2010 FIFA World Cup Group -G- ポルトガル対ブラジル

■Portugal 0 – 0 Brazil
ブラジルの特徴的な変化は右のダニエウ・アウベスが先発出場をしてマイコンと同時起用された部分と、出場停止のカカに代わり、ジュリオ・バチスタが起用されたことでしょうか。特にダニエウ・アウベスのポジションは予想された右サイドのウイングのような役割ではなく、中央に多くポジションを取ったアタッカーに近いもので、試合をパスで動かしたりバイタルエリアに入ったり、様々な事をしなければならなかった。序盤はそれを明確にしてミドルシュートを放っていたり、ボールを受けてマイコンを走らせたり、ボールを引き出す役割も担ってましたが、それをしなければならなかったのはジュリオ・バチスタがあまり高いポジションを取れず、ボランチの二人と近く、フォワードとの距離が開いてしまったためでしょう。そのため一時的にルイス・ファビアーノを頂点として、ニウマールとダニエウ・アウベスの3トップに見える瞬間もあるほどでした。

ニウマールにしろルイス・ファビアーノにしろ、その二人が攻撃に厚みを作れるわけではなく、ストライカーでありゴールに向かうべき選手で、フォワードに守備が集中されてしまわないようにどうしてもダニエウ・アウベスがコントロールをしなければならなかった。それでもダニエウ・アウベスはドリブルで突破を出来る選手ではありませんし、創造性のあるパスで試合を支配することも出来ない。マイコンが数多くオーバーラップをしてマークを引きつけてクロスを狙える形を作ってくれれば、それでも攻撃として利用できていたのかもしれませんが、ポルトガルの左サイドバック、ファビオ・コエントロンが何度かドリブルで仕掛け、突破してクロスを上げるところまで成功してしまったことからマイコンはそれのケアの為にあまり上がれなかった。上がれば裏をクリスチアーノ・ロナウドに狙われてもいましたし、仕方のない部分はありました。左のミシェウ・バストスも上がってくるタイミングが遅く、利用するには時間がかかってしまった。
サイドバックが高くポジションを保てないことで、フォワードの二人とダニエウ・アウベスだけでは狭まってしまい、相手に中へ絞って守られ、簡単には突き破れる状況ではなくなってしまう。

ブラジルはラインを高く設定してポルトガルに構築をさせないように前後の距離を縮めた守備をして、スピードに乗せさせず得意のドリブルをさせないことを上手くしていました。クリスチアーノ・ロナウドにしても手前で受けさせれば縦を塞ぎ、中へとカットインをさせてそこをボランチが塞いで止める。
他の選手に対しても同じでカウンターも縦のコースを切って同じようにスピードに乗らせず迂闊に飛び込んで奪いに行く回数を減らす。そうやってカウンターのスピードを削ることできっちりと全員が戻る時間を稼いでいられる。その守備の組織が整った時間に突破を許したのは前述のファビオ・コエントロンぐらいなものでしたが、上がれていないマイコンが迂闊に奪いに行って突破を許し、クロスを上げさせてしまうところまで持っていかれてしまった。
他にポルトガルが形を作れていたのは、ポゼッションからスピードアップするためのスペースをもらえず、高いラインの裏を狙うぐらいなものでした。単純なスピード差もありましたし、センターバックの外から飛び出されてしまうためにブラジルは対処に苦労をしている部分はありましたが、それでも抑えられていたと言えるほどで抑えていました。

一時はファビオ・コエントロンに突破をされていた右サイドもそれをされなくなり、マイコンの攻撃に出たときの位置が少し高くなっていくようになりました。裏をクリスチアーノ・ロナウドに狙われているもののルシオがケアに出ることで解決を目指し、スライドすることで中央に出来るスペースにはフェリペ・メロらが入ることで埋める。
これで攻撃の幅を作ることが出来ればよかったんですが、マイコンの位置はこれでも低く、ダニエウ・アウベスとの連動を促すほどではありませんでしたし、ボールをもらう位置もセンターバックやボランチからボールをもらう回数が多かった。もう一つ高いエリアでボールを受けることでスピードを上げたいところでしたが、後方からのボールを足下で受けることでスピードは止まってしまう。さらに低い位置での横パスは、出す選手に展開力がないこともあってパスミスやカットされやすいものになってしまって、奪われる位置の低さからカウンターで一気に裏を狙われる危険をはらみ、下手をすればそれを恐れてまたサイドバックの位置が下がってしまうところでした。

前半の終盤にはジュリオ・バチスタが前にポジションを取るようになったことで、フォワードの連携がようやく取れるようになり、前が三枚で人数を揃えられるようになっていました。そうなることでダニエウ・アウベスは試合をコントロールする役割から開放されてきてサイドで受けられるようにもなりましたし、ミシェウ・バストスも上がってくるタイミングがそれほど遅れなくなった。
そのまま後半も継続できていれば攻撃の幅をワイドにしてクロスやドリブルの変化から得点を狙えていたのかもしれませんが、後半になるとジュリオ・バチスタのポジションは再び下がってしまい、マイコンも上がっていけずに中途半端なポジションのままになってしまいました。中途半端であるせいでマイコンが上がっていなくても裏をクリスチアーノ・ロナウドに狙われて走られ、ルシオが対応しなければならない場面が多く、悪循環に陥ってしまっていました。

ポルトガルはラインを高くしてブラジルのフォワードが上がってくるのを抑える。奪う位置を高くしてカウンターや攻撃に人数をかけやすくして、ブラジルを押し込んでしまう。ブラジルは押し込まれても守備にきっちりと二枚を揃えてバイタルエリアを閉じていて、守備に厚みを持たせてクロスへの対応も問題がない。だが裏を狙われることとジョズエに変わったことでセンターバックの所を徐々に上手く埋められなくなり、距離が開いてカウンターでそこを使われるようになってしまった。ドリブルでスピードに乗られてしまいスピードで劣る守備陣は対応に苦しみ始めて、攻撃にでる距離がどんどんと開いていってしまう。

ブラジルは徐々にルイス・ファビアーノが引いて引き出そうとするようになってしまったことでより得点は遠のいていきました。ダニエウ・アウベスは対応されてしまい、前半のようにある程度受けて展開する役割を担うのは難しく、ジュリオ・バチスタはまた下がってしまって展開の役にも守備の役にも立っていませんでした。裏へ走られることに影響して引き下げられているとしても、体を張ってボールを収めることも出来ず、上がってきてもボールに対応できなかったり、ドリブルの最中に体を入れられれて奪われてしまったりいいところが見えないままでした。
ブラジルの他の選手にしてもポルトガルが待ち構えている中盤に掴まえられてそれを引き剥がす運動量も出せず、停滞してから後ろ向きにボールを受け、そこから前に向くことが出来ずに戻りながら先を探すことしかない。

ブラジルの攻撃には横の広さが全くなく、縦の連動性もない。非常にお粗末なもので得点の気配があったプレイは非常に少なく、ポルトガルに守りきるための戦い方を後半は許してしまい、相手が守備の自信を深める結果になっただけでした。ミスから自滅してカウンターを受けることも多く、いくらかメンバーを変えて、引き分けが双方にとって問題のない結果だとしても、トーナメントでの試合に不安を抱かせる内容でした。

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