■FC Barcelona 2 – 2 AC Milan
バルセロナはこの試合、ピケを欠き、プジョルもベンチ。アビダルをサイドバックとして先発させているため、本来はアンカーを担当するセルヒオ・ブスケツとマスケラーノの二枚でセンターバックを担当している。開始早々に、その二人の動きが被り、センターバックとしてのチェックとカバーの役割分担を出来ず、バイタルエリアに切れ込んできたパトに対してケイタも埋められず、パトのクレバーなプレイの前にあっという間に先制点を許してしまった。
ミランのライン設定は低く、ペナルティエリアに入らない程度に抑えているものの、バルサに対して積極的なプレッシングを行う気配もない。シャビやイニエスタのようにボールを動かそうとする選手に対しても厳しく当たるわけでもなく、時間的な余裕や前を向かせないような距離を保つわけでもないバルサの選手たちがそれほど活発に、ディフェンスラインの裏、あるいは手前で積極的に動いてゾーンの隙間に入り切れていないことも、ミランがパスの受け手にマークに付き、抑えられる形を作っている要因なのかもしれない。バルサの運動量は非常に少なく、先日のレアル・ソシエダ戦でもそうだったようにオフ・ザ・ボールでの変化に乏しく、相手を混乱させられていない。
バルサは守備時にダニエウ・アウベスが戻って4バックの形になることこそあるものの、殆どの時間で右サイドバックが一列上がり、アビダルがバランスを取って左のセンターバックの役割を担う3バックになった。得点を取るためにウイングが中へ寄り気味の状態にあってダニエウ・アウベスが高いポジションを取れることで攻撃の幅が狭まらず、横にボールを動かせることは大きいものの、ミランの構築するブロックの手前や外側でボールを横へ動かすことが中心になってしまって、ファン・ボメルとセードルフに埋められている中央で縦パスを入れられない。メッシも下がってボールを触り、ビジャやペドロはラインと戦うことが中心であったり、ゾーンの外側に残ってしまって試合の流れから取り残されている。
徐々に改善されてシャビやイニエスタのポジションを押し上げるようにケイタやセンターバックの二人がハーフウェーラインを越えてボールに関与するようになってくると、狭いバイタルエリア内でシャビが受け、イニエスタが飛び出す、ペドロが試合の流れに戻ってくる。それまでゾーンの外側でのみ動いていたボールが、ゾーンの中へと積極的に入っていくようになり、ラインと戦うばかりだった二人のフォワードも、飛び出しを囮に受けに戻り、一人で縦の変化をつけてマークを剥がしていけるようになった。ミランの守備が運動量を必要とせず受け手を掴まえられていたものから、動かなければ相手を掴まえられないほどに活性化して、狭いディフェンスの背後を突いてシュートまで持っていけるようになった。
ミランは攻撃に出られず、パトが主に担当していた的確に背後へ出るクイックな展開も狙えず、キープもままならなくなっていた。アンブロジーニを入れてセードルフから守備の負担を減らすことで、運動量を必要とし始めた守備を再構築する狙いがあったのかもしれないが、横に圧縮と展開を繰り返され、メッシの突破からペドロの同点ゴールを許した。
バルサの守備も序盤はパトのボールタッチのリズムやスピード、カッサーノやセードルフのキープからボールを奪えなかったものの、きっちりとそれを掴んでファウルをせずに奪えるようになっているし、そこに収めさせなくもなった。相手もゆっくりとキープし続けられず、展開を焦らなければ前へボール出すことが出来なくなったことでミスが増え、バルサは後ろへ引き戻されないことで攻撃の人数を維持し、アンカーやセンターバックが攻守両面で支えられる状況を作った。
後半になってミランは細かく繋ぐことよりも、大きく蹴り出して前後を分離させながらも前で収める方法を選択していたが、それは守備の形が戦後にばらけてしまい、延々とバルサの攻撃を受け続けることにはならず一度リセットできる効果を持っていたものの、バイタルエリアのブロックを埋めていた選手が前後に動き、ディフェンダーの前から離れ、いくらかの時間を必要としてバルサがつけいる隙を与えてくれた。何よりバルサの攻撃に対して戻りながら守備をするようになったことで、それまで待ち構えて先手を取れていた守備が後手に回り、カッサーノのファウルからビジャのフリーキックゴールへと繋がって逆転。
バイタルエリアを埋めている相手の中盤にはセスクが入ることでそれに注意を払わなければならなくなり、メッシがディフェンスラインの注目を引きつける。シャビがゴールの近くのスペースを見つけて入り込み、マークの距離を保てなくなっていく。ネスタはメッシにかかり切りにならなければ、彼を見られていない中盤の背後に入られてスピードアップされるために出て行かなければならず、出て行けばスピードに対応しきれずにファウルで止めなければならなくなる。ペナルティエリア内のゴールへ向かうコースだけを切り続けるのであれば、メッシを止めることが可能であっても引き出されてしまうと途端に厳しくなる。ゴール前と同じ距離を引き出されたときに保てないことも大きく影響しているのかもしれない。
ミランはパスの出所を抑えるべくフォアチェックをして下げるボールに関しては追いに出てきて、シャビに時間を与えないようにチェックにも出てくる。エマヌエルソンを投入するなど守備の人数を増やしながらも、ボールに対するアプローチを増やしていく。攻撃に対する積極性も併せてもたせたものの、ラインの押し上げが伴わず、前後の距離をいたずらに引き延ばしている印象だった。そのため、バルサが押し下げられて自陣に戻る回数こそ増え、後方でボールを持っている時間も長くなったものの、そこより先のコースや収め所を掴まえられているわけではなく、動き出しにもついて行けていない。バルサのポゼッションのリスクこそ増えたものの、慌てさせたりミスを誘うものではなく、いつもの戦い方に戻させた印象が強い。久しぶりの実戦となったプジョルに、その中での展開力を求めるのは酷で、キーパーへのバックパスが増えてスムーズに前へボールを出し続けるわけにはいかなかったが、判断は間違わず、アンカーにポジションをあげているブスケツやシャビへとしっかりとボールを出せている。押し込まれたときの判断や、瞬間的なスピードこそ本調子にほど遠く見えるものの、はっきりとした動きは守備に安定感を与えていた。
アフェライにしても、アレクシス・サンチェスが負傷離脱して前線の枚数が減った中で、また毛色の違うプレイが出来る彼の復帰はバルサにとっては大きくプラスとなるはず。気にかかるのはイニエスタとアビダルの怪我の具合で、交代枠を使い切っていて彼を引っ張らなければならなかったことが同点のコーナーキックを与えた要因でしたし、十二分に勝てるはずの試合をまた落としたのは痛く、それ以上に選手の運動量が同点ゴールを決めるまで上がらなかったことが気にかかる内容だった。選手のコンディションが上がらなければ、今の崩すアイデアが足りていない状態からは抜け出せそうになく、守備も安定を欠くままになってしまう。