2010 年 6 月 のアーカイブ

2010 FIFA World Cup Round of 16 スペイン対ポルトガル

2010 年 6 月 30 日 水曜日

■Spain 1 – 0 Portugal
スペインはいつも通りにポゼッションを高めてボールをキープしながら左右へと動かし、相手のゾーンを動かしながら前へと進めていく。立ち上がりのポルトガルの守備は甘く、受ける姿勢だけが出てしまい、選手と選手の間に招き入れてしまっていました。それほどスペインが運動量を多く活発に動いているわけではないんですが、ゾーンの形勢を優先してマークよりもポジションの維持をしているかのように不安定なものでした。

ただ攻撃面ではスペインのフォアチェックをかいくぐるためのプレイはいくつかしていた。フィードを中心としてウーゴ・アウメイダやクリスチアーノ・ロナウドといったところを走らせようとするもので、裏へ抜けさせてプレッシングにかからないように走らせていた。センターバックの所から出されるそれを掴みきることは難しく、その後はダイレクトでパスを動かされてかいくぐられてカウンターをプレッシングによって出来た裏側のスペースへの利用を通じてしてくる。その一連のプレイはスピードを活かそうとしたもので、前へ向かう守備から受け止めることが出来ず、後ろに下がった選手がそれでも戻りながら対応しなければならないほど前へ仕掛けられていましたし、クロスも多く入れられてしまった。サイドを多く使われてサイドバックが高い位置を取りづらくさせられていましたが、まだそれほど危険なプレイはされていなかった。

スペインは押し込まれてもそこから一気にクリアしてしまうようなことはせず、パスを繋いで全体をどんどんと押し上げて元の位置にまで戻ってしまえていた。パスだけで足が止まってしまうようなことはなく、キープの時間が長くても仕掛けをしながらパスのタイミングを探していたり、パスを出して前へ動き直して人数を溜めていく。パスとドリブルの二つと、それと中への人数があるお陰でいくつかのシュートを打つことまで持っていけていましたし、バランスとしては良い状態でした。
ポゼッションから前へ運ぶ場合には、左のタッチライン際にビジャが開くことで、高くワイドな位置に起点を作って相手を広げようとしていました。中央でパスを回してしまうだけになることが多かったグループリーグとは違う展開で、相手に中央を固めさせず、引き出そうとすることで中央にスペースを作って切れ込んでの展開を狙えるようにしていました。

しかしポルトガルも緩やかな守備をいつまでも続けているわけではなく、徐々に中のイニエスタやチャビに対してマークに行くようになり、守備がポジションを重視したものから人を掴まえようとするように動き、ポルトガルからはエンジンがかかったような印象を受けましたが、囲い込んで奪い、カウンターをするにはいたらず、スペインの上手さが上回っているようでもありました。

ポルトガルが積極的な守備から攻撃に出ようとしてくれたお陰で、スペインのボールの奪われる位置がプレスをかけられる一になりましたし、フィード一つ出浦へ抜けようとする回数を減らして、中央に一度収めてからサイドや縦の展開を狙うようになったことでスペインのプレスの網にかかる回数が増えていった。ポルトガルは中央に一回当てて置くことでスペインの守備がサイドに出ようとしているところを中央に集め、そしてまたサイドを利用しようとしているかのようでありましたが、サイドを警戒するあまり中央を使わせてしまい、その点ではポルトガルの思い通りでした。

スペインは一時的に押し込まれることになって全体が下がってしまっていましたが、あまりこれが攻撃に響くことはなく、問題でもありませんでした。ボールをピボーテが受けてサイドバックと連動して横に動かしながら逆サイドへ運んび、スペースが作られていたそこを縦に利用する。縦のドリブルが相手を押し下げて前を塞がれてしまうと、中でパスを受ける。中央とサイドのポジションのバランスがよく、ボールをよく動かせていましたし、チャビやイニエスタがバイタルエリアで受けようとして、利用も出来ていました。
ただドリブルだけがスペインには足りておらず、ポルトガルが引いて守ってカウンターのスタイルを徹底し始めたことで崩しきることが難しくなり、徐々にブロックの外側や手前を利用しなければならなくなっていましたし、バイタルエリアも消されて利用できなかった。バルセロナのやり方に近くするのであれば、停滞してきた状況ではどこかでメッシがするようなドリブルでの変化と相手を引きつける動きを期待しなければなりませんでしたが、セルヒオ・ラモスやフェルナンド・トーレス、ビジャも縦への突破を狙おうとするものの、横へスライドして相手の視線を引きつけるような動きを出来る選手はいませんでしたし、奪われやすくカウンターの原因になりかねないそれを抑え気味にしているようでもありました。

後半になるとカプデビラがオーバーラップをして、左側も積極的に利用できるようになっていました。それまではビジャが起点となるだけでしたが、連携をすることでサイドでの縦の利用がクロスを入れられる可能性を広げていました。クロス自体に合わせるにはフェルナンド・トーレス一人では難しさがありましたが、サイドへ意識をつくよくさせることで中央にチャビやイニエスタが入って利用をできるだけの余裕を与えていました。

状況が変わったのはフェルナンド・ジョレンテが投入されてからで、ジョレンテの高さと中央でのポジション、最初のアーリークロスを合わせたプレイが強い印象となって残っているようで、クロスを警戒させるようになり、サイドから中への切れ込みへの反応を遅らせていけるようにもなっていました。サイドからのボールだけではなく、中央に縦パスを入れるときでも裏へ直接狙わなければならないのではなく、センターバックと競りながら体を張って収めてくれる。お陰でディフェンダーはカットに向かえず、体で押さえていることもあってポストプレイをしなくても中盤の選手がセンターバックからのチェックにさらされずにプレイをできる。得点の時のイニエスタとの連携も同じようなもので、あの体を張る姿勢があるからこそ展開の変化をつけられる。いいポストプレイでした。

