■Rubin Kazan 0 – 0 FC Barcelona
カンプ・ノウで負けてしまったがために極寒の地で勝たなければならなくなった。せめて引き分けていれば、と思わずにいられないくらいに厳しい条件になってしまいました。モスクワでさえ多くのクラブが苦しむ中、さらに東の極寒の地。確か試合開始前で気温-4度らしく、ピッチ脇には雪が残る状態でした。
好材料があるとすれば、ダニエウ・アウベスとアンリの復帰でしょうか。あのマルケスの不用意なプレイを見た直後であれば、プジョルがセンターバックへと戻れたのを喜ぶのは当たり前で、チグリンスキはこういったサッカーに慣れているでしょうから、それでもいいんですが、バルサのサッカーにおける守備対応の仕方はやはりこの人が最後尾にいなければ始まらないわけで、この試合通じてプジョルでよかったと思える場面が多々ありました。
バルサは復帰したダニエウ・アウベスとシャビ、メッシのところで多くパスを回し、ピケからのフィードも利用しつつ、コントロールし始めていました。ショートパスで繋ぐスタイルを低い位置で行っていても、人へのマークがしっかりと付き、抑えられていて、明確に利用するのは難しい状態。中長距離を狙うには序盤はまだ体が温まっていないようで動きが硬く、一足飛びに展開できるほどの精度がありませんでした。ドリブルやボールコントロールにしても足が動かずミスも多いのも事実で、ペースを殆ど掴めないまま。
こうなるとメッシが中央に寄っていってしまい、右を大きく空けることになるんですが、序盤はまったくそのエリアを利用することが出来ず、復帰後のダニエウ・アウベスがオーバーラップをかけることはほとんど無く、サイドバックの裏も利用できないままでした。イブラヒモビッチが右へ流れてボールを受ける回数が時間の経過と共に増えていったものの、ダニエウ・アウベスとイブラヒモビッチ、中にいるシャビやイニエスタ、あるいはメッシといった選手との間に距離があり、その三角形の中心には選手が容易に入り込んでコントロール出来るだけのスペースがあるにもかかわらず、誰も利用しない、入っていこうとしないため、右は孤立気味だったと言っていいのかもしれません。
左の高い位置もケイタとイニエスタがポジションチェンジをしながら利用していましたが、いつものようにきっちりと使い切れず、突破も難しくパスで逃げの姿勢を見せているばかりでした。少し下がってボールを受けて展開することははできるんですが、そこから縦への展開が狙えず、溜めている間に近い場所で裏を狙う選手が居ないのも、それを誘発する要因でもありましたし、ルビン・カザンが十分にサイドのケアをして、流れる選手にきっちりとついてくるのもありました。
中央にしても引いて守るルビン・カザンはディフェンスラインの前へ中盤をきっちりと下げ、バイタルエリアと俗に言われるスペースをきっちりと塞いでいる。メッシが入って利用しようