■FC Bayern Munchen 0 – 2 Inter
バイエルン・ミュンヘンは立ち上がりから試合の流れを自ら手放してしまったようでした。浮き足立っているかのように落ち着きが無く、足下のボールコントロールをミスしてしまい、最初にスローインやフリーキックを与えてしまった。それがインテルに落ち着きを与えてしまい、安定した守備とカウンターによってゲームを組み立てさせるきっかけになっていたかのようでした。
バイエルンも最初の攻撃をしのいだ以降は精神的な落ち着きを取り戻していったように見え、ボールをキープして左右に動かすことも可能になっていっていました。ただボールをキープされることはインテルにとって重要なことではなく、カウンターのきっかけを作る上で好都合でした。バルサと対戦したときもそうでしたが、サイドバックがプレッシングのために前に出てくる、あるいはオーバーラップをしてウイングを助けに出てくる、そのスペースを利用してカウンターの一歩目を作る。主にディエゴ・ミリートがその役割を担い、この試合ではラームのポジションを狙っていく。最初のカウンターこそヴァン・ブイテンが上がっていたためにデミケリスがカバーに入り防ぎましたが、本来はここへヴァン・ブイテンがケアに入るようになっていて、ディエゴ・ミリートとのスピードのミスマッチ、あるいは足下のテクニックに対応する細やかな守備ができないミスマッチを利用していました。
デミケリスやヴァン・ブイテンもディエゴ・ミリートへボールを収めさせないように後方から圧力をかけて掴まえておいたり、自分たちの手前でプレイさせてしまおうとしている向きもありましたが、それでもそれに対応するのがセンターバックだけでしなければならない。中盤と挟めていないためにボールを収められてから後手の対応を踏むことが多く、またインテルの出されるパスの距離が長いために中盤が前へ出ても抑えきれない。スナイデルやパンデフと連携した動きに前へ吊り出されて裏を狙われたり、開始数分から常にインテルの術中に嵌ってしまっていました。
守備でもインテルの思惑に乗っかってしまっており、引いて守るラインの手前でボールを動かされるはめになった。非常に適切な距離で中盤とディフェンスラインの間隔を設定しているために、隙間に入り込んで前を向くことが出来ず、ディフェンスラインの裏側もキーパーの守備範囲の中にあることが多い。サイドから中へ切れ込もうとしても守備的な中盤の選手がスイッチをしながら最後までついていける環境にある。ロッベンの対策をしながらも、バイエルンが回すパスの縦へ収めるボールを出させず、延々と横に動かすように仕向けていく。
特にロッベンには厳しいマークをつけて、まずは縦を利用させないようにした。最初に縦への突破を狙われてスピードにやられてしまった。それを教訓として縦を切ること、厳しく当たって振り向かせないようにしておくことを徹底しているようでした。そうやって単独での縦の突破の意識を削っていくことで、速攻から中のクロスを選択する可能性を減らし、インテルが中に人数を溜めておく時間を得ていく。
バイエルンは本来であれば縦パスやポジションを取り直して展開をするはずの中盤、シュバインシュタイガーとファン・ボメルのところで全く前への展開をさせてもらえませんでした。ボールを受ける回数はそれなりに得られていたものの、ボールを受ける際には後ろ向きで受ける回数が多く前を向くにはマークがあり、ボールロストよりも安全にバックパスを選択してしまっていた。サイドバックの二人に出してみたり、センターバックへ戻してみたり、そこから受け直すことをしようとしても横や後方からボールが戻ってくるだけで前を向くためのパスが出てこない。そのどちらのポジションの選手にしてもバイエルンには展開力を持つ選手はいませんし、中盤を飛ばしてフォワードまでボールを運んだり逆サイドへ一足飛びに出せるだけの力もない。ファン・ハールがやりたがっているサッカーと選手の不一致を利用されているようで、流れを生み出せないまま緩やかなプレッシャーにすら抵抗できずにボールをキーパーにまで戻す回数を多くしてしまっていました。
そういった中でロッベンはボールを収めることは出来ていたんですが、タッチライン際にまで開かなければマークを引き剥がしておくことは難しかった。それでも中でボールを収められないことからそこに頼るしか無く、ロッベンへ多くパスを出していかなければなりませんでした。ロッベンが縦の動きから裏を狙っていても、収めてもらわなければ困る、という意識から足下へのパスが多くなり、スピードに乗れずパスで展開しなければならない。サイドから中への展開をするために横パスであり、カットされやすく、縦の選択を得られない。インテルはそこまで散々縦のコースを塞いでいたものから、中へ切れ込むドリブルとパスを警戒するために横のコースを切るようになり、よりサイドへ押し出してパスの起点とすら利用しづらくしていっていました。
インテルが守備で主導権を握る中、先制点が生まれたわけですが、そのための条件はいくつかその中に含まれていました。ジュリオ・セザールからのロングフィードをディエゴ・ミリートがハイボールの競り合いをヴァン・ブイテンとせずにデミケリスとした。相手を抑えきるよりもカバーに能力を発揮するデミケリスに引っ付き競り合い、マークが得意なヴァン・ブイテンにカバーをさせる。その状況を作り、ボールを落としてスナイデルに渡すことでヴァン・ブイテンにチェックとカバーの二つの可能性を強く意識させて動かせなかった。それが簡単に裏へ抜けさせる要因となり、もう一つの弱点であるセンターバックのスピードの無さを利用して裏へ抜け出しての得点になっていました。
