■Germany 4 – 1 England
慎重な入り方をした両チームでしたが、より動きが重かったのはイングランドでした。グループリーグから悪化したわけではありませんでしたが、よくなったわけでもありませんでした。イングランドはフォワードへボールを預けようとパスを出しているものの、パスを出すと同時に駆け上がったり、ボールのないところでフリーランニングをしてスペースを作ろうともしていないし、そういった動きで変化をつけられる選手がいませんでした。
ドイツは慎重さを残していましたが、それとは対照的に前へ向かう姿勢を出したもので、パスと動き直しが頻繁に行われて、再びボールを受けられる位置に動くまでに多くの時間を必要としていませんでした。イングランドは強く奪いに出ても、個人のボールキープと共にその動きとパスがボールを奪われない環境を作っていましたし、相手に対応のために出てこさせて裏を狙うことも出来ていました。
それ以外の部分ではイングランドも独もロングボールを使うことはもちろんあったんですが、それへの対応が全く違っていた。イングランドはフィードで受けさせようとデフォーやルーニーに出しても寄せて競り合い、体を張ってボールを何とか自分のものにしようとしきれていなかった。それだけではなく、ボールの落下点に入り切れておらず、人がそこにおらず上手く競り合えていないことも多くありました。ドイツにはそれが少なく、きちんと競り合い、落下点には選手が常にいました。
徐々に試合開始直の堅さから解放されたイングランドはパスを出して前に人数を溜めていけるようにはなっていった。走って追い越すしていく選手は見られませんでしたが、人数は多くなった。しかしサイドに攻撃の幅を持たせられているわけではなく、中央に多く入ってしまっているだけで、サイドに大きなスペースがあるのに利用をしていませんでした。サイドバックが本来利用すべきそのエリアに上がってくるタイミングが遅く、上がってきてもパスを出せずにスピードが殺されてしまう。ボールをサイドバックが受けられたり、自分で持ち上がったとしても、ドイツはサイドバックとアタッカーの二枚で、サイドをケアして前に行かせず、イングランドはサイドバック一枚で使おうとしているだけで、縦を塞がれてしまって利用できる要素は殆どありませんでした。なんとかジェラードが絡むことで左は可能性を残していましたが、それでも足が止まってからの展開で、抜いてくる選択をディフェンダーは考えなくて済むだけ対応を楽にさせていました。
ドイツはそれまでイングランドの守備がきっちりとロングボールの落下点に入れていないことを理解していたのか、キーパーのキックから一発でクローゼが抜け出しゴールを決めてしまいました。少なくともクローゼはディフェンダーが入るよりも早く落下点に動いていましたし、前には入れていた。キーパーのジェームズはアップソンが時間を稼いでいる間に飛び出して防ぐ選択肢はあったはずなんですが、飛び出して防ごうとはしませんでした。ただ、それよりも問題なのは、あのボールに対して守備が対応を全く出来ていなかったことでしょう。
イングランドは得点を取られてからもルーニーが受けて自分でドリブルをしていく以外に上がっていく選手は見られず、ボールを追い越していく選手もいない。足が止まったように足下でボールを受けようとするばかりで中盤が上がってフォワードを助けていくことも出来ておらず、繋いで裏を狙うのではなく、ドイツの選手の前からミドルシュートを打つばかりで崩すための攻めを見られませんでした。ボールを持たされている印象は強くあり、それぞれがドイツのディフェンダーの前で立って待っているだけで変化が見えませんでした。
そうやってイングランドが攻めあぐねている間にドイツが追加点を上げて試合を優位に運べるスコアにしていっていました。エジルが受けて注意を引きつけて、クローゼがサイドでボールを受けることで視線も動かす。その間にミュラーが飛び出していく。そのチャンスの前にもクローゼが受けるために戻ったり止まっているときには、きっちりと別の選手が裏を狙うことでイングランドのセンターバックに狙いを絞らせていませんでしたし、このチャンスの時も横と縦の変化だけではなく、足を止める選手と追い越す選手、そのそれぞれの違いがイングランドに対応を難しくさせて裏を取る手助けをした。その後のパスとポドルスキのコントロールは完璧ではありませんでしたが、そこまでの形で勝負があったようなものでした。
二点目を入れられたことで吹っ切れたのかイングランはようやくチャンスを作れるようになっていました。サイドアタッカーのミルナーが縦の突破をして一対一で勝負を仕掛け、勝ったことでようやくクロスのコースが出来た。センターバックとキーパーとの間にクロスを入れられたのも勝負をしかけられたからで、これまでは足を止めてその形が作れていませんでした。ただドイツは二度連続は許さず、二度目の形はクロスを足で防いで上げさせませんでした。結果的にはそれをゆるさずにコーナーキックにしたことが失点に繋がってしまいました。一度戻された後にラインを押し上げきれず、キーパーとディフェンダーの間を使われてしまって失点をした。
この得点はイングランドに瞬間的な勢いを与えていましたし、ドイツには動揺を生みだしてしまっていました。直後には恐らく何度も語られることになるはずの誤審によって助けられるシュートを打たれてしまった。
ボールを追い越す動きも縦への動きもなく停滞していたイングランドが、相手の裏を使うパスを出すようになり、それに対して走っていくようになった。前への勢いがドイツのラインを苦しめていましたし、センターバックにスピードがないためにラインが裏への対応に苦労していて、対応を楽にするために押し下げて裏を警戒しながら待ち構えるようになっていた。それが手前でボールの利用をさせやすくして待っていましたし、より深い位置で難しい処理をしなければならなくしていました。
イングランドはその時間から後半も継続してサイドバックが攻撃に大幅にオーバーラップをしていけるようになり、構築の際にサイドの選択肢を得られていましたし、ドイツのサイドバックの裏をも使えるようになっていて、フォワードへのフィードの落としをそこへ出しても待ち合うほどでした。
前への勢いが守備にも現れて、フィードのこぼれ球に対してもプレッシャーを強く与えて単純には繋がせないようにし始め、クリアもろくに前へ送らせなかった。パスを出した選手がそのまま裏へ走る姿も見られるようになりましたし、ボールを追い越していく動きも当たり前のようになっていました。ドイツのケディラ、シュバインシュタイガーの背後でボールを受けられるようになり、そこからならシュートも狙え、裏へ走る選手がいればそれも使える。今はその選手がいますし、ドイツはそれにも注意を払わなければならず、ドリブルでの仕掛けもそれに加えられる。
イングランドが勝負を仕掛けるべきタイミングはここだったはずでした。しかしカペッロ監督は動きのよくなっていていたミルナーとジョー・コールを交代させて、右のワイドな位置を削ってしまい、サイドアタッカーによってサイドを多く利用することでドイツをより慌てさせる選択をしませんでした。
もしそれが出来ていたとしても、ドイツの圧倒的な勢いのカウンターを防ぐことは難しかったでしょう。セットプレイを防いだ直後であるためにイングランドは陣形を整えていられませんでしたし、人数も多くなかった。戻ってくる選手にしてもドイツの駆け上がっていく選手に追いつけず、後半の一点目は防げなかった。二点目は残した選手がバリーで、エジルにスピードで置いて行かれてしまい、失点になった。
そうやって三点差にされても攻撃の枚数を増やそうとしないカペッロ監督にはがっかりさせられました。残りの時間はドイツが自分たちのペースを保ち、ボールを動かし人も動く。イングランドの直線的でかわしやすい守備をかいくぐり続けて、キープをしてボールを回す。いくつかのチャンスをイングランドは得ましたが、ドイツが試合を終わらせにはいった流れを断ち切ることは出来ませんでした。