■Germany 0 – 1 Spain
ドイツは出場停止のミュラーに代わってトロホウスキを投入し、スペインはこれまでコンディションを上げられずにいたフェルナンド・トーレスをデルボスケ監督が切り、ペドロを投入することで両者共に変化が生まれていました。
序盤はスペインがペースを大きく握り、ドイツは試合への入り方を緩やかにしてしまいスペインがキープしやすい環境を作ってしまっていました。フォアチェックこそ緩やかに行いつつもポジションを守ることを優先していてゾーンを構築していた。それによってスペインが回すパスコースを切る事に重点を置いて、ダイレクトパスを連続してスピードアップをさせなようにしていました。
スペインはパスを動かして逆サイドを利用することでそのゾーンの外側を使おうとしていてドイツのブロックを揺さぶり、試しているようでした。サイドから中へのコースは切られていましたが、引いて受けに戻る動きに対してドイツはゾーンを崩されないようにあまりついていこうとせず、それがスペインの狙い目となって縦パスを戻る選手に通すことで前を向いて中央を利用するようになっていった。ドイツはいくつか通されても密着して振り向かせないような守備をすることはなく、前を向かせることでバイタルエリアにも入られてしまい、最初のビジャの飛び出しとシュートをさせてしまった。バイタルエリアを防ぐにはシュバインシュタイガーとケディラは前へのケアをしなければならないために難しく、センターバックの二人がそこに注意を払わなければならなかった。そのため裏への意識が薄くなってしまって、後方へのスピードが遅れてしまって抜け出されてしまった。
すぐにドイツはそれを修正してメルテザッカーに主に後方への意識を強めさせて抜け出そうとする動きに対応して目の前に置くようにしていったことで同じような場面は作らせないようになっていきました。
中盤でスペインが繋げている部分に対しても、シュバインシュタイガーがイニエスタをきちんと掴まえへ前を向かせないようにし始めたことで簡単に前を向いてスルーパスを選択できなくなっていきましたし、それが後方の安定にも繋がっていました。
ただドイツの攻撃はこれまでのスムーズさが無く、噛み合わずにミスが目立っていました。守備にかかる時間が多く、これまではそれぞれの選手が連動して一気に攻め上がることで縦のスピードを出せていましたが、各ポジションによって守備を気にする度合いが違い、それがパスを受けようとする動きとパスを出す選手との狙いにギャップを生み出してミスにしてしまっていましたし、繋げないことでケディラもこれまでのように上がっていけませんでしたし、ドリブルの仕掛けもパスがずれることで足が止まって出来ていなかった。
もちろんスペインがきちんとパスコースを切る守備をしていることもドイツがこれまでのようなパスワークを出せない要因で、ロングボールを一時的に使うようになってしまっていました。それもクローゼへ合わせるものであればまだこぼれ球を拾う可能性があったのかもしれませんが、精度のないものばかりでした。
ドイツはスペインの攻撃を受け止められて安定をし始めたことで、徐々に前への意識がトロホウスキらの仕掛けに繋がり、ボールの保持時間の上昇に繋がっていました。キープが出来るようになれば他の選手も上がっていけるようになり、前に人数が増えればスペインのパスを抑えるために、それぞれの選手が掴まえるためのポジションと動きが出来るようになり、プレッシャーを与えられることに繋がり、自由にパスを回させる時間は減り、横パスを選択させるようになっていました。選手間にあるスペースへと出すパスコースを削ったことで、スペインの動き直しを減少させていました。縦へのスピードを失いましたが、それでもスペインはきっちりとしたコントロールからパスを選択して、雑に扱わないことでボールを失わないことでボールを失わず自分たちの形を作ろうとしていましたし、イニエスタとペドロのドリブルによって仕掛けを使うことで多少の変化をもつけてよりパスを活かそうともしていました。
ドイツはディフェンスラインの裏を狙われたために上げられず、それでもバイタルエリアを空けるわけにはいかない。そうなると中央を下げて固める形を取らざるをえず、スペインにその手前で回すスペースを与えてしまった。中央に集めていることで外を縦に使われることはあるものの、最後のパスを集中してカットしているお陰で大事には至りませんでしたが、見方によってはスペインは何処は通るのかテストしているようでもありました。
