クラシコ展望(予想は外れるためにある)

現状を整理するとレアル・マドリーは今季は未だ負け知らずであり失点は最小の6、それでありながら得点数もバルサと並ぶ33であり、破壊力も抜群。バルセロナも勝ち点こそ劣っているものの得点や失点で問題を抱えている部分は少なく、勝負を左右するのはチームの完成度でしょうか。あるいはチームの蓄積疲労でしょうか。それとも特定の選手出来か。

疲労を考慮するとすれば、直前に二つのクラブともチャンピオンズリーグをアウェーで戦わなければならず、そしてマドリーはカンプ・ノウへとアウェーの連戦となることから厳しい状態にあるでしょう。バルセロナはマドリーの翌日に試合があり、しかもギリシャ遠征という厳しい環境でしたが、クラシコの開催が一日延びたことで疲労の回復は十分に取れるはず。これまでバルサはローテーションをある程度採用しつつシーズンをこなしていましたから大きな問題は代表戦ぐらい。
マドリーはここまでローテーションを採用せず、殆どの試合でスタメンを固定して戦っていることが蓄積された疲労となっているようです。特にモウリーニョの指示する戦い方がこれまでの昨季までの緩やかなマドリーの戦い方に比べてハードワークを強いられていてその体力的な厳しさも加わってスコアを見る限りでは徐々に調子を上げているように見えますが、所々運動量の落ち込みが見られています。一日余裕を持って戦えることである程度差し引いたとしても戦い方への順応がまだ十分ではないマドリーにこそ疲労が見えるのではないでしょうか。

マドリーの守備が安定している大きな要因はディフェンスラインを高く保たず、ピボーテの攻撃参加を極力控える、そして四枚のアタッカーが攻守にハードワークすることで成り立っているように見え、守備時にもフォワードが素早く後方に戻りつつ相手の背中からプレッシャーをかけることで混乱を誘おうとしているようにも見えます。
ピボーテの役割は、まず相手の足を止めることでアタッカーが守備に参加できる時間を稼ぐことで積極的に足を出してくるわけではない。数的有利を作り出して守るための防波堤であって、自分たちの前に相手を置いてしまうことが目的で、守り方のスタイルとしてはペナルティエリア付近に引いて守りカウンターをするクラブと同じで、それを如何に組織的に引きすぎない状態で環境を作れるか、それを見事に作り出していることで守っているようです。
この戦い方をすることでの利点はピボーテがチェックのために積極的に出て行かないことで裏側にスペースを作ってしまわず、ディフェンスラインとピボーテの間、つまりバイタルエリアに入られてしまってもすぐに囲い込める環境と、入ることすら躊躇するような窮屈さを作り出すところにあるようで、もしフォワードなりミッドフィールダーがそこへ入ってしまえば、二枚の屈強なディフェンダーが体を寄せて自由を与えない。
シーズン開始直後こそのここの距離とセンターバックが体をぶつけられずにいたことでピンチを数多く作っていましたが、リカルド・カルバーリョが上手くモウリーニョの方針を体現していましたし、ペペもその動きに習って出来るようになってきています。ただそのハードな守り方は仕掛け方によるもののファウルの対象になりやすく、バルサはそれを誘えるほどコンディションを上げていますし、サイドバックの守備とポジショニングには不安定さがあり、狙い目はある。とはいえこのブロックは全体を見れば安定しつつあり、バルサが最も得意とするエリアは閉じられていると見ておくべきかもしれません。