得点を取ってしまえばあとはスペインは自分たちのボール回しをすることで十分な展開にすることが出来、ポルトガルが待ち構えるのではなく追いかけまわさなければならなくなっていましたが、押し込まれてしまってもスペインは最後にはジョレンテへのフィードで逃げる選択肢を得たことで楽に逃げられるようになっていました。センターバックやピボーテにもポルトガルのチェックを受けるようになっていましたが、ミスは多くなっているものの支配していることに変わりはありませんでした。逆サイドのサイドバックの上がりは少なくなって展開の幅は狭まりましたが、チャビが前後左右に動いてボールを引き出して回ることでポルトガルは全く奪えませんでしたし、スペインが体勢を整えていくことが出来た。

ポルトガルは奪いに行けばファウルにされてしまい、奪うことが出来ず再びスペインボールにしてしまう。奪いに行けば奪った後のスペースを利用される。ミスを誘ってもなかなかミスはせず、仕掛けていかなければ奪えない。苛立ったプレイが多くなってチェックは単調になってより奪いづらくさせていましたが、終了間際にはようやくポルトガルの時間を作ることが出来ていた。アーリークロスから何度もペナルティエリア内でのプレイの可能性があり、多くのチャンスをこの形から作れそうな気配がありましたが、リカルド・コスタが肘打ちをしたらしくレッドカードで退場になってしまったことで、その勢いも途切れてしまいました。

2010 FIFA World Cup Round of 16 パラグアイ対日本

2010 年 6 月 30 日 水曜日

■Paraguay(PK Win 5-3) 0 – 0 Japan
日本はフォアチェックから守備へと入っていましたが、すぐにそれは一定のラインまで引いて待ち構えるものへと変わっていきました。パラグアイが速攻だけを狙っているのではなく、きっちりとボールを保持してパスコースを探す時間もあった。それだけの余裕を持って持たれてしまうと徒労に終わる守備を選択することは難しく、ハーフウェーラインの手前で待ちかまるようになった。それよりパラグアイが持ち上がってくれば積極的にプレスに向かい、パスコースを塞いでいく。フォワードやサイドで受けようとする選手には体を預けて自由にさせず、スピードに乗らせないようにしている。

日本の攻撃はフィードを中心としたもので後方から本田を狙ったボールを出し、そのこぼれ球を拾ってから攻撃に繋いでいく。守備の位置があまり高くなく、ショートカウンターもそれほど狙える環境ではなかった。本来なら繋いで運んでいきたいところでしたが、パラグアイはボールサイドに人数を集めて守備をしようとする。スペースがあまり多くなく、奪ったあとに素早い切り替えからフォワードに後ろから追いかけられ時間を得られず、繋ぐことでカットされるリスクを背負ってしまうためにフィードを選択しなければならない部分もありました。

守備は徐々に安定をしていき、ボールに向かっていく意識と共に厳しく当たれるようになっていった。日本はボールに多く向かっていくのではなく、ゾーンとして一人が一人を掴まえておいて前へ運ばせにくい環境を作る。ゾーンがきっちりと構築されているお陰でパラグアイも攻撃の手段を後方からのフィードぐらいしか見つけられず、パスを出した後に動き出してもう一度パスを受けられるように、とはなっていない。サイドバックの裏を狙うパスを何度か出していこうとしていましたが、それは中のブロックを日本が抑えているために跳ね返される回数が多く、身長差のある外側を利用することでボールを受けて、そこからの展開を狙っていました。ただそれは日本の守備に引っかかることを嫌がっていて、こぼれ球をパラグアイが拾えていないことがよりパスを長くさせてタッチラインを割らせる回数を増やしていました。

ただ実際にボールをサイドで受けられてしまうと、日本の守備は数を向かわせることが出来なかった。中央を固めてフィードに対応することからサイドバックを中に絞らせて対応するケースが増えていき、中央の厚みとブロックはきっちりと出来ていましたが、サイドはその分大きなスペースを空けてしまっている。そこを埋めるためにサイドアタッカーの大久保や松井が戻らざるを得ず、全体を押し下げてしまう事にも繋がっていました。それでもクロスを上げさせずカットしてしまうことは出来ておらず、戻ってきて守備をするために一歩遅れてしまうこともある。そうなってしまうと身長の低いサイドバックがクロスに対応しなければならず危険でもありました。

サイドが下がってしまえば、攻撃が犠牲になってロングボールを出していくだけでしかない。本田がきっちりと収めてキープをしなければ押し上げていく時間は得られず、収めようとするとすぐに囲い込みに入られてしまう。日本が積極的な守備が出来ている段階ではこぼれ球への反応はとても早く、囲まれてしまってもセカンドボールを拾ったりパスを受けることも出来ていた。チェックはパラグアイのコントロールミスを誘い、奪いに出ることもできていましたし、パラグアイはディフェンダーがボールを奪われることを恐れてそこでボールを動かす回数を増やす事ができなくなっていましたが、パス自体の精度を落とすことは難しく、継続してそれを繰り返すことは出来ず、一進一退の状態で状況は常に繰り返されていました。

パラグアイは後半開始の前後から得点を取れない焦りからか縦パスを多く入れてくるようになっていました。後半になると日本は前へ積極的に人数をかけることで守備一辺倒にはならないことを示そうとしていましたが、それが日本のディフェンスラインと前との間を空けさせてしまって縦パスを通される原因にもなっていました。それでもサイドバックとアンカーはよく踏ん張って守っていましたが、パラグアイに何度かボールを拾われてミスをした。それがパラグアイに飛び出しをさせてピンチになりラインがそれによって恐れてしまってさらに下がり、パラグアイが持つとすっと下がってしまうようになった。それが守備全体の位置を低くしてしまって、全体のポジションが前半のように元に戻ってしまい、勢いは出せなくなってしまった。元に戻そうと遠藤や松井が本田と近い位置で守備をするようにしたことで、セカンドボールへの反応も増えていましたが、パラグアイの奪われた直後に囲い込んでしまう守備にかかっていることもあって、それでも効果的であり続けることは出来ませんでした。

日本は徐々に反応が遅れていってディフェンスラインが下がってしまうようになった。ルーズボールへの反応が遅くなり、ギアのチェンジができずに触れない場面が増えた。阿志賀でないことで近くの味方に頼むプレイが増えてしまい、それがボールを触っていない空白の時間を作ってしまい、相手に奪われてしまいそうな危険な場面を作ってしまうようになった。悪い傾向が出始め、クロスを多く入れられてしまうようになっていました。セットプレイやスローインのようなものであっても、サイドを深くから利用されるようになったことでボールをペナルティエリア内に運ばせてしまっていましたし、中央を固めていてもボールに触らせてしまうようにもなっていました。

