FIFAクラブワールドカップ エストゥディアンテス対バルセロナ

■Estudiantes 1 – 2 FC Barcelona
バルサの入り方はいつも通りに近く、センターバックをワイドに開かせて、サイドバックを押し上げて後方からサイドの主導権を握ろうとするものでした。多くのクラブがそうするように、シャビをマークしてくるかと思われたんですが、それはしてこずに高い位置にさえ進出しなければ安定してボールを扱わせてもらえていました。

守備の入り方も普段と同じ方法をとってフォアチェックから相手センターバックにまでプレッシャーを与えていましたが効果は薄いものでした。繋いで構築していくパスを前へ預けさせないだけの効果はありましたが、精神的なゆとりを持ってディフェンスラインでボールを回されている。
その上、前の試合では下がり気味に位置することもあったベロンが、アンカーに入っているセルヒオ・ブスケツの横のポジションを取ってフォアチェックのかからない位置にいることも重要なポイントでした。そのため、センターバックへプレッシャーを与えてもすぐ近くのベロンへ預ける選択肢はなく、フィードからベロンが一つクッションを置いて受け取る形が多くありました。そのためバルサのフォアチェックは無駄に終わることが多く、フィードからベロンに渡るためにバルサのディフェンスラインと近い距離で裏を狙うパスを出されてしまい、危険を感じることもあった。直接ベロンへボールが飛んでくれば、マンマーク気味に抑えに入るセルヒオ・ブスケツが潰せるので問題ないんですが、一つクッションが入ると辛かった。

クッションを入れるためにバルサのセンターバックの前で常に競り合って落とすポストプレイを狙ってくれていれば対応は楽だったんですが、ディフェンスラインにフォワードが入り込んでフィードから直接に裏側を何度も狙われた。前の試合やここの所の試合で対応をミスした弱い部分を突いてこようとする意図が見えていました。
高い位置で囲い込むことが出来ず、ボールを上手く奪えず、カウンターをバルサができないでいる。無理をして自分たちのスタイルを貫いたり、繋ぐことに徹しようとする気配がなく、フィードで構築を省略されてしまうために、バルサがボールを奪う位置が低くなり、攻撃の開始位置も低くなる。低い位置からサイドバックを使う意図は十分に残っていたんですが、それでも中央を素早く固めてしまうエストゥディアンテスの守備の前に効果的ではなく、中の人数が足りないためにマイナスのボールを出そうとしたり切り返すことが多く、それを読まれてカットされてしまうことも多かった。
ならばとシャビが低い位置で安定して受けられている以上、そこからサイドバックへとサイドを変えるパスを何度か出してみても陣形が崩れない。それだけではなく、バルサが低い位置でボールを持っているときには縦のコースを明確に切ってドリブルでタッチライン際を駆け上がられないだけの方法をとり、深く入られてしまえば中への切り返しと中央とサイドへ繰り返してボールを動かされて陣形を崩されるのを防ぐための方法をエストゥディアンテスは取ってくる。
ポジションと守り方の修正が早く、バルサの選手たちがサポートに移る前に寄せられるために、いつものような少ないタッチでボールを回せない。もちろんボールが走ってくれないのもありますが、全体をコンパクトに保てていないことも影響をしていました。

徐々に裏を狙い続けられることが影響をして、後方へ出されるロングボールへ対処するためセンターバック二人が下がってしまい、ディフェンスラインの位置を高く保てなくなる。そうなるとサイドのエリアを使わせないためにサイドバックも同時にポジションを下げざるを得なくなり、攻撃時に高いポジションを保ち続けるのが困難になり、相手サイドバックの外側にまで進出できなくなった。シャビがパスを出して上がりを促しても前へ進出しようとしなかったのも、そこら辺が頭にあったためかもしれません。センターバックが開く回数も減りましたし、開いたとしてもサイドバックが上がって行かなくもなっていました。

