■Racing Santander 0 – 3 FC Barcelona
試合開始時の勢いはラシンの方が優れていて、ボールを落ち着かせて人数をかけて攻めるのではなく、素早く相手の裏へボールを出して一気にゴールに迫るカウンターを主にしているようでした。それとチテに早く当ててしまう、あるいはウイングに持たせて縦の突破を狙う。その中でも中心に据えようとしているのはバルサのサイドバックの裏にあるスペースのようでした。
バルサのゴールがあまりに早すぎたためにそれが実を結ぶよりも早く試合の最初の流れが傾いてしまい、落ち着きをバルサに与えることになってしまっていましたが、狙いとしては効果的だったように見えました。バルサはアンカーのセルヒオ・ブスケツをセンターバックと同列にまで下げて攻撃を組み立て、センターバックを大きく広げてサイドバックを前へ押し出す。それによってイニエスタとビジャのウイングが中でプレイしやすい環境を作り、サポートをサイドバックにさせる。そのお陰で先制点のようにイニエスタが中へ入れてバイタルエリアでスルーパスを出せたわけですが、守備面では弱点にもなっていました。
まずセンターバックのアビダルは前後左右どれを重視するのかが不明確で、後ろのスペースを意識せずに不要に奪いに出てかわされてしまったり、届かずに反転して後ろに戻らなければならなくなるなど万全ではなかった。そこへサイドの裏に出されるボールが来ればセンターバックが引っ張られるかサイドバックが戻りながら背後から追いかける展開になり、ラシンが目指していた速攻からクロスで得点を取ることも十分に可能な環境になっていました。先制点さえなければその流れからいくつかピンチを作られていたかもしれませんが、序盤は守備の不安が大きく出ることはなく、アンカーを下げてセンターバックを広げる布陣は攻撃面での働きを目立たせていました。
バルサはそこからボールを出すのに苦労をしておらず、ラシンの守備はある程度の高さを保ってディフェンスラインに対してプレッシングをしているんですが、三枚に対して同時に出来ているわけではなく、出来て二枚まででした。そのためフォワードが追いかけてボールの出所を抑えようとしてもバルサが左右に動かすだけでかいくぐることが出来、そこに対しても向かおうとすればサイドバックをフリーにしてしまって縦へのパスを許してしまうことになり、それの対処からウイングにも厳しく行けなくなる。そのためラシンは中盤に厚みを持たせて、ラインを高く保つ、中盤中央にスペースを作らず密集させることで後方での組み立てを無効化しようとしているようでした。
ラシンが高く保って中盤に人数をかけて寄せを早くしているためバルサのパスは中盤での構築をメインとしておらず、シャビやケイタを経由させずにメッシやイニエスタらに直接渡してしまう。プレッシャーの強くかかっている中盤を省略させてしまうことでバイタルエリアに直接ボールを渡していくことで、ラシンのディフェンス利アンガドリブルや裏へのボールを警戒して下がらざるを得ない環境を作り、中盤との距離を広げさせようとする。ラシンはそうならず中盤を下げることで距離を保っていましたが、それはバルサが中盤で受けるだけのスペースを意識の変化によって作り出すことで、フォワードへ直接ボールは渡りづらくなりましたが、その分中盤でボールを持てるようになり、いつもよりは省略をしているとはいえポゼッションを開始できるようになっていました。それでもボールを回し続けてポゼッションが出来なかったのは、ラシンのラインが最後尾を高く保っていて、押し下げられてもバルサが下げるタイミングに合わせてきっちりと中盤がプレッシングをしながら押し上げる。連動してスペースを与えないように動かされていたために崩しきるほどのチャンスを得ることは出来ませんでした。が、ビジャのクロスをキーパーがパンチングし、そのこぼれ球をイニエスタがループ気味に押し込んで、二点目をそんな状況であっても決めてしまうバルサが個人の力で打開してしまってラシンとしては統率された守備をしていたんですが、その上をいかれてしまったようでした。
