■Real Madrid 6 – 0 Zaragoza
見るに堪えない試合でした。レアル・マドリーのファンであれば十分楽しめますし、ゴールを見たい人にとっても十二分に価値のあるものでしたけど、戦術的な意味合いや、今後の試合に及ぼす影響からすると全く価値のないものだと自分は思っています。
サラゴサとマドリーの両者が形を構築する前にスコアが動き、マドリーが先制をしましたが、それがこの試合の行方を決定付けるものではありませんでした。得点自体はアジャラのスピード面の衰えが目立ち、最初のポジションでも掴まえられておらず、体も寄せられなかった部分も影響をして、イグアインがあっさりと抜け出して決めてしまった。
全体の大まかな形としては、マドリーの中盤底には出場停止で出られないシャビ・アロンソではなく、マアマドゥ・ディアラがいましたが、ここからの組み立てのパスが弱くスピードがないものでした。そのため中央でのパスを連続して行うことが出来ず、サイドに振り分けていくこともできていない。ファン・デル・ファールトがボールを引き出すことでそれらの代わりをしようとする動きが見られましたが、一つを経由することでテンポが落ちてしまって連動性を産み出すまでには行かない。
そこでサイドへ交互に流れてくるクリスチアーノ・ロナウドやイグアインがボールをまず引き出して、サイドバックやマルセロと連動をしてサイドから切り崩していく形を取っていました。中央に起点を求められなければ、攻撃のスタート位置をサイドにしてしまい、そのまま中央とサイドの連携から抜け出していくのではなく、サイドで構築して、寄せられてもそのまま縦へ追い越していく選手を利用して、相手サイドバックの裏を突く。サイドアタッカーが豊富なマドリーにとって一つの形ですね。
そこまではマドリーとしてもよくある形ですし、そこまで連続して崩されるはずではなかったのに、問題はサラゴサの対応でした。サイドを利用される以前からディフェンスラインが広がってしまい、選手の間隔ができてしまっていた。一人一人の担当するエリアがあまりにも広く、衰えているアジャラにしてもパボンにしてもスピードはなく、担当しなければならないエリアは、彼らのテリトリーの外になるエリアが多分に含まれていた。言い換えれば”すかすか”になった間を利用されてしまっていたわけで、本来、ディフェンスラインをワイドに広げて個々の対応する範囲を広げてしまうのであれば、中盤の選手をディフェンスラインへ吸収させたり、サイドのケアに向かわせるなどして、隙間を使われないように工夫しなければならなかった。
それがサラゴサはドリブルでスピードに乗るクリスチアーノ・ロナウドにさえ対応するのは一人だけ。複数で囲い込んでコースを塞ぐこともせず、内側のコース消して、対面する選手が縦のコースを切ればいい、という選択肢の限定もできていない。そうなれば攻撃側が圧倒的な主導権を持つのは確かで、何でも出来てしまう。広い隙間に入り込まれてしまえばファウルで止めることすら適わない。もちろん、ボールを受ける前に後ろからプレッシャーを与えて振り向かせない、という選択肢も彼らの中には存在しなかった。
カウンターをされたときも、サラゴサは2トップにセンターバックとサイドバックでマークに付き、一人がスイーパーとして存在するセオリー通りのプレイをしていましたが、あまりにもスピードに差がありすぎて、ワイドに開かれてしまい、スイーパーのケアするエリアが広大。それで失点こそしませんでしたが、守備戦術が破綻をしているのは一失点した段階で十分に解ったはずでした。
ドリブルやスピードで危険な場面を作られることが多く、怖がって下がってしまい、またスピードに乗せてしまってはリトリートを繰り返すばかり。リトリートによって人数を揃えているつもりのようでしたが、ディフェンスラインと中盤との位置は、流れを問わずに開き気味でバイタルエリアを用意してしまっていました。そのため中央が空いていて、アーリークロスを入れられてしまえば、それを跳ね返したとしてもこぼれ球を拾えず、後方から上がってくる選手も掴まえられない。サラゴサは監督が替わって新しいスタイルに変えようとするあまり、目の前の相手と戦うことを忘れて監督の指示を準する姿勢を示すばかりで試合の最中に試合をせず、ポジショニングの練習をしているかのように位置取りとオフサイドラインを気にしてばかりいるようでしたね。
マドリーの守りも決してよくはなく、裏へ抜ける動きを気にしすぎていて簡単に下がってしまって厚みのない守備をしていました。それはいつものことでもありますし、あれだけのリードがあれば仕方のないことかもしれません。それでもサラゴサがまともに裏を狙う意識を持っていれば一矢報いるところまで持っていけたかもしれませんが、彼らがしようとしたのはサイドからクロスを入れるばかり。縦へのカウンターで裏へ抜けられる場面を作ったとしてもサイドへボールを流すことを優先して、そこからディフェンダーとキーパーの間にクロスを入れる。鋭いボールを入れることは出来ていましたが、相手の前でボールを回してしまうか、裏へボールを出すのはサイドからと決まっていれば得点機を向かえることは出来ませんね。
四点を決められてからようやくボールや選手に向かう意識が出てきて、高い位置からプレッシャーがかかるようになり、後ろ向きな部分が一時的に消えましたが、それは苛立ちを含めたものでファウルやカードを生むだけで試合自体を動かす効果はありませんでした。一時的に攻撃への形を作る助けになりましたが、攻撃方法が変わらない以上得点できるはずはなく。
その勢いも後半に入ると同時に失ってしまい、全く厚みのない守備をし始めて、向かっていく意識の少ないものに戻ってしまった。クロスも簡単に上げさせてしまい、これ以上失点せずに終わろうとしているかのようにカウンターのための人数も全く残していませんでしたし、結局最後まで彼らはフットボールをすることなく終わりましたね。選手の誰か、という問題ではなく、クラブ全体としての問題のようです。改善できる問題ならいいんですけどね。
見るべき部分は多くあって、イグアインのゴラッソは凄く価値のあるゴールでした。多くのゴールはいいものでした。サラゴサが非常に悪かったことを含めてもゴールの綺麗さはあまり変わりません。