ディフェンスラインを下げてしまった影響から、前のプレッシングは元々機能していなかったとしても、後方で何故かボールを囲い込んで奪えるようになってしまった。つまりはバルサの選手たちが低い位置に攻撃時から人数が残ってしまっているということで、フォワードのイブラヒモビッチとの関係が開いてしまい、アンリとメッシに明確なポジションを取らせてあげられなくなっていましたね。セルヒオ・ブスケツとディフェンスラインの間が開き、ベロンに利用されていた場面も、以前にあったようなブスケツが後方のスペースを意識していない影響ではなく、必要以上にリトリートしてしまったセンターバックとの関係が悪かっただけ。何度かそれを繰り返してしまったため、局面では、ある程度低い位置ででも囲い込めていたものが、それすらできなくなり個人同士の勝負になる回数も増えてしまいました。中盤で一つかわされてしまえば、広大なスペースがあるようになり、厚みのない守備がいくつか並んで存在しているだけになり、相手の脅威にはならなっていませんでした。そしてアンカーの横側にポジションを取られ、裏へ出されるのが怖いために引いて守る。サイドのエリアを使ってくれと言わんばかりのプレイで、クロスを上げられるときにオフサイドを取りに行けなくなる。プレスにいけていないためセンターバックが踏みとどまることが出来ないんですが、それを作り出したのはセンターバック自身。結局それによってやられてしまいましたね。プジョルとアビダルの間に入られていたとはいえ、それでも踏みとどまることが出来るような守備をしていれば、あそこは簡単にオフサイドを取れていたはずですから。

失点してからようやく左サイドはある程度ワイドに使えるようになりました。それでもバルサの選手たちは、相手が何処に出もいると錯覚しているんじゃないかと思うほどに、余裕がない状態でプレイしてましたね。実際にエストゥディアンテスのプレスは早いんですが、それはともかくワイドに使えるようになったのはアンリが高い位置でボールを持って縦へ、と向かえるようになってきた影響もありますし、その少し前からケイタが開いてワイドに使う意識を見せていたのもあるでしょう。中へ切り返すのを読まれてそのコースを切られてカットされていましたから、単純にクロスを上げるようにしはじめて、ようやくある程度の形になりましたね。もちろん対面するクレメンテ・ロドリゲスが左利きで、逆足の対応を迫られる縦の突破が効果的だったのもありますが。

後半になって右側にペドロを投入したことでメッシが中に入ってしまい、ダニエウ・アウベスは距離が遠く使えていなかった右サイドをワイドに使えるように交代で対応したのはよかったのかもしれません。縦への突破力であればジェフレンの方が上手く、スピードもありますから彼でもよかったんですが、ペドロの投入の効果は十分に出ていて、下がり気味だった部分と、ワイドに使い始めたことで、連続してディフェンスラインにギャップを作ってチャンスを得られた。まだ陣形が整っておらず、縦のコースを切ろうとしてくるところへ挑めていたのが大きかったのかもしれません。本来はそこで得点を取っておきたかったんですが、すぐに修正されてラインを整える前のギャップはなくなってしまった。

ただ、エストゥディアンテスが意図したかそうでなかいかは解りませんが、守備に重点を置くようになりフィードの回数が減って上がりが遅くなってきていた。バルサもハーフタイムの修正から勇気を持ってディフェンスラインをある程度上げられるようになっていましたし、守勢に回ったときにリトリートしなくなっていました。フォワード一枚しか残っていなければ、ピケとプジョルだけで縦関係を作って対応も出来るようになっていましたし、ペースをバルサが握り始めているのは明確でした。
体勢が決定的になったのは60分過ぎた頃からでしょうか。縦の選択を増やしていたアンリの所をクレメンテ・ロドリゲス一枚からサポートを含めてを二枚で抑えるようになった部分ですね。引いて固める人数も増えましたし位置も下がった。そのままでは押し切られるのが解っているらしく、修正するために前に出てきてチェックをして変化をもたらそうとしてはいましたが、後方に下がった選手たちの足が止まり始めていました。クロスにはそれで対処できていましたが、ドリブルや細かいパス、後方から上がれるようになっていたダニエウ・アウベスなどを掴まえるのは難しく、バルサがずっと出来ずに苦しんでいたサイドバックを含めてたワイドな攻撃をさせてもらえるようになった。ダニエウ・アウベスが右サイドを深く使い、サイドバックの外側を利用して相手を外へ釣り出す。その形が出来るようになればペドロがより活きる中央でプレイしやすくなり、チャンスも作れた。