その後もバイエルンはインテルに主導権を握られて横パスを繰り返すことが多く、縦パスを入れられる回数は非常に少なく、逆サイドを意識したパスも多く出せていなかった。ロッベンがチームのためにパスを出すのではなく、縦の動きをするように意識を戻せてきていましたが、それにはラームが右のスペースをオーバーラップしてサポートすることが必須条件で、それがマークのズレと飛び込ませず寄せられない環境を作り、縦のスピードを使えるようにしていました。それが上手くいくようになれば、縦の意識を持った相手にそれをフェイクとして横に動いてシュートも狙えるようになっていましたが、どれも苦し紛れの要素が強く相手を引き剥がしたものではなく、他の選手も同じくミートすらしないシュートを打たされているばかりでした。
そしてラームが上がってしまえばそこにスペースが出来、またディエゴ・ミリートが引き出すきっかけを与えてしまう。ブットが試合を引き締めてくれていなければ、もっと多くの失点をしていたかもしれませんし、早い段階で試合が決まっていたかもしれません。
ロッベンはいくつかの時間帯でポジションを動かしていたものの基本的にはマークが緩くボールが受けられる右へ定着していました。ただラームが上がってサポートこそしてくれるものの、常にその環境を作るにはリスクが高く、単独で勝負をしなければならない場面も少なからずありました。しかしながら右から動くのは二枚で中のコースを抑え込まれる要素を自分で作ってしまうようなもので、ドリブルのコースもパスのコースも得られなかった。バックパスをしてラームとの連携を図っている間にインテルがラインをコントロールして陣形を整えて縦パスのコースを消してしまう。
後半はバックパスで戻された後の展開として左右に動かして逆サイドまで中盤を経由して展開するようになっていましたが、位置が低くインテルの守備のゾーンを動かしてしまえず、フォワードにチェイシングから疲労を増やしていけるかもしれない、という程度。守備陣形に乱れを生むようなものではなく縦を利用できるコースも作れていない。この試合で唯一縦を利用できていたのはアルティントップぐらいでしょうか。マイコンの対応も慎重で飛び込まなかっただけに半身だけでも先に進むことが出来てクロスやシュートを選択できていた。しかし反応する選手を中に入れられておらず、バイエルンのチャンスにするには難しい状態でした。
そのアルティントップを下げてしまったことでより一層縦の利用が難しくはなりましたが、クローゼを投入したことでサイドバックが深くまで入り込まなくとも、アーリークロスを選択できるようになり、縦パスを多く入れなければチャンスにならなかった環境からの脱却を図れるようになっていました。早めに入れられるクロスであってもクローゼの動き出しとポイントを絞った動きに合わせることが出来れば相手を脅かすことは出来ていた。インテルもそれに脅威を感じなければならず、ルシオとサムエルの屈強な二人が待ち構えていたとしても戻りながらの対応は難しく、可能性は高まっていました。そのアーリークロスの選択が、ロッベンがドリブルで仕掛けるしかなかった環境でも選択肢となり、キヴはドリブルを警戒してロッベンにスペースを与えてクロスのタイミングでのシュートを許してくれた。そのまま継続できていれば、クロスからの得点が見られていたのかもしれませんが、すぐに交代によってサネッティが左サイドバックに入ったことでそれも期待できなくなってしまってしまいました。
それでもまだチャンスをそこから作る可能性はあったんですが、作れたチャンスの直後にカウンターを受けてしまい、ディエゴ・ミリートとエトーの二人しかいない中で得点を許してしまった。カウンターとはいえ、上がるスピードを上げていかなかったインテルに合わせてバイエルンは戻るスピードを落としてしまっていたのかもしれません。サイドバックや中盤のケアが遅く、ヴァン・ブイテンの中途半端な対応もデミケリスのどっちつかずなポジションを生むきっかけになり、あっさりと抜き去られた後のサポートは出来なかった。
この失点の後にバイエルンはマリオ・ゴメスを投入して高さをさらに追加したんですが、チームのスタイルとしてそれを利用していこうと変化を促すことは出来ていませんでした。二点差になったことから大事にボールを扱って一点を確実に取りたい意識が強く、クロスやパスを通すことよりも失わないことの方が優先されて判断がチャンスになっても一つ遅れていた。インテルがボールを奪うチャンスを多く得られる手助けをして、クロスを上げる距離が近くなってしまい、相手の体に当ててしまう回数の増加にも繋がった。そしてバイエルンも高いボールで空中戦を仕掛ければいいものを、低いクロスを出してしまい体に当ててしまったり、グラウンダーのパスで繋ごうとしてしまう。せっかくアーリークロスを狙える環境が出来上がり、それを利用できる環境を整えつつあったのに、無駄に左右に動かして崩れない守備を崩そうとしてみたり、無理矢理縦を利用しようとしてカットされる。深くまで入ってからクロスを狙いすぎて間合いを詰められる。ヴァン・ブイテンが前に残っている時間でもそれを出来ず、ファーサイドにすらボールを出せないのではチャンスを作りようがありませんでした。
もし後半開始早々あった大きなチャンスをバイエルンが決めていれば試合の行方は解らなくなっていたかもしれませんが、ブットが試合を引き締めているようにインテルのジュリオ・セザールも好セーブから試合を引き締めていましたし、インテルの守備の集中力と全体の完成度には大きな差がありましたから、同点に持ち込めていてもその後に差が出ていたかもしれませんね。