■Slovenia 0 – 1 England
イングランドのスタート時の対応は攻守どちらも悪く、特に攻撃面はこれまでの試合と大きく変化が無く停滞する気配を含んだものでした。ポストプレイをデフォーに求めてしまい、スロベニアに体を寄せられて簡単に防がれてしまったり、後方からのパスに対して対応できる選手があまりいませんでした。パスを出したあとに飛び出していこうとする選手がおらず、パスを出しては足が止まり、受け手が体を寄せられてしまっているから奪われるリスクを考えて前に出ず奪われた後のことを考えているのか、それともバックパスの収め所として残ろうとしているのか。どちらにしても縦へ向かうスピードをそれによって止めてしまい、序盤に前へ出て行こうとしていたのはアシュリー・コールぐらいだったでしょうか。
カウンターからルーニーに渡り、相手の陣形が整っていないところなら飛び出していけているようでしたが、ポゼッションの段階ではどこで奪われてしまうか解らないからなのか上がっていこうとする動きは少ないままでした。動き直して前に出てディフェンダーの注意を引きつけておくことで奪われにくい環境が作れるのに、それをせずに自ら奪われやすい環境にしているように見えました。
守備はスロベニアのフィードに競って裏へ出されるボールや、カウンターからドリブルで仕掛けられた時の対応がセンターバックに任せっきりになってしまっていました。攻撃に人数をかけて上がっていないのだから、守勢になったら対応する人数が多くてもいいようなものでしたが、中盤の選手がカウンターに割って入り、カバーをセンターバックがする形にはなっていない。そのためセンターバックは抜かれるわけにはいず下がりながら対応をしてドリブルのスピードすら落とせていないこともありました。あるいはフィードに対してもセンターバックが前後の関係になってまず競る選手に対応することが多く、その裏に抜けられる選手がもう一人いるのにセンターバックが出て対応をしていました。もし裏へ出されてしまえば一対一で守備が止めなければならず、ポゼッションの段階でも同じでも同じように後方が三枚になることもあることから、ディフェンスラインの選手間に大きなスペースがあり、そこを使われていれば危険でした。
イングランドは徐々に堅さから解き放たれたのか、選手のオーバーラップが増えて、フォワードの近くに選手をおけるようになっていきました。最初はボールを触らない選手がサイドでキープしている間に中央に上がっていくだけでしたが、フォワードの近くに選手を溜めておくことができるようになった。サイドでキープすることと中央に人が入ることでルーニーが幅広く動くことができるようになり、連動していけるようになっていった。
徐々にパスを出した後上がっていく選手が増えていき、スロベニアがカウンターを出来ないほどに圧縮をしてしまえるようになってセカンドボールを拾って連続して攻撃できるようになり、ボールを失う位置を上げることが出来た。それがパスを出してからでも追い越していけるようになった要素なのかもしれず、サイドを意識させることができるようにもなった。
得点はミルナーのクロスからデフォーが中で合わせたもので、ゴールの前には彼ぐらいしかいなかったものの、ペナルティエリア付近には中盤の選手たちもも上がっており、人数はいました。それがディフェンダーの守備がデフォーに集中することができず、キーパーとディフェンダーとの間に入れる鋭いクロスが、ディフェンダーの処理を難しくさせ、飛び込む側に有利な環境を作り、得点に大きく影響をしていました。
その後もイングランドは相手のディフェンダーとキーパーの間に鋭いボールを入れられるようになり、後ろ向きの守備をさせるようになり、デフォーの飛び出しを強く意識させることで、スロベニアがラインを押し上げて前に向かって守備をし、奪ってそのままカウンターをさせる機会を減らしていけていました。それができているのは、イングランドがきっちりと相手の裏を意識したパスやクロスを出していけるようになったからこそ。お陰でデフォーが躊躇なく裏を狙うことに専念できるようになり、狙ったパスでなくても対応できるようになっていました。
後半は一段と試合展開のスピードが上がって、イングランドにはボールを動かす早さも出てきていました。スロベニアの寄せよりも早く動かすことでチェックを許さなくなってきましたし、横へのドリブルも加えながら左右に動かすことで、ゾーンの受け渡しも上手くさせず、その間にボールを持つ選手へと注意を引きつけさせて裏を狙う。縦の勢いをそのままに持ち上がってスロベニアのディフェンスラインの前で受けることで、スロベニアに前に出させず、勢いのままのドリブルやシュートを警戒させて裏を狙うようでした。あるいは、こぼれ球へスロベニアがラインコントロールをして押し上げるところを裏へ出る。
守備も前から向かい、スロベニアに組み立てをさせないぐらいのスピードで勢いよく向かっていくようになっていました。スロベニアもセットプレイは早くスタートするようにしてカウンターを狙っていましたが、フィードには対応しきれず、相手が競りに来ていないタイミングでもそらしてしまったり、コントロールしようとして出てきたディフェンダーに触られてしまったり、焦りからか状況の判断が上手くできておらず、せっかくのフィードを失う場面が多く見られていました。
その後はイングランドが前に人数をかけずに守りきる姿勢を徐々に出し始めたことからスロベニアが多くボールを前に出せていたんですが、疲れから相手を追いかけてボールを奪い返すことも出来なくなってしまいましたし、繋ぐことにしてもパスの方向と受ける選手の動ける範囲が一致せずにミスになることが多く、最後のパワープレイも、そらすところまでは出来ても、それを信頼して裏へ走ることも、出てから走って追いかけることも出来ない。一度だけ決定的な形を作ることが出来ましたが、それも集中したイングランドの守備に阻まれてキーパーにまでは届かず、徹底した時間稼ぎによってスロベニアは敗れてしまいました。
もう一つの試合でアメリカがロスタイムに得点を取らなければトーナメントに進出できていたはずなんですが、ドノバンのゴールによってそれもなりませんでした。