選手交代から中央に人を残して本田が下がったりサイドに流れても中への選択肢を残せるようになっていましたし、中村憲剛からのパスがそれまで片側のサイドでの展開を続けてしまうことが多かった攻撃に逆サイドの選択肢を与えましたし、縦へのパスを積極的に入れることでスピードを得ようともしていた。

延長に入ると日本もパラグアイも前に出て動こうとするようになり、特にパラグアイはそれまでよりも日本が前に動いていたこともあって、追い越していく動きを見せていくようになった。フォワードをディフェンスラインと戦わせて裏を狙わせ、バリオスとアエド・バルデスを走らせて運動量で日本の最後尾を引っ張って間延びをさせていく。その手前で途中投入されたカルドーソらが触って裏へ出す。連動も出ていましたし、そこからサイドへ出されるボールに対して反応が遅れてしまう。中央を固める人数の他に余分はなく、サイドのケアに出て中央を薄くするよりも中できちんと触らせないことを目指しているようでした。何度も繰り返されてしまえばきっちりと固めていても、相手に触られてしまうようになるのは仕方が無く、シュートを何度も打たれ、サイドから中へのドリブルも許してしまい、決定的なパスを通してしまうこともあった。それでも全員が集中をして、体を張ってコースに入ってゴールを決めさせることはありませんでしたし、足が止まりかけている選手のサポートを他の選手が行い、全体のバランスを見ていられる選手もいた。パラグアイはファウルを貰いたがっているような様子もありましたが、それをファウルにさせずに止め、パラグアイ側に日本がファウルをさせるようにもなっていました。特に延長後半はパラグアイにとっては逃げ切るための戦い方でしか無く、時間を稼いで蹴らせないようなプレイも増えていましたし、ファウルの数はより多くなった。

ただ直接狙うフリーキックを日本は最後まで選択することはなく、得点も奪えずにPK戦へと突入し、そこでついに敗退をしてしまいました。
試合を通してどちらかに流れが傾くことはなく、一進一退の状況からどちらも決定的な形を作った。それをどちらも決めきれず、シュートを打てなかった場面もいくつかあった。

2010 FIFA World Cup Round of 16 ブラジル対チリ

2010 年 6 月 29 日 火曜日

■Brazil 3 – 0 Chili
ブラジルはフェリペ・メロとエラーノが怪我をしている影響からボランチにはラミレス、ミッドフィールダーにはダニエウ・アウベスを第三戦と同じく起用をしてきていました。カカとロビーニョが先発をしているお陰でシステムは元に戻り、攻撃に入ったときにサイドバックがオーバーラップを躊躇してしまい、サイドから攻撃が出来ない、というような場面は少なくなっていました。

ただ試合はチリの攻撃から入り、フォワードへボールを預けるのではなく、前へ仕掛けさせるためのパスを出し、ポストプレイのようにいったんスピードを止めてしまう危険のあるプレイは選択せずに、勢いを保ったまま前へ向かうことを選択しているようでした。中央とサイド両方でそのスタイルを使い、特に右サイドバックのマイコンの裏を狙うパスが多かった。マイコンがオーバーラップをして攻撃に参加していたためでもあるんですが、そこを利用しようとする意図がチリにはあったんですが、スペース自体は

チリの攻撃から入り、チリはフォワードに受けさせずに前へ仕掛けながら中に入れて、ブラジルのサイドバックとの勝負になる。手前でボールを持っている間にブラジルのサイドバック、そこの裏を狙ってクロスも。サイドバックのケアの為にジウベルト・シウバが中央からサイドバックのカバーのために動いているために利用できるほどのスペースはなく、ルシオを右に流れさせないことで中央のブロックは崩れず、サイドから中への展開も許していませんでした。ボランチが本来いるべきポジションは、フェリペ・メロほどではないもののラミレスがスライドしながら埋めているためにチリとしてはマイナスのボールを出して中央を利用することも出来てませんでした。

チリは積極的にボールを奪いに行っていましたが、奪い切るにはブラジルの体の使い方が上手くぶつかるだけでは奪わせてもらえませんでした。それに加えてカカら攻撃陣に対しても体をぶつけてバランスを崩させたい守備をしていましたが、それをさせてもらえなかった。それらの選手は他の味方が掴まえられているところにわざと入って、それを囮にしたりスクリーンにして守備を寄せさせないようにしてボールを受けて前へドリブルを仕掛ける。スペースは少ないものの、個人の判断と技術に優れた攻撃を何度か見せていました。
他にも積極的な守備と戻ってスペースを埋めようとする守備を利用して、戻りながらボールを受けたりプレイをすることで相手に囲ませるような形を作る。そうするとチリは前へと引き出されてしまって中盤の裏を使われてしまう。それでもチリは中央をセンターバックが固めているためにそれ以降には侵入を許さずミドルシュートを打つ程度で収めさせていましたが、ブラジルが中央の攻撃を中心にしてくれているお陰のようでもありました。

ブラジルは徐々にサイドバックを上げずあまり縦を崩そうとはしなくなっていきました。右もダニエウ・アウベスが外に出てこず、ボランチの前でプレイする機会が多くなり、カカやロビーニョの下で両者を繋ぐ役割にも似ていました。悪くいえば前後のポジションが縦に動く範囲を狭めているかのようなポジションで、サイドでボールを受けてマイコンとの連動も目指せませんでしたし、誰かをサイドに押し出して、そこのキープから自分が飛び出していく得意なプレイもしていなかった。中央に偏りすぎた攻撃がチリの囲い込もうとする守備を助けていましたし、シュートもあまり打てそうな気配はありませんでした。