ドイツは中盤でのミスがなくならず、これまでの試合同様にカウンターにでようとしたときにまずドリブルで持ち上がっていくのではなく、預けるパスを選択して自ら大きく走ることで相手の陣形を崩す意図があった。この試合ではその預ける部分でのミスがそれ以外の選手たちのオーバーラップに影響をして、スペインの陣形を混乱させる影響を与えることが出来ていませんでした。なんとかコーナーキックを取ることが出来る程度で、シュートも打つところまではいかず相手に当てて外に出す程度でした。ただ可能性は少しずつ大きくなっていき、シュバインシュタイガーが中央にあるスペースを利用してパスを受けてスピードに乗ったままの展開が出来るようになっていましたし、それぞれがプレスを受けて焦る状態からは脱して、ボールをキープしたり仕掛けることもできるようになっていった。精神的な落ち着きが試合の安定を手に入れ始めて、パスミスも減って、スペインには前に人数を入れる余裕を与えなくしていました。
後半になるともう少しの改善が見られ、それまで縦パスを入れることが困難でいたが、クローゼやポドルスキ、エジルにもある程度入れられるようになった。後方から密着して抑えられていて、そこから再展開してスピードアップをすることは困難でしたが、ドイツがパスワークを発揮するかに思えました。しかしスペインはすぐにその縦パスのコースを切りましたし、サイドから中へのコースを切って同じラインでの横パスをも選択させてくれませんでした。
スペインはボールを多く保持していてもドイツのブロック構築は問題なく機能して、チャビはそのリーチの外側でボールを受けなければなりませんでした。パスコースを探さなければならず、ボールを動かすスピードも落ちていましたし、ブロックの外側を利用させられて中に入る人数が少なく、バイタルエリアやディフェンスラインと戦う選手が足りず、ドイツに裏への意識を植え付けることも出来なくなってしまっていました。そしてキープをしているが故にスピードに乗った状態で受けることが難しく、どこかで勝負を仕掛けたくてもなかなかできず、イニエスタとペドロが前半と同じくスピードに乗っていない状態でもある程度の仕掛けを見せられるぐらいでした。
ただ前半に散々チャレンジをしてリーチを図っていた効果が出てきたのか、いくつかの仕掛けと共にチャンスを作れるようになっていました。仕掛けによって中の人数を増やして惜しいシュートも打てましたしたし、それまでドイツの選手たちがパスやドリブルに対して立ったままカットすることができていたものが、スライディングのようにもう一歩伸ばさなければ足が届かず防げないようなところへできるようになり、守備が少し苦しさを見せるようになっていました。
両者共に徐々に疲れが見え始め、全体を活発に使うことが出来ず中盤での動きが鈍くなっていました。そこへ仕掛けていくことは有効だったんですが、スペインはそこまでは出来てもサイドをえぐってクロスの段階になってもセンターバックと競り合ってニアに入ったり、それらを抑えてしまうプレイをする選手がおらず、マイナス方向のボールを期待して下がってしまう選手ばかりで、ドイツに対応をさせやすくしていました。
流れの中では膠着をしていましたが、セットプレイの状況は別でした。ゾーンで守るドイツは中にいる選手にこそ厳しくマークにつけていましたがプジョルが大きく後ろにポジションを取っていてもそれを掴まえておく選手がいなかった。それがプジョルの弾丸のような飛び込みを妨害できなかった要因で、あれだけの勢いのあるヘディングをさせてしまって失点をしてしまった。
ドイツはそれ以後得点を狙うために前に出なければならず、サイドバックを大きく上げてワイドな展開からペナルティエリア内に人数を入れてそこへクロスを入れて得点を狙うようになっていましたが、人数を多くかけるその戦い方はカウンターに脆く、裏をビジャやペドロによってカウンターで狙われ、交代した後はフェルナンド・トーレスにも狙われていました。それでも失点をしなかったのはアルネ・フリードリッヒの上手い対応とスペインの選手たちが不完全な形からシュートを狙うのではなく、最後の一枚をかわしてからシュートをしようとする意識を強く持っていたお陰で、追加点を奪われてしまう可能性は強くありました。
スペインは上手くバックパスに圧力をかけて下げさせてドイツに連続してクロスを入れさせませんでしたし、マイボールにしたときにはパスで揺さぶり続けることこそ出来ませんでしたが、相手を押し込んでコーナーキックを得て、シルバ、チャビ、イニエスタと短く動かし続けて時間を消費して奪われないプレイを連続して苛立たせて精度を落とせていました。こうなったときにバルセロナがそうであるようにスペインも守備を固めて逃げ切れるようになっており、ドイツのクロスやフィードに対してもピケを中心にはじき返すことが出来ていた。初の決勝進出を危なげなく達成するには十分でした。
同じように攻撃をメインとしてパスで繋ぐスタイルであるが故に基礎技術と土台が違うスペインに流れの中では圧倒されてしまった印象がドイツにはありました。相手に合わせてスタイルを大きく変えて戦うことを選択していれば、あるいは違う結果が待っていたのかもしれませんが、個人的には対スペインの守備を固めたつまらないスタイルを見なくて済みほっとしていました。