■FC Barcelona 4 – 0 Rayo Vallecano
クラブワールドカップに出場するバルセロナは、その期間に行われるリーガの試合を前倒しで行い、その影響から厳しい日程の中、さらに中二日でこの試合が行われることになった。しかしながら明確なターンオーバーを使っておらず、一試合多くなるとはいえ前節の分を挽回する必要もあり、メンバーを落としていない。さらに怪我から復帰したばかりのイニエスタを先発出場させている。
ラージョのプレッシングは前から行われていて、バルサのディフェンスラインに余裕を与えないように勢いを持って行われている。ただバックパスからキーパーに渡っても、そこへは向かっていかず、キーパーからセンターバックへ戻されるコースを塞ぎ、受けに戻ってくるシャビにもマークの距離を縮めて、パスを選択させない。フォワードやイニエスタらにもきっちりとマークに付き、特に前へと向かった守備を展開しているため、バルサは後ろからパスを繋いで展開する先を見つけられず、パスを足下で収めてもらおうとすればするほどで足のいい守備にカットされやすくなってしまう。
縦に入れられず、後ろや横にボールを動かす場面が多く見られ、ビクトル・バルデスのボールを触る多さがそれを物語っている。バルサの面々がマークを外してフリーになるべく、それぞれのゾーンの隙間へ入ろうとする運動量も少ない。パスで連続して動かしていくのは相手の集中もあって難しい。イニエスタやメッシのドリブルがあって、そこで変化をつけなければ相手のマークを揺り動かすところまで持っていけていない。ビジャのマークを外す動きとダニエウ・アウベスのオーバーラップは目立っているものの、他とセットにならなければそれを活かすのは難しい。センターバックが相手のチェックの外側にポジションを取ってバックパスの選択肢となろうとしていることは、フォワードからセンターバックまでの距離を伸ばして間延びに近い状況を作ってしまっている。運動量が多くない中でそれぞれの距離を広げてしまうと、パスを使ったサポートも距離が遠く、相手のカットを狙った守備もあって選択しづらくなり、ポゼッションが高くとも効果的な支配をしていない。
守勢に回ったときにもチェックがかかりづらく、高い位置で奪い返してそのまま攻撃へ繋げることが出来ない。センターバックのピケとマスケラーノは、ラージョのフォワードが斜めに動いてフィードを引き出そうとしていることと、マークに付くセンターバックをそのまま外側へ引っ張って、中へスペースとディフェンスラインのギャップを作ろうとして、積極的にフィードを入れてこられることもあって押し上げきれない。
ボールをペナルティエリア付近にまで持ち込んだとしても、通常はコンパクトに保たれているラージョの守備の方が早く戻り、ゴール前にスペースを作らないように埋めてくる。バルサはペナルティエリアの横を使っても、そこからクロスを入れるだけの高さを持たず、人数も中へ揃えていないため、中へショートパスを入れてはカットされるくらいしか選択できていなかった。先制点を得られた場面でもそうだったように、メッシはポジションを高く取らず、相手がフォアチェックに出てくるその背後にポジションを取り、ディフェンスラインからのマークを受けない位置にポジションを取っていた。相手が前へと動くその背後でボールを受けてスピードアップし、ドリブルに視線を集めておいて他へのスペースを作る。ゴールはアレクシス・サンチェスの見事なシュートによって決まったものの、あの場面ではペナルティエリア内に三人も用意し、ラージョに待ち構えさせず、戻りながらの守備を強いることでそれぞれを明確に掴まえたり、ゴール前を埋めさせることなく、パスでも崩せる可能性を残していた。
3-4-3気味にダニエウ・アウベスを前へ上げている効果はそれほど大きくなく、前線の運動量の少なさを一人でカバーできるものではなかったし、右から中へと限定されていたから中央のパスワークや、多彩な変化を産み出すものではなかった。それでもカウンター時の前への勢いやペナルティエリアに入る人数の増加には大きく貢献し、そしてラージョがゴール前へブロックを構築するため、サイドバックを中へ絞っていたのが、彼が右に張ることによってできなくなり、中央のセンターバックがバルサの左サイドへ引っ張られても中のスペースを埋められなくなっていた。それが二点目を得た場面では非常に大きく作用して、左センターバックがそのスペースを気にするあまりシャビを間に入らせてしまい、残りのもう一枚がシャビにつかざるを得なくなった。その影響がビジャやサンチェスををフリーにすることに繋がってゴールになった。
二点が入ってラージョの守備は甘くなって、特に縦のコースを切る事をしなくなってしまった。ドリブルで持ち上がることをイニエスタやメッシでなくともチャレンジできるようになり、パスコースを塞ぐことばかりに目が行って、ボールホルダーへのチェックを忘れてフリーにしたままピケへオーバーラップをさせてしまった。ドリブルをされるとそこに視線が集中してしまうのはそのままで修正されていなかったことがダニエウ・アウベスの飛び出しに対して反応できなかった要因で、その後のビジャへのパスに対しても誰も戻っていないのもそうで、三点目のゴールになった。
後半も前半のようにメッシはフォアチェックの背後にポジションを取って、フリースペースでボールを受けようとしているものの、ラージョもそれを警戒して早めにディフェンスラインから人を割いてチェックに向かうようになっていた。ただダニエウ・アウベスが横にサポートをしていたことで、ボールコントロールに合わせて体をぶつけて自由を奪うことが出来ず、それを察知していたメッシがワンタッチで逃れて先行する形を取れた。そこから後はメッシの凄さが表れたゴールとしかいいようが無く、ペースを変えて抜き去り、そのまま決めて4点目。
バルサが前半とは違ってフォアチェックによって相手のフィードの精度を落とせるようになってきたのは、ディフェンスラインがしっかりと相手のバックパスに対して押し上げられるようになったことと、ラスのスピードの抑え方が解ったからかもしれない。コンパクトに保ちフォアチェックがある程度かかることでファウルになることこそ増えたものの、フォワードに走られる展開は避けることが出来るようになった。前である程度プレスをかけられるようになれば、ポゼッションの時にもコンパクトに保って選択肢を多く得られる。バルサはドリブルだけではなく、パスを使って相手のマークを外していけるようになっている。ただそれが運動量を活かしてフリーになっているから出来ているのではなく、ラージョの守備が組織的ではなくなり、一つのパスコースやパスに対して選手が出ていっても、次に対して向かっていかず足を止めて待ち構えているからこそなのかもしれない。徐々に動きを取り戻してマークとチェックを行うようになったものの、ボールホルダーに対して足を出せるほど近づかず、パスコースやパスの受け手に向かっていってカットを狙うほどではない。ある程度の形を作りながらも徹底できていないことでバルサは前半よりも余裕を持てている。
守備においても余裕を持っているように見えるのは多少問題があり、厳しさが徐々に減っていったバルサの守備は、サイドではウイングバック一枚で二枚を抑えなければならい数的不利の局面を作られてしまったり、中央に人を揃えながらも全員がゴール前を固めるだけでボールに対して向かっていかないことでシュートを打たれてしまうなど、緩さが目立つようにもなった。
ピケがあからさまな時間稼ぎによって審判に無理矢理イエローカードを出させて次節出場停止。クラシコのための措置とはいえ、ある程度ローテーションでセンターバックを補えることを考えると、彼がわざわざカードをもらう必要はなく、次の試合でクラシコを見据えた起用をグァルディオラ監督がすればいいだけのこと。
その後はラージョをきちんと抑えきり、無失点で試合を締めくくった。