そうやって停滞しているように見えたんですが、得点のきっかけになったのはマイコンのオーバーラップからでした。その頃にはサイドバックが上がってクロスを狙うようになっていましたし、ドリブルでの仕掛けも見られていました。ようやくサイドを使う意識が出たかのようで、そのクロスは跳ね返されてしまいましたが、それで得たコーナーキックから得点が生まれ、ブラジルはより堅く守ることができるようになっていきましたし、チリは攻撃に出なければならなくなっていた。状況は間延びしたカウンターの応酬のようでもあり、それでもチリは攻撃出てしまっていた。それがブラジルにスペースを与える結果になり、それまで固めていた中央を使わせてしまい、スピードに乗ったままプレイをさせてしまった。人数でそれを掴まえきれず、後方ではパスコースも塞ぎきれず、スルーパスを許してしまって失点をしてしまった。

ブラジルは二点のリードから攻撃にかけるバランスが変わり、サイドに流れながらボールを引き出していくことでチリの中央の守備をサイドに引き出していけるようになり、後ろから飛び出していく選手が中央に出来たそのスペースへと進入していき、チリが数的有利な環境を作って守れなくなった。

チリは後半から選手を入れ替えて攻撃に出ようとして、サイドバックの横を使い、相手を引き出してしまおうとするようになりました。前に人数を増やしたことでチェックを再び前から行えるようになっていましたし、ミスも誘えるようになっていった。サイドを多く使うようになったことから鋭いクロスを入れて、ブラジルに戻りながらの処理をさせようとする意図はありましたが、ブラジルの中央のブロックは非常に堅いまま壊していけませんでした。サイドの処理はサイドバックと中盤に任せられていて、ルシオやフアンはあまりポジションの変更をしてスペースを作ってしまわない。中盤のジウベルト・シウバやラミレスらが少しだけ前に出る、あるいは後ろに下がってスペースをより塞いで中央を圧縮してしまうことで、そのブロックの手前でボールを持たれる回数は増えましたが、徹底的なまでのスペースを消して固めるブロック構築を崩すことは出来ず、得点を決めるどころか追加点を許してしまうだけでした。

その後もチリは人数を入れてより攻撃をしようとしていましたが、どれだけ人数を入れてもルシオらのブロックを崩せず、間に入ることも揺さぶってスペースを作ることも難しく、その手前でシュートを打つしかありませんでした。サイドからクロスを入れても飛び出しても崩すことが出来ず、ボランチがその前できっちりと相手を止めて、スペースを埋めてマイナスのクロスやパスも許さず、ブラジルはブロックの外側を散々利用させるだけで確実な潰しをして、いくらかのこぼれ球を相手に与える程度でした。

2010 FIFA World Cup Round of 16 オランダ対スロバキア

2010 年 6 月 29 日 火曜日

■Netherlands 2 – 1 Slovakia
試合開始当初はスロバキアのボールキープ技術が目立つことから入っていました。パスを回して持ち続けるのではなく、一人一人が奪われないようにコントロールしながら前へ向かっていくことでキープをし、オランダがそのドリブルへの対応に出て行くこと出来る裏へのスペースへ入って、受けてシュートをする。オランダが囲い込んで奪おうとする意識を持っているため、キープしてそれを引きつけることができれば裏にスペースが出来、上手く利用でできそうな雰囲気を感じることはできていました。

守備でもスロバキアはロッベンに持たれる単純に飛び込まず、ディフェンスラインの前に中盤の選手を並べて、ロッベンがドリブルで中へ、縦へと進入していけないように厚く守っていました。その手前をスライドするようにドリブルさせているだけであれば脅威ではなく、限られたコースからミドルシュートをさせる程度でした。ただロッベンに対応するために厚みを作り中央へ集めるためサイドを使う余地はあり、オランダはサイドバックの外側を利用できれば、クロスを入れることは難しくなさそうでしたが、ロッベンが右に、カイトが左と利き足がサイドと逆であることからそういった利用は少なく、スペースを突くことは出来ていませんでした。

スロバキアは前から守備もしていたんですが、オランダのように激しく囲い込む事はしておらず、縦へ出すのを遅らせてセンターバックやディフェンシブ・ミッドフィールダーから前へ運ぶのを遅くさせる。ただ後方に人数を置いて備えているためにオランダが一度そこを通り抜けてしまうと、スロバキアの中央に絞った守備の前で受けられてしまう、あるいはボールサイドへ寄せた守備の前で受けられてしまうことになる。そこで受けられてしまうとディフェンダーはラインを高く保っていることから裏へのスペースがあり、飛び出しを狙われてしまいましたし、中央に寄った守備の外側にもその位置からなら利用をされてしまう。

そこまでは上手くロッベンを抑えておくための布陣が出来上がっていたんですが、カウンターとなるとそれを継続しておくのは難しかった。予め掴まえていてもスピードによって振り切られてしまい、ディフェンダーを縦関係にして抜かれた後のカバーでコースを限定して奪っていく動きが出来ずに横に並んで同じ動きをしてしまった。見事にロッベンのキレについて行けていけず失点をしてしまいましたが、その後は人数がいる状態では突破させていませんでしたし、勝負のドリブルもさせず、守り方は間違っていないことを証明していました。

先制点を得たオランダは後方に残る選手と前でボールを追い越す選手と分離をし始め、キープを完全なものにしていなければオーバーラップをしない、リスクを負わない攻撃へと変え、安定した守備の為の攻撃を目指し始めていました。後方でゆったりとキープしながらタッチライン際を使いながら前へ運んでいく。守備プランの変更をオランダはさせようとしているようでした。
スロバキアは焦らされていくことで早くボールを奪いたく、待ち構えて受け止める守備ブロックの構築を崩してしまい、オランダの選手が受けに戻る動きについて行ってしまっていました。オランダがその時間帯にしていたような、縦パスを収める選手に対して密着して体を預け、前向きの攻撃をさせずに抑え込んでしまおうとしたものではなく、一歩遅れて追いかけるもので効果的なものではありませんでした。オランダはそれだけではなく、スロバキアのセンターバックら、比較的テクニックの無い選手たちにはプレッシャーを与えてミスを誘う守備もしていて、上手く守れている印象がありましたが、受けさせないように強く当たる守備が連続してファウルになり、セットプレイから押し込まれる環境を作ってしまい、攻撃に出られなくしてしまっていました。