恐らくシャビはこのブロックの中に入ってしまわないでしょうから、手前からコントロールすることになる。それを自由にさせないのがアタッカーの仕事で、積極的なプレッシングを受けることで自由にさせてもらえない。セルヒオ・ブスケツやイニエスタが下がってそれらのサポートに当たるようになってしまえば、完全にバイタルエリアは閉じられてしまい、メッシが間に入ろうと動いても簡単に掴まえられてしまうことになるでしょう。あるいはビジャであれペドロであれ、どちらにしても相手の手前で受けてワンツーで裏に飛び出していくような動きを選択することは難しく、相手のバイタルエリアの手前からミドルレンジの浮き球によって裏を狙う必要に迫られてしまったり、サイドへ押し出されてクロスを選択させられてしまうかもしれない。今のバルサにバイタルエリアの強いプレッシャーの中で耐えられる選手はそう多くなく、フィジカルを前面に出すような戦い方は出来ないため、フィジカルコンタクトの勝負だけは避けなければならない。
そうなってしまわないように裏を狙い続ける姿勢をビジャには持ってもらわなければならず、ペドロにしてもそうですが、相手に前だけで対応できるような環境を作ってしまえば、メッシがサイドではなく中央へポジションを移したときにはピボーテとセンターバックで挟み込まれてしまうでしょうし、ドリブルで二つのラインを相手にしなければならなくなる。メッシのワンツーからの突破は最も警戒されているでしょうからそれも激しいコンタクトの餌食になってしまいかねませんし、そういった前への対応を少しでも削るためにフォワードには相手の背後を狙う動きが必要になってくる。
相手のサイドバックの守備に不安があり、モウリーニョがこれまで率いてきたクラブのように、サイドバックに守備を一任して、そこら中へのカットインはピボーテとセンターバックの二枚のラインを中心としてがっちりと固めて守る形ができておらず、ピボーテやセンターバックがどうしてもサイドのケアの為に引き出される形が見られています。そこを攻めることが出来れば中にスペースを作ることが出来ますが、ただサイドを切り崩したとしても昨季のように身長の高いフォワードはそこにいませんし、センターバックを引き出せなければ中の人数も揃っているためグラウンダーで狙うことも難しい。迂闊にそこからクロスなりパスを狙ってしまえば、それらのボールをカットされて、厚みのある守備にセカンドボールを拾われてカウンターをしかけられ、スピードの面ではバルサの守備陣は劣りますし、サイドバックを含めた攻撃参加をさせてしまっていた場合は大きく背後にスペースが出来てしまうこともある。
失点に繋がりかねない安易なパスを選択するのではなく、出来ることなら縦のドリブルでの仕掛けを見せ、マドリーが相手を前に捉えておくための守備をしているそれを、さらにペナルティエリア深くまで下がらせて視線を横へ移させる。戻りながらの処理をさせることでセカンドボールへの出足を鈍らせたり、浸透しきっていない守備ブロックに綻びを作って飛び込む隙を作るなど、いくらか相手を後方へ走らせる攻撃を仕掛けなければならなそうです。

それ以外にもマドリーにはこのブロックの構築に必要な運動量がまだ備わっておらず、そこが付け入る隙になるのではと思っています。ハードワークをして守備環境を整えなければならないアタッカーは特にクリスチアーノ・ロナウドやイグアイン、ディ・マリアなど守備を免除されてきたような選手がおり、この戦い方をするには最も消耗が激しいポジション。攻撃に移ったときには猛然とカウンターを仕掛ける選手たちでもありますから、どうしても戻りが遅くなりサボってしまう時間帯がありますし、疲労からプレスが出来なくなることも多い。そうなってしまうとマドリーの戦術的なブロックの構築が出来ず、サイドからの攻撃に中央の選手が引き出され、本来なら揃っているはずの中へ人数が揃わず、中へドリブルからのカットインを許してしまうことにも繋がりますし、ミドルシュートを防ぐために前へ出てくることも出来ない。あるいはファーサイドへのクロスに人が足りなくなる。そういった状況を作り出すために如何にバルセロナは、そういったマドリーのアタッカーを守備に走らせて消耗させられるかがまず一つのポイントで、特にアンカーに入る選手はパスミスや不用意なプレイをしてボールを失うようなことがあってはいけない。何度チャレンジしてもボールを奪えないと思わせるほど自信を持ってボールを扱う必要があり、シャビと共に試合をコントロールしてもらわなければなりません。マドリーがチャンピオンズリーグでそれなりの消耗をしていればこれまでの疲労の蓄積と合わせて全体の動きを鈍らせることにもつながるでしょうから、得点よりも消耗させることを考えた試合運びも重要になってくるのかもしれません。

バルサの守りで重要になるのは相手のカウンターの鋭さと人数をどう防ぐか。それを戻りながらの対応で防ぐことは困難で、特にポゼッションをしている状態であれば、右のダニエウ・アウベスは高いポジションを取っているでしょうし、アンカーがどちらになるにしても前のサポートのためにでてしまっている可能性がある。もし、その状態で奪われてのカウンターであれば、攻守の切り替えを早くしたとしても追いかける展開にしかならず、元々速攻で活きる選手を数多く揃えているマドリーに有利な展開にしかならないでしょう。アタッカーとしてハードワークをする選手たち以外にもケディラが出場していれば、彼のオーバーラップも可能性としてあり、数的有利をあっという間に作られて突破をされてしまう危険が大きくある。
まずはその状況を攻撃時に作ってしまわないことが大事で、もし奪われてしまったとしても彼らを守備奔走させて押し込み、攻守の切り替えからプレッシングのかけやすい位置で掴まえておくことができれば問題ない。そして一部の選手には強く当たりを続け、苛立たせて冷静さと余裕を奪う必要があり、それ以外には強く当たろうとすれば裏を抜けられてしまうため、自分たちの前に捉えておくべき。フォワードへ預けるようなパスを期待してしまうと背後を取られてしまうでしょうから、カットを狙わず背後に出されるボールに対してケアしなければならない。それはバルサのラインを押し下げることと同じで、高く保てなくしてしまうことでもあってポゼッションにも影響を残してしまうかもしれない。矛盾した二つをしなければ抑えきれないと思えるほどの鋭いカウンターが今のマドリーにはありますから、一失点は覚悟しなければならない。
反面、ポゼッションになったときのワイドな展開はそれほど多くはなく、サイドバックの外側を縦につくようなドリブルや連動した崩しよりも、内側へ絞って人数をかける攻撃を好む傾向があるように思うので、そちらであればバルサはカウンターを受けるよりは大きくリスクを減らせられるはず。