相手選手の守備間隔を広げ、その隙間をついて行けるようになって、ようやくバルサが試合を支配し始めたんですが、後方からの組み立ての際に安易なミスが多くリズムを掴み切れていなかった。ファウルを取らない審判にファウルを要求しても駄目な訳で、その辺の切り替えの出来ないセルヒオ・ブスケツが足を引っ張っていました。トゥーレ・ヤヤが入り、その部分でのミスが減り、カウンターの一歩目を抑えてくれる用になったおかげで、よりバルサのペースに持ち込むことが出来るようになりましたし、ジェフレン投入後のパワープレイの布石でもありましたね。
再三にわたって縦の突破とクロスをジェフレンが選択してくれたおかげで、あの得点があったのかもしれません。何よりも、ゴールに愛されているペドロがあのポジションにいたからこそではありますが。

延長ではもうエストゥディアンテスはどうにも守備に労力を使ってしまったため、上がっていく力が弱く、後方から前に送るパスにミスが目立ち、安定して送れなくなっていました。バルサも似たようなものですが、交代で入った選手たちが主に動き、プレッシングも機能していましたし、縦への突破力も一部で残したままでした。

エストゥディアンテスは時間を稼いで逃げ切ってPK戦の方を選択したような戦い方になっていましたが、足の止まり始めた相手にメッシのドリブルは効果的でメッシがボールを持つと相手の視線が集まり、足が止まる。そこの裏をイブラヒモビッチが狙ってチャンスを作ったり、ボールを散らしたり、幾つか試合をコントロールしていました。最後の最後に仕事をしたのもメッシでしたね。ボールを触った後、前へ飛び出していくメッシを掴まえるには、後方で固めている選手たちは足が止まっている以上難しく、中盤のマーカーがそのまま対応しなければならないんですが、ベロンの状態ではそれを期待できなかった。

コメント / トラックバック 1 件

  1. winchester より:

    はじめまして。winchesterと申します。
    サイトいつもチェックしてます。非常に事細かに書かれていて面白くていつも楽しみにしてます。
    いつもはwowowでリーガ中心に見てます。ちなみに2002年からサッカーを本格的に見始め、そのときからデポルティビスタです。

    さて今回の決勝ですが、エストゥディアンテスが前半、飛ばしに飛ばしてプレスをかけてきましたね。バルサが自陣内でボールをキープするときは4、5人の選手でプレスをかけにいき、エストゥディアンテス陣内に侵入されれば、残っている選手でディレイアクションをさせ、その間にプレスをかけていた4,5人の選手達が猛烈なスピードで戻り、挟み込む。ディフェンスラインは高く設定せず裏をケア。センターバックの前にかなりのスペースがあったと思うのですが、この戦術↑でうまく潰してましたね。バルサに対する戦術としてはまた新しいものだったのではないでしょうか?
    バルサもここ一ヶ月間、一週間に2度のペースで試合をこなしてきていますから、好調時の運動量ではなかったように見えました。
    ただエストゥディアンテスがあのペースで90分持つかといえばまずありえないわけで、徐々に引いて守るようになって、後半バルサがペースを握る可能性は見えていました。
    ただペップが準決勝と同じく相手が疲れ初めてくる後半にメッシを投入して勝負するのかと思いきや、怪我明けで90分スタミナが持ちそうにない彼を先発させてきたのは意外でしたね。案の定メッシはかなり運動量が少なかったように見えました。
    エストゥディアンテスにとってはあの同点弾を決められるまではプランどおりで完璧でした。(体力の残っている前半の内に一点取り、後半引いて守る)
    ペドロのゴールはまさに奇跡!あのまま終わるのかと思っていましたから。あの時間帯にピケをずっと上がらせておいたのも大当たりしましたね。
    逆転ゴールはエストゥディアンテスのスタミナと試合の流れを考えれば容易に予想できましたが、それでもメッシが不調の中でも、伝説に残る胸ゴールを決めるあたりはさすがです。
    この試合はチャンピオンズリーグの準決勝チェルシー戦と同じく苦しみに苦しみぬきましたが、バルサの底が知れない精神的な強さが伺えました。

    まさしくこのチームは名実共に世界一でしょう。どの時代のどのサッカーチーム(代表含め)よりも強いのではないでしょうか?
    バルセロニスタではありませんが、こんな歴史的な試合とチームが見れることに感謝してます。