いくつか押し込んだことでスロバキアも前からの守備が出来るようになったものの、チェックをしてもオランダはセンターバックにも一定のテクニックがあって大崩れはせず、前へフィードできるためにあまり効果的ではありませんでしたが、オランダはフィードを受けるほど前に出ておらず、相手センターバックのへプレスも辞めてしまって、じっくりとスロバキアに持たせるようになっていました。後半に入ってもそういった相手に持たせて待ち構える状態からの変化はなく、一定の成功を収めていたスロバキアのセンターバックに対してのプレッシャーにもいかず、縦へのパスに対して密着して前を向かせなかったものも、少しセンターバックが距離を置いて守るようになってしまい、前を向くチャンスこそなかなか得られませんでしたが、真後ろを向きながら受けるしかなかった状況の改善はできていました。

オランダはスロバキアが攻勢に出ると同じく攻勢に出て一方的な展開を作らせないようにしたたかな変化をもたらしていて、こぼれ球からロッベンがチャンス作ったことをきっかけにペースを取り戻して、ボールをキープできるようになっていました。タッチライン際を多く使いながら前へとボールを運んでいく。パスに対して追い越していく選手も出てくるようになっていましたし、もう一点を取る意識が出てきているようでした。押し込まれてしまうことで、スロバキアはサイドを使って勝負を仕掛けようとしても、サイドバックとの連携は目指せず、一枚がオランダの二枚を相手に勝負をしなければならない。上手く一人をかわすことが出来ても次で捉えられてしまい、ファウルをも奪えない。

ロッベンに代えてエリアが入ったことで、オランダはカイトが右に回り、よりサイドを縦に使えるようになっていきました。攻めに転じようとしていたスロバキアを戻らせて、クロスを入れるようになった。これでスロバキアは引いて中を固めて跳ね返さなければならず、大きく戻ってスタミナを消費してしまう。運動量の増加から足が止まり始め、カウンターになっても上がって行けず、オランダの囲い込む守りを突破できず、パスで逃げるコースも用意できなくなった。そんな中でも裏へパスを出して決定的な形を作ることは出来ていたんですが、この日のスロバキアは枠にボールを飛ばすことが出来ず、決定力を欠いていました。

そして最後は自滅のようなものでした。判定に不満を持つことで守備への切り替えが遅くなり集中を欠いてしまった。オランダの抜け目ないクイックリスタートを許してしまい、追加点を決めさせてしまった。一点であれば追いつける可能性はまだあったんですが、二点差はあの時間では大きなものでした。

オランダは終了間際にはまた収めさせないように積極的な守備へと切り替え、スロバキアが何とか点を取るために出てこようとするタイミングで、オランダが積極的な守備から攻撃をしてスロバキアの前への意識を削る。試合の流れをコントロールしたオランダにスロバキアはパワープレイすら出来ず、人数も増やせなかった。
最後にPKを得て一矢報いることができましたが、それ以上の時間は残されていませんでした。

2010 FIFA World Cup Round of 16 アルゼンチン対メキシコ

2010 年 6 月 28 日 月曜日

■Argentina 3 – 1 Mexico
序盤は審判がファウルを取らないケースが多く、体の接触自体は多く倒れている姿も多く見かけられていたんですが、審判はファウルを取らずに試合を続けさせていました。アルゼンチン、メキシコ双方が体の使い方が上手く、ファウルにならない程度の奪い方をしていたこともありますし、ボールへ足を出す技術も持っていた。それ以上に審判が倒れる技術を警戒してのファウルの判断だったのかもしれません。

アルゼンチンはフォワードのそれぞれがマークを受けていて安定して受けさせてもらえませんでした。ゾーンに入った選手をメキシコはきっちりと掴まえていて、複数で囲い込むよりも一人に一人がつき、前へ動かせないようにしているようでした。アルゼンチンはフォワードのテベスこそ少しの運動量を発揮していましたが、後方の選手がボールを持った際に動き出してパスを要求するような動きは殆ど無く、足が止まっていてメキシコのマークを容易にさせていました。
メキシコは動きの少ないそこで奪ってからカウンターで縦へと一気にボールを運ぶ。アルゼンチンは足が止まってから守ることが多く積極的には奪いに入っておらず、緩やかにコースを切って縦のフィードをさせる程度ぐらいでしかありませんでした。前は一応防げていましたが、奪いに行くほどの積極性を持ったものではなく、その手前から二度ミドルシュートを打たれてゴールを脅かされてしまった。どちらも実際に得点になってもおかしくないもので、修正が必要な状況でした。

メキシコのきっちりとしたマークによってアルゼンチンは縦のボールを収めても、戻りながら受けるしか無く、勢いのあるチェックに対してかわす手段がそれほどありませんでした。周囲が動いていないことでサポートがすぐに受けられる状態ではなく、それぞれにマークがついているために、チェックを受けたからといって瞬間的に渡せる場所ができていない。メッシが受けてしまえば、これまでは動き出す姿が見られていましたが、この試合ではそれも見られず、ファウルやそれに似たプレイによって止められるばかりで、メッシは高いポジションを保つことが出来ずに試合を作るためにも中盤に下がってプレイする時間が大半を占めることになっていました。下がっていることで密着したマークは受けていないものの寄せは早く、ドリブルに入ることが出来れば止めることは難しいものの、周囲との連動が出来ておらず、パスコースも切られながら足手を押し込んでしまうために味方にパスを出せず、自分でシュートを打っていくぐらいしかありませんでした。強引なプレイですし、アルゼンチンはフォワード二人にメッシが中央に入っていってしまうために、中央に人数が集まってしまって、ドリブルでの仕掛けが中央に寄ってしまって、相手の守備に人数を増やしてしまっているだけ。メッシが下がって受けることで、相手の守備を引きつけて、バイタルエリアを空ける効果はあるんですが、サイドの利用は少なく、そこの利用もあまりありませんでした。