全体を考えたときにバルサにはコンディションの良さと成熟された強みがあり、マドリーにはまだ未成熟ながらモウリーニョがこれまで行ってきたバルサを封じるためのいくつかの手段――例えば昨季のインテルがバルサを封じたような――があり、それを実行し徹底することが出来るかどうか。まだ浸透し切れていないサイドへの対応が一番の課題であって、そこを上手く突き、バルサがマドリーに待ち構えさせず、戻りながらの守備を強いることが出来れば得点は十二分に奪えると思っています。ですが、もしマドリーが最初から引き分けを狙うような方法をとったとすればこじ開けることは非常に困難になるでしょうし、徹底したカウンター狙いを取られても同様でしょう。マドリーがプライドを持ってどこかで攻撃に出る姿勢を持ち続けてくれる必要があり、それはアタッカーのハードワークで消耗の上に成り立つことですから、前半の終了間際などは特に狙い目かもしれない。

スコアの予想は希望でしかないから意味はないけれど、3-1というスコアになって勝つことが出来れば最高の結果でしょう。得点を取られる可能性はかなりあると思っていますが、先制を許さずに試合を進めることができれば十分可能性のあるスコアのはず。

2010/11/27 23:48追記
書き足して要点をまとめるとすると下記のいくつか。

バルサはサイドを制圧しなければならない。
特にクリスチアーノ・ロナウドのサイドでは攻撃に積極的に出なければならず、彼が守備へ戻る動きの遅さや運動量を多く消費しない点を利用していくことでペースを握る必要がある。特に後方がマルセロで守備に難点を抱える選手であればあるほどピボーテやセンターバックがそこのカバーのためにサイドへ引き出される回数が増え、中央にスペースやギャップが生まれやすい環境にすることが出来る。これはもしクリスチアーノ・ロナウドがサイドチェンジをしたとしても同じ事で、特にそのサイドの裏側を意識した攻撃を意識して修正して行わなければならない。恐らく出場するであろうアビダルが今季攻撃参加を控えているため同じ事が左でも出来るのか、あるいはクリスチアーノ・ロナウドがフォワードへ入ったら? ということを考えると、そこへ固執するのは危険でもありますが、最も攻略しやすいであろうポイントをそこへ求めているだけで、サイドアタッカーとサイドバックの間を常に利用し続けるというスタイルは維持しておくべき。

メッシ、イニエスタ、シャビを横に並べてはいけない。
サイドを制圧するためには3トップがきちんとワイドに開きつつ、サイドバックと連動して縦の突破を目指さなければなりませんが、メッシがそこまで下がってしまっているとマークが他の二枚のフォワードに集中してしまう。そうなると縦パスを収めることは難しくなるでしょうし、サイドへ逃げたとしても挟み込まれてしまうようになり、サイドバックはオーバーラップを躊躇してしまう。あるいはフォワードのマークに人数をかけなくてもよくなるため、ダニエウ・アウベスが飛び出すようなスペースを用意できなくなってしまうかもしれない。きちんと相手を引きつけておくためにメッシは高いポジションを保つ必要がある。特にシャビとは縦関係を保って彼に選択肢を増やしてあげる必要がある。

相手を前へ置いて見ておく守備を徹底させてはいけない。
マドリーは背後のスペースを大きく要するようなリスクを冒さず、ある程度引いて守ってディフェンスラインとピボーテの二枚が、バルサのそれぞれを見ておけるぐらいの位置に下がるでしょう。その状態であれば、ドリブルを仕掛けてもパスを預けようとしてもボールの出し手と受け手の二枚を同時に見ていられますから、掴まえやすく囲い込みやすくなる。ボールをサイドに動かしてしまうことでその目線を横に振ることが出来ますし、裏へボールを出すことで戻りながらの処理を強いてボールか選手かのどちらかしか捉えられない環境を作れるかもしれない。

つまりは、クリスチアーノ・ロナウドとサイドバックとの間にあるスペースへ何度も入ってボールを受けて中央の選手を引き出した上で、バイタルエリアに入ったメッシへとボールを預け相手の注目を引きつけて、裏へ飛び出すビジャへボールを出し、ゴールを狙う。

そんなことが出来ればいいですね、という願望の記事です。

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