■BATE Borisov 0 – 5 FC Barcelona
バルセロナはセスク・ファブレガスも先発していないこともあってか、リーガでの3-4-3から従来の4-3-3のシステムへと変更している。試合開始からポゼッションの意識が強く、ボリソフは積極的には出てこない。ペナルティエリア前まで一気にラインを下げて、その前に中盤を並べる。早い段階でビジャを使うときにはサイドバックが早めに出て潰す、あるいはパスカットを狙ってくるものの、外側をケアする意識は薄く、全体のブロックを中へ絞って構築をする。
メッシはいつものようにボランチの背後を狙ってバイタルエリアへ相手の注意を引きつけるために中央へポジションを取れず、引いて相手ブロックの手前でボールを触り、パサーとしてサイドバックのオーバーラップを利用する、あるいは自身が外へ出て、ドリブルのカットインからシュートを狙ったり、ワンツーを使って背後にでようとする。ただペナルティエリア内にまで下がることをいとわない相手の背後にスペースは無く、サイドへスペースを空けてサイドバックのオーバーラップを許してくれているとはいっても、そこから中へのクロスにコースもない。メッシのドリブルも大量にいるディフェンダーに捕まってしまう。ケイタを一列上げアンカー気味にポジションを移したシャビにも十分な時間を与えてくれていることで様々なパスを狙えても、明確なスペースが無く、ビジャが何度も早く飛び出しを狙っていても、あまりに狭く、そこに出していくのは難しい。
ボリソフの攻め方は、あれだけの人数を引いて守っていることもあって、攻撃に十分な人数を用意しないカウンター。一人でタッチライン際を駆け上がってスピードを持ってカウンターにしてしまう。あるいは最前線に残った一人がフィードを収めて、駆け上がるそれらを使っていく。その徹底とスピードは脅威で、バルサが多くの人数を前へかけなければならなくなっているために、全力で駆け上がられると守備が追いつかず、少ない人数のまま対応しなければならくなっている。
バルサにとって少しずつ光が見え始めていたのはボリソフが立ち上がりのように一気に引いてしまうだけではなく、ラインコントロールをしてペナルティエリアの外でポジションを保とうとし始めたこと。一度ビジャやサイドバックの利用によって押し下げられたものを、ボールが横に動いている間に押し上げてフラットなラインを形成しようとコントロールし始めていた。そのお陰でバルサにとっては横にボールを動かした後に、相手の背後へ飛び出せるチャンスが生まれ、動き直すことで相手の密集してスペースを与えていなかった盾のブロックを引き延ばすことが出来た。それだけではなく、前へ押し上げるためには前を向く必要があり、ファーサイドや裏への意識が少なくなる。ダニエウ・アウベスのアーリークロスから、ファーサイドのメッシが飛び出して得点に繋がったのも、二点目のペドロのゴールに繋がったのも、大きくラインを下げるのを辞めようとしているが故に、飛び出していく選手に背後を取られて視界から消してしまっていた。
ボリソフは失点によってそれまでのように守れなくなり、守備組織の作り方がずれていってしまっている。それまで自由にさせていたサイドバックやサイドのビジャに素早く寄せて中の枚数を減らし、シャビやメッシのキープに対してもチェックに出て行ってしまう。横の距離が伸びたことでビジャは中へボールを運びやすく、密集して狙いようがなかったセンターバック前にも僅かながらスペースが出来て、ケイタを始めとした多くの選手が入れるようになっている。
ボリソフはボールを持ったときにも十分に攻撃できるだけの要素を持っていて、パススピードは速く、個人のスピードもある。逆サイドへも強く意識を持ってタッチライン際に開いた選手が、中へ相手を集めている最中も狙い、意識して中央から外への大きな展開を使っている。五分のボールだと思えば躊躇なく前へ奪いに出てくる姿勢も脅威で、バルサにとっては押し込みスローダウンした展開を続けていくことによって、それらを抑え込んでおきたく、飛び出しを積極的に使うよりも横に動かし、ゾーンが崩れるのを待つことを優先しているようだった。その中でも相手キーパーのミスから3点目を奪えたのは幸運だったように思う。
ここまでのリードが出来てしまえば、ボリソフは出てくるほか無く、ディフェンスラインこそ低く設定されたままだとしても、中盤は大きく前へ出てパサーに対して一定のプレッシャーと攻撃に参加する意識を見せていかなければならない。その分バイタルエリアにはスペースが出来て、序盤は利用できなかったワンツーなども相手をドリブルで引きつけてから行えるし、引きつけることが出来れば、単独で抜いていくことも可能になっている。
後半開始と共にボリソフはディフェンスラインの位置を上げ、プレッシャーをかけ始める位置も大幅に上げてスタイルを変更させてきた。それまでは一切かけてこなかったセンターバックへのプレッシャーも行い、アンカーに入っているシャビにも下がったメッシに対しても寄せてくるようになり、それぞれに時間を与えなくなってきている。開始位置の高さは攻撃にかける人数の増加にも繋がっているため、バルサは守備のことを考えて試合を動かしていかなければならず、前半のような積極的なサイドバックのオーバーラップを中心にサイドを揺さぶることは出来ない。彼らを後方に残しておかなければならず、横方向の高いポゼッションよりもフォワードのみで縦方向へのプレイが増えている。
ボリソフのプレスに慣れてくるとバルサは低く保ったシャビを中心にチアゴ、ケイタ、そしてサイドバックへと横へボールを動かし、ボリソフの守備を引き出してしまえるようになった。前から奪いに来る相手をかわして早いタイミングで縦パスを入れて速攻にしてしまうのではなく、十分に相手を引きつけてポゼッションの形にしつつサイドバックが上がるタイミングを作りながら攻める。狭い範囲しか用意できていなかった攻撃にきちんと幅広さが戻り、縦の連携にも繋がってフォワードのキープからサイドバックが飛び出す、そして十分に引きつけた上でマイナスのクロスからさらに追加点を決めた。
一度縦の連携が決まると片側のサイドを気にして縦の厚みを持たせようとし、逆サイドから絞って守るようになる。あるいはサイドにばかり視線がいって、バイタルエリアに入る選手をボランチもセンターバックも見ていなくなる。
セスクが中盤最後尾に入っているときはカウンターの抑え方が不十分で、センターバックに負担がかかっている場面が見られたものの、ケイタがアンカーに戻ってからはそういった場面は見られず、センターバックの関係もプジョルが前へ出て対処する一方、マスケラーノがしっかりとカバーリングをして後ろに対する意識を持って守り、ボリソフは中央を使えなくなっている。前半は真ん中で収めることで左右へ大きく振ったときにフリーになれるスペースを作って縦へスピードを活かしたカウンターを見せていたものの、それに対してバルサはフォアチェックを行うことで前へ蹴らせず、コースも限定して外へ押し出している。多く利用されるようになった単調な裏へのフィードもボリソフはフォワードと両サイドに人を置くだけで、跳ね返されたセカンドボールを拾う人員を配していないことで活かせていない。バルサはフィードに対応すべくラインを下げているため、全体のコンパクトさはなくなったものの、フォアチェックからの守備はある程度機能し、間延びした部分もバルサの方に有利に働いていた。5点目となるビジャのゴールもその守備の意識が最後まであったからこそ。