攻撃のバリエーションを用意できない中で得点できたのは幸運で、審判の誤審も含めて幸運とするしかないものでした。メキシコがフィードを跳ね返したボールがバイタルエリアのメッシへ渡ってしまい、裏へ抜けるテベスへのスルーパスになり、キーパーに跳ね返されたボールが再びメッシへ渡った。これをシュートをして直接決めてしまえばその後の問題は起こらなかったかもしれませんが、テベスが触らなければメキシコの選手に防がれていたかもしれない。そのテベスのポジションはオフサイドで、触っていたのなら笛を吹かれてゴールは無効になるべきだったんですが、主審も副審もゴールを認めてしまってこの試合の流れを変えてしまいました。副審の位置が不安定で判断できなかったのか、メキシコがきっちりと戻りすぎたためにブラインドになったのかは解りませんが、判断を間違ったのは確かでしょう。

それ以後はメキシコに苛立ちを増やしてしまい、当たりをファウルの寸前で止めることなくファウルになるようにもなった。しゅしんがそれまで笛を吹かなかった程度でも笛を吹いて試合を止めるようになりましたし、そこまで転げる選手は多くてもファウルの少ない試合だったものが一転して笛を多く吹かなければならない試合へ変化してしまいました。

アルゼンチンは得点をとっても動きを活発化する様子は見られず、メキシコにメッシへのマークをより一層つけられてしまうだけでした。多少フォワードが追う姿勢を見せてチェックをするようにはなっていましたが、完全ではありませんでしたし、焦るほどのものではないようにみえました。しかしオソリオが、コントロールかパスミスかは解りませんが、極めて単純な部分でミスをして、イグアインにアシストをしてしまい、自滅をしてしました。

アルゼンチンは後半から多少運動量が出てきて、立ってボールが来るのを待っているだけだったものが少しだけ動くようになった。メキシコがタイトなマークによって受けさせなかったものが、攻撃に出ようとする意識から緩めてしまったのかもしれませんが、アルゼンチンがボールを受けるためのスペースを作るようになっていました。それがテベスにバイタルエリアでボールを受けさせ、弾丸のシュートを決めさせる要因になっていて、変化が早くも結果に結びついて勝負を決めてしまいました。

メキシコは中央からサイドへ、サイドから中央へ。そうやってアルゼンチンの守備を横に動かし中に集めておいて、そこからサイドを利用する。アルゼンチンの守備が中盤のマスケラーノを中心にバイタルエリアを埋めていて、ドリブルで進入することを難しくさせているのも、その戦い方を選択している一つの要因でしょう。その外側からミドルシュートや、ドリブルでの仕掛け、クロス。変化はメキシコの方が多いように見えましたが、徐々に得点をしなければならい焦りから、メキシコは中央を使ってからサイドを使うようなバランスの良さが無くなっていき、サイドからサイドの利用をしてしまうようになり、アルゼンチンが対応に出られるようにしてしまっていました。チェックに向かう選手で中盤一見すると空いているように見えるものの、マスケラーノはしっかりとセンターバックの前に立ちはだかることでメキシコはそこへ進入することができずに、マスケラーノをなんとか回避したがっているような攻めをしてました。引っかからないように少し軸をずらして縦パスを通す。横に揺さぶりながらミドルシュートを打つ。変化はいくつかありましたが、得点に繋がったのはマスケラーノの側を通した縦パスからエルナンデスがコントロール一つで抜いてゴールを決めた場面のみでした。

ベロンが投入されたことでメッシのポジションを一つ上げたものの、パスの安定供給はなされずに、中央で受けて直接ゴールを狙えるような受け方は出来ておらず、サイドに流れてから受けなければならなかった。そこからドリブルで入っていってもコースは塞がれていて左足側を切られながらカットインしてもシュートまでは持っていけず、多少のアクセントにはなっているもののそれ止まりでしかなく、メッシはコントロールをミスするなど持ち味を出しきることはできていませんでした。ロスタイムにドリブルからシュートまで持っていきましたが、やはりゴールにはならず、この日もメッシはゴールに恵まれていませんでした。

2010 FIFA World Cup Round of 16 ドイツ対イングランド

2010 年 6 月 28 日 月曜日

■Germany 4 – 1 England
慎重な入り方をした両チームでしたが、より動きが重かったのはイングランドでした。グループリーグから悪化したわけではありませんでしたが、よくなったわけでもありませんでした。イングランドはフォワードへボールを預けようとパスを出しているものの、パスを出すと同時に駆け上がったり、ボールのないところでフリーランニングをしてスペースを作ろうともしていないし、そういった動きで変化をつけられる選手がいませんでした。

ドイツは慎重さを残していましたが、それとは対照的に前へ向かう姿勢を出したもので、パスと動き直しが頻繁に行われて、再びボールを受けられる位置に動くまでに多くの時間を必要としていませんでした。イングランドは強く奪いに出ても、個人のボールキープと共にその動きとパスがボールを奪われない環境を作っていましたし、相手に対応のために出てこさせて裏を狙うことも出来ていました。

それ以外の部分ではイングランドも独もロングボールを使うことはもちろんあったんですが、それへの対応が全く違っていた。イングランドはフィードで受けさせようとデフォーやルーニーに出しても寄せて競り合い、体を張ってボールを何とか自分のものにしようとしきれていなかった。それだけではなく、ボールの落下点に入り切れておらず、人がそこにおらず上手く競り合えていないことも多くありました。ドイツにはそれが少なく、きちんと競り合い、落下点には選手が常にいました。

徐々に試合開始直の堅さから解放されたイングランドはパスを出して前に人数を溜めていけるようにはなっていった。走って追い越すしていく選手は見られませんでしたが、人数は多くなった。しかしサイドに攻撃の幅を持たせられているわけではなく、中央に多く入ってしまっているだけで、サイドに大きなスペースがあるのに利用をしていませんでした。サイドバックが本来利用すべきそのエリアに上がってくるタイミングが遅く、上がってきてもパスを出せずにスピードが殺されてしまう。ボールをサイドバックが受けられたり、自分で持ち上がったとしても、ドイツはサイドバックとアタッカーの二枚で、サイドをケアして前に行かせず、イングランドはサイドバック一枚で使おうとしているだけで、縦を塞がれてしまって利用できる要素は殆どありませんでした。なんとかジェラードが絡むことで左は可能性を残していましたが、それでも足が止まってからの展開で、抜いてくる選択をディフェンダーは考えなくて済むだけ対応を楽にさせていました。

