーノが無理に繋ごうとしたのが雨の影響をそれほど受けずにスピードが落ちずコーナーキックになり、アビダルのクリアがジョレンテに当たり、ピケも誰もクリアが出来ずにゴールに吸い込まれて勝ち越しゴールになる不運を呼び込んでしまった。
バルサはリードを許してから外へ押し出されて繋げず、繋ぐことよりも裏へ出す必要があってもそれを出せない。鋭いボールだとそのまま流れる危険性があり、緩やかなボールではカバーリングが間に合ってしまう。守備に人数をかけるビルバオを突き崩せず、足下の悪さがスピードアップが出来ないためにゴール前を埋めるスピードの方が早い。そんな中でもビジャをフリーにしてシュートまで持って行けたものの、コースが限定されていてはキーパーに止められてしまい、同点に追いつける気配はなかった。
アモレビエタが二枚目のイエローで退場となり、ジョレンテを下げてセンターバックを投入したときにビルバオには集中の途切れや焦りがあったのかもしれない。セットプレイからクイックに始め、ヒールパスは誰も反応できていなかったが、クイックであるが故にディフェンダーは誰も反応できていないのが見えておらず、キーパーと交錯をしてメッシの前にこぼれ、同点ゴールになった。
悪いタイミングでそれを有利に持って行ける相手との対戦になり、ビルバオがバルサを上回ってしまった。しかしピッチ状態がどうであれ、この試合のビルバオの動きが明確にバルサを捉えられていた以上、天候がよく、ピッチ状態が良かったとして、果たしてバルサが勝てたかどうかとなると疑問符が付くほどだった。二点目はどちらにとっても不運なものだったものの、引き分けられたのが最善の結果だと思えるほどビルバオが良い試合をしていた。