バルサの守備の問題は二点目以後に目立つことが多くなり、ディフェンスラインの前に守備の選手が見あたらないことが大きな問題になりつつありました。サイドバックを押し上げていることでサイドに裏のスペースが存在し、センターバックがそこに出続けられるわけではなく利用されることも問題ではありましたが、センターバックの前からドリブルをされたときにも踏みとどまることが出来なかった。それは中盤の選手がディフェンスラインの前で守備をしておらず、フォアチェックは出来たとしてもそれをかいくぐられた後の約束事がないかのように最後尾の一枚のラインのみで守備を強いられているために起こっていました。もしアンカーがディフェンスラインに入っていなければ彼が先にチェックに向かうことでセンターバックが足を止める要素に出来るんですが、その状況ではなく、一枚前のシャビやケイタにしてもスペースを埋める動きにはなっていなかった。だからこそセンターバックの前後左右に不安定なプレイとピンチに繋がっているわけで、セカンドボールを拾えないのもそれが要因でした。
マクスウェルがPKを与えた場面に関しては後方から追いかける環境を作られたこと自体がミスであるとはいえ、この試合ファウルの笛を吹きすぎていた審判のミスでしょう。当たりも問題なく、手も出ていない。足も引っかかっておらず、タイミングも外だったはず。シミュレーションを取られる可能性が強くあったプレイのはずでした。ビクトル・バルデスがチテのシュートを完璧に読んでセーブしたおかげで審判による失点は防げましたが、納得のいく判断でなかったのは確か。
後半にペドロが投入されたことでサイドの守備を行う人数が増え、イニエスタとケイタも最後尾の前を埋めるように動くようになった。お陰で前半にあったようなディフェンスライン、特にセンターバックらの一枚のラインで相手を止めなければならないような場面は作られにくくなり、サイドから崩されそうな動きに対してもサイドバックが対応しやすくなって安定を得ることができるようになっていました。
守備に大きく戻ったり、ポジションを下げたことも影響しているのかもしれませんし、二点のリードがそうさせたのかもしれませんが、ポゼッションが増えていました。前半シャビがしていた位置にイニエスタ入ったことが大きく、彼がセンターバックからのボールを引き出すためによく戻り、よくボールに触れていたことが、省略をせずに繋げるようになった一番の要素で、ポゼッションをしやすい環境を作る役に立っていました。動かして戻して、という一連の動きによって中央に相手と味方を集めて密集を作って外に大きなスペースを用意してからサイドバックを利用する基本としては変わっていませんが、ポゼッション自体はラシンが強く当たろうとしていることも変化していないので、中央に密集を作りやすく当たられやすく、ダイレクトで動かすにはスペースもなく、人につかれていることも影響をして一人一人のタッチ数が多くなって素早く相手を動かしていくことにはなっていませんでした。ただ中央に寄せられていることで、ラシンがボールを奪ってカウンターに出ようとしても、その中央に寄った状態から攻撃に出ようとするために、バルサの選手たちの守備エリアの範囲内でプレイをするようになり、前半にあったようなワイドに開いてサイドバックの裏を突破していくことが出来ず、中央でパスカットをされる場面も目立つようになっていました。
ビジャが決めた三点目によって勝負は決まり、前半は寄せられていたところが寄せられなくなり、ラインを上げられたのが上げられなくなり、ラシンは中央に厚みを作れなくなっていました。ペナルティエリア付近でバルサにボールを入れられて戻して回され、個々人がプレスに向かうことは出来ても全体がスペースを消しながら動けなくなったことで出来るスペースを突かれていくようになっていました。寄せる速度とタイミングが遅くなるとバルサが自由にボールを動かせるようになり、ボールへ寄せきる前に動かされてしまうようになり、守備は後手に回るとただ走らされて足を出す間もなくポジションの修正のためにまた動かなければならない。無駄走りのように感じて徹底できなくなってくると、そこからの修正は難しく、いくつかの交代を行っても状況を大きく変えるには至りませんでした。