ドイツはそれまでイングランドの守備がきっちりとロングボールの落下点に入れていないことを理解していたのか、キーパーのキックから一発でクローゼが抜け出しゴールを決めてしまいました。少なくともクローゼはディフェンダーが入るよりも早く落下点に動いていましたし、前には入れていた。キーパーのジェームズはアップソンが時間を稼いでいる間に飛び出して防ぐ選択肢はあったはずなんですが、飛び出して防ごうとはしませんでした。ただ、それよりも問題なのは、あのボールに対して守備が対応を全く出来ていなかったことでしょう。

イングランドは得点を取られてからもルーニーが受けて自分でドリブルをしていく以外に上がっていく選手は見られず、ボールを追い越していく選手もいない。足が止まったように足下でボールを受けようとするばかりで中盤が上がってフォワードを助けていくことも出来ておらず、繋いで裏を狙うのではなく、ドイツの選手の前からミドルシュートを打つばかりで崩すための攻めを見られませんでした。ボールを持たされている印象は強くあり、それぞれがドイツのディフェンダーの前で立って待っているだけで変化が見えませんでした。

そうやってイングランドが攻めあぐねている間にドイツが追加点を上げて試合を優位に運べるスコアにしていっていました。エジルが受けて注意を引きつけて、クローゼがサイドでボールを受けることで視線も動かす。その間にミュラーが飛び出していく。そのチャンスの前にもクローゼが受けるために戻ったり止まっているときには、きっちりと別の選手が裏を狙うことでイングランドのセンターバックに狙いを絞らせていませんでしたし、このチャンスの時も横と縦の変化だけではなく、足を止める選手と追い越す選手、そのそれぞれの違いがイングランドに対応を難しくさせて裏を取る手助けをした。その後のパスとポドルスキのコントロールは完璧ではありませんでしたが、そこまでの形で勝負があったようなものでした。

二点目を入れられたことで吹っ切れたのかイングランはようやくチャンスを作れるようになっていました。サイドアタッカーのミルナーが縦の突破をして一対一で勝負を仕掛け、勝ったことでようやくクロスのコースが出来た。センターバックとキーパーとの間にクロスを入れられたのも勝負をしかけられたからで、これまでは足を止めてその形が作れていませんでした。ただドイツは二度連続は許さず、二度目の形はクロスを足で防いで上げさせませんでした。結果的にはそれをゆるさずにコーナーキックにしたことが失点に繋がってしまいました。一度戻された後にラインを押し上げきれず、キーパーとディフェンダーの間を使われてしまって失点をした。
この得点はイングランドに瞬間的な勢いを与えていましたし、ドイツには動揺を生みだしてしまっていました。直後には恐らく何度も語られることになるはずの誤審によって助けられるシュートを打たれてしまった。
ボールを追い越す動きも縦への動きもなく停滞していたイングランドが、相手の裏を使うパスを出すようになり、それに対して走っていくようになった。前への勢いがドイツのラインを苦しめていましたし、センターバックにスピードがないためにラインが裏への対応に苦労していて、対応を楽にするために押し下げて裏を警戒しながら待ち構えるようになっていた。それが手前でボールの利用をさせやすくして待っていましたし、より深い位置で難しい処理をしなければならなくしていました。

イングランドはその時間から後半も継続してサイドバックが攻撃に大幅にオーバーラップをしていけるようになり、構築の際にサイドの選択肢を得られていましたし、ドイツのサイドバックの裏をも使えるようになっていて、フォワードへのフィードの落としをそこへ出しても待ち合うほどでした。
前への勢いが守備にも現れて、フィードのこぼれ球に対してもプレッシャーを強く与えて単純には繋がせないようにし始め、クリアもろくに前へ送らせなかった。パスを出した選手がそのまま裏へ走る姿も見られるようになりましたし、ボールを追い越していく動きも当たり前のようになっていました。ドイツのケディラ、シュバインシュタイガーの背後でボールを受けられるようになり、そこからならシュートも狙え、裏へ走る選手がいればそれも使える。今はその選手がいますし、ドイツはそれにも注意を払わなければならず、ドリブルでの仕掛けもそれに加えられる。

イングランドが勝負を仕掛けるべきタイミングはここだったはずでした。しかしカペッロ監督は動きのよくなっていていたミルナーとジョー・コールを交代させて、右のワイドな位置を削ってしまい、サイドアタッカーによってサイドを多く利用することでドイツをより慌てさせる選択をしませんでした。

もしそれが出来ていたとしても、ドイツの圧倒的な勢いのカウンターを防ぐことは難しかったでしょう。セットプレイを防いだ直後であるためにイングランドは陣形を整えていられませんでしたし、人数も多くなかった。戻ってくる選手にしてもドイツの駆け上がっていく選手に追いつけず、後半の一点目は防げなかった。二点目は残した選手がバリーで、エジルにスピードで置いて行かれてしまい、失点になった。

そうやって三点差にされても攻撃の枚数を増やそうとしないカペッロ監督にはがっかりさせられました。残りの時間はドイツが自分たちのペースを保ち、ボールを動かし人も動く。イングランドの直線的でかわしやすい守備をかいくぐり続けて、キープをしてボールを回す。いくつかのチャンスをイングランドは得ましたが、ドイツが試合を終わらせにはいった流れを断ち切ることは出来ませんでした。

2010 FIFA World Cup Round of 16 アメリカ対ガーナ

2010 年 6 月 27 日 日曜日

■USA 1 – 2 Ghana(ex win)
アメリカは縦のスピードを速くして、ボールを奪ってからフォワードを走らせボールを追い越して上手く勢いを保ったまま攻撃をして得点を狙おうとして試合へ入っていました。ガーナがボールを上手くコントロールできずにばたついている印象がありましたし、それを見逃さずプレッシャーを与えることでより安定して受けられないようにし、前からのプレスによって相手陣内でボールを奪い展開をしようとしているようでもありました。

