■France 1 – 2 South Africa
フランスは内紛からメンバーを大きく変えざるを得なくなり、好ましい環境ではない中でグルキュフがようやく起用されることになっていました。他にもキャプテンを務めていたエヴラも出場することはなく、これまで出場することの無かったアルー・ディアッラにキャプテンが任せられることになっていました。
フランスの攻撃を動かしていたのは主にグルキュフで、彼が後方からのボールを引き出しながらサイドに流れ、ドリブルでの突破を試みたり、フォワードとの連携から裏を狙うパスを出していく。ボールを引き出す動きはこれまでのフランス代表の戦い方とは違い、あまり停滞しないタイミングでボールを出せるように動いて、受けられるポジションにいるお陰でスムーズさを増していました。後方からのパスを前へボールを運ぶだけが彼の動きではなく、グルキュフ自身も前へ飛び出して、フォワードを追い越す動きを見せていく。これまではこういった動きを中盤の選手がしないためにアネルカら中央のフォワードが下がったりサイドへ流れざるを得ず、流れた後のスペースを効果的に利用できていなかった。リベリーと二枚でボールを引き出していく役割を担っているお陰でそういったプレイも出来るようになり、攻撃は安定しているように見えました。ただ逆に言えばその二人だけが前後を繋いでいるだけで、ショートパスを繋げる距離に味方がいてくれず長いものを狙わなければならなくなっている、パスの連続でポジションを上げていくことが出来なくなっているとも言える状況でした。
南アフリカはまず最初はリスクの少ないクロスを早めに入れることでフォワードの枚数を利用しつつ、キーパーとディフェンダーの間に入れていくことで相手に戻りながら処理をさせて跳ね返したボールをカウンターに繋げさせなようにしていました。そのクロスで様子を見て、フランスの変化に対応しようとし始めてからはクロスをあまり使わなくなり、相手の前で受けようとして裏へ飛び出していこうとはしなくなっていました。飛び出していかず追い越していく選手も減った。それで南アフリカはカウンターで向かってもパスコースを見つけられず足を止めてしまい、フランスのプレスを受ける。そのまま停滞していくかのように思えていたんですが、裏へ走ってくれる選手によって得たコーナーキックで南アフリカがゴールで先制点を得て状況は一気に変わってしまいました。
フランスはそれまでグルキュフがボールを多く触って構築できていたのがあまり触れなくなり、フォワードには収められているものの、そこから追い越していくこともしているがそれだけで終わってしまって幅の広い動きが出来なくなり直線的になってしまっていました。
それだけなら一時的に流れを失っているだけで挽回することは出来ていたのかもしれませんが、試合を組み立てて流れを作る役割を担い、追いつくための中心になるはずだったグルキュフが、ロングスローから競り合いから肘を相手の顔に当ててしまって一発での退場になってしまった。酷く勢いに乗ったまま肘を出していればカードを出されるのは仕方が無く、この大会の退場の多さやアドバンテージを考えると、それほど驚くようなことではありませんでした。
これでフランスはフォワードと中盤を繋ぐ選手がいなくなり、フォワードの一枚が引き出しに戻るもののそれでも中盤との距離が開いた状態を埋められるほどの下がるわけにはいきませんし、守備的な選手は上がってきてはくれない。徐々にリベリーが中に入り、下がってボールを引き出す役割を担ってくれるようになりましたが、これでもまだ大きな隔たりがある前後のポジションを埋められておらず、カウンターを受けてはディフェンスラインは下り、より前後の分離を激しくさせてしまう。南アフリカにとってはボールを持ってドリブルをするだけで相手が下がってくれるだけに、それをしていくだけでバイタルエリアがぽっかりと相手中央を利用できるようになる。
ずるずる下がってくれるサイドを利用してからクロスに人数も入れ、下がりながらマークに付く選手を見ているのならフランスは崩れることはなかったんですが、ボールを見て人を見ていなかった。オーバーラップする選手についていけず、マークの受け渡しも出来ず、二点目を献上してしまうところに至ってしまいました。
フランスには諦めにも似た鈍さがあり、プレッシングもマークの受け渡しも遅く、奪ってカウンターを出来る状態でも上がっていく選手が見えてこない。南アフリカはどんどんとスピードを上げていて、プレッシングで相手から奪い返す回数も段階も早く、パスでサイドから中へ、そして裏。そういった短いパスで構築できて相手を揺さぶるだけの距離をそれぞれが保っている。フランスは中盤で起点となりそうな選手にはディアビーやディアッラらをつけてマークしていたんですが、南アフリカの選手は活発に動いてその背後に入ったり、立ち止まって伺うことをしなかったために掴まえづらく、すぐにセンターバックへと受け渡さなければならなくなっていました。フランスもそれは出来ているし中盤を下げてバイタルエリアを消せているんですが、カウンターをされると相手のスピードに翻弄されてついていけず、中央を圧縮しているだけでサイドを空けて守らなければならなくなり、南アフリカに幅広く、そして素早く使われている。守備の対応は一対一でカバーをしてくれる選手はおらず、自分のポジションを守っているだけでピンチは数多くありました。
フランスはある程度ボールを回していけるように再びなっていましたが、自分で仕掛ける意識が乏しく、サポートの距離も遠く、ボールスピードも遅い。こうなると回していても動く選手がなく、ただボールを動かしているだけになり、チャンスが増えるわけではありませんでした。
アンリが投入され、サニャのドリブルからリベリーがディフェンスラインの背後を取り、マルダが得点を得た部分は状況の改善が見られていました。それまでパスを回しているだけで仕掛ける姿勢が無く、相手の陣形を崩せていなかったものが、ドリブルで仕掛けたことと攻撃に出て得点を取ることだけを考えているような南アフリカの選手たちによって、ボールウォッチャーを作り出して、抜けられたあと中のコースを誰も埋めに行かない環境を作っていました。
南アフリカはこれで二位に入る望みを失ったように足が止まって前へ向かっていく意識が削られていった。人数も上がってこなくなり、サポートも遠くなってパスで相手を揺さぶることも出来ない。フランスは逆にアンリが善戦から大きく戻りながらボールを受け、体を張ってキープをして周囲の上がりを促したり、アンリとリベリーがボールへの執着心を強く見せて他の選手たちを引っ張ってあと一歩の攻撃をして意地を見せているようでした。ただそれ以上の効果はなく、同点に追いつける環境は作れませんでしたし、逆転や2位へ、と狙える環境ではなかっただけに、その後の間延びした展開からミスも増え、ファウルが増えても仕方のないものでした。