ただミスからの失点が早かったことが全てのプランを壊してしまいました。縦へと急ぐものの、攻め込まれればそういったこともできず、中盤で構築をしなければならない時間が出てくる。ガーナはそれに狙いを定めてプレスをしていて、アメリカに後方には時間を与えて構築をさせずにチェックからミスを誘ってカウンターを仕掛けようとしていた。アメリカとの狙いは似ていましたが、アメリカは中盤の後方、一番リスクのあるプレイをしては行けない場所で、パスで相手を動かそうとせずチェックをかわそうとしてしまった。そこを奪われてしまって、センターバックは抜かれるわけにはいかずドリブルと共にリトリートするしか無く、コースも塞げずシュートを許し、先制点を許してしまった。

アメリカはまだプランの継続を目指して相手陣内でボールを奪いに行ってショートカウンターを狙っていましたがボールを奪うのが難しくなっていっていました。ガーナがそれまでしていたようにボールの扱いを雑にはしなくなり奪うポイントを見つけられなくなった。囲い込んでも上手くかわされてしまい、パスを出される。アメリカはゾーンを構築してラインを押し上げて、その前に中盤もフラットにしてラインにする。アメリカは相手を掴まえる積極的な守備ではなく、相手をゾーンに入った相手を掴まえようとしていましたが、ガーナはそのラインや選手の隙間に入りボールを受け、アメリカの三選手の注意を引きつけてプレスをさせて、動いた後に出来るスペースへとまた別の選手が入る。連続して隙間に入られることで、緩やかに囲めてはいるものの寄せることは誰一人できずにボールを離されてしまう。

その代わりにアメリカがボールを奪われる回数が増えていき、ガーナのペースへと嵌っていっていました。アメリカは繋ごうとしているものの、高いラインを保っているガーナの裏を使えず手前で回してしまう。その間に高い運動量のチェックを受けて、アメリカはパスで逃げようとせずに個人でかわそうとしてカウンターを受けていました。先制点もそうでしたし、その後もその形でピンチを作られたのは確かでした。低い位置でのキープしかできないアメリカはボールを追い越していく動きが出来ず、ガーナのラインを下げさせてプレスを機能させないようにしたいところでしたが、上手く中に人数を入れられ、前を防がれてドリブルもできない。いいように攻撃を受けることから引いて守らなければならなず攻撃の人数を減らしてしまわなければなりませんでしたし、下がった影響でより中盤で繋いで前へ運べていたものが運べなくなり、長いボールや裏へ走る一人の選手の勢いに頼らなければならなくなった。

ガーナは縦パスを入れて戻して連続して入れていくことで後方の選手が動き直してスペースにはいって受ける余裕を持ったせていましたが、アメリカは縦パスを裏へ出すだけで前で受けるようにはしていなかった。ガーナとしては裏への対応一本に絞れますし、アメリカはその跳ね返したボールがミスになるのを待つことぐらいしかなかった。相手の前で収められても足が止まった状態からの仕掛けでは脅威を与えられず、裏への動きをっけいかいさせるだけでした。

後半になるとガーナの運動量と守備の意識が強くなったことで、アメリカはサイドを深く使っていけるようになり、得点の可能性は出来ていました。ガーナのプレスが緩く、ボランチやディフェンスラインに寄せられることはなくなり、安定してボールを前に運べるようになっていた。ガーナは手前で待ち構えているだけで、中盤はある程度の高さを保っているのに動かず、センターバックとの距離を広げているだけでした。そのため、ガーナの中盤を越すとディフェンスラインの前にアメリカは入れるようになり、そこからサイドへボールを出して幅を持たせることも出来るようになった。それまで裏を狙うボールが縦に角度のないものだったのが、サイドを使ってから角度や変化をつけたクロスやフィードを狙えるようになり、少しだけ脅威を与えるようになりました。
自由にフィードを出せることで精度の高いも逃せるようになり、裏だけではなくディフェンダーと競らせるものも出せるようになった。裏一辺倒だった攻撃にバリエーションが増え、人数が入ったことと持ち上がれることで相手の手前で受けるプレイを選択することが出来るようになった。そのことでガーナのディフェンダーはそれまで裏だけをケアしていればよかったのが、前後の二つを対応しなければならなくなり、裏へのパスを通しやすい環境にした。そういう環境がデンプシーの突破を許してPKを与えることになったようです。

ガーナは得点をした場面もそれ以外のチャンスの多くも、アメリカへのプレッシングからミスを誘い、カウンターを仕掛けて得たものばかりでしたから、それが出来なくなって相手を焦らすことが出来なくなると、展開もあまり出来ていませんでした。
得点を取られて同点にされてからプレスを復活させて、何とかサイドバックやボランチ、センターバックにも向かっていくようになっていましたが、得点とその前の自由な時間を得たことで、前半はミスをしていたプレスに対しても落ち着いてプレイをすることが出来るようになり、前半のような慌て方とミスはありませんでした。

ガーナは攻撃もダイレクトで出せないほどパスを出してからの運動量が無くなっていて、アメリカは間に入られ連続したこぅげきを受けず崩される心配を減らせましたし、メンバーを代えても守備のプレスを効果的に再開することは難しく、運動量を上げられないまま攻撃では連動できずにサポートが遠く、ボールを受けた後に探さなければパスコースを見つけることが出来ない状態にまでなっていました。アメリカは中盤がガーナの前への動きを受け止めていられるようになったことから、センターバックは対応に追われなくなり、安定をしていました。

延長戦に突入したわけですが、アメリカにとっては不運にも失点をしてしまった。フィードが跳ね返され、それをガーナが大きく蹴り出し、単純な競争の中で競り勝ったギャンが決め、とても単純な一人の力に沈められてしまいました。

アメリカは前へ、ペナルティエリア内にボールを置く入れることで何とかチャンスを見いだそうとしていましたが、中を固められてしまえばこじ開けることは難しく、競り勝つこともなかなか出来なかった。跳ね返され、満足にシュートを打てず、スペースを消したガーナの中で何も出来ませんでした。入れ続けることでしか変化がつけられず、繋いで変化をつけようとするとミスになって奪われてしまう。ここまで粘り強く戦い続けたアメリカにもここをこじ開ける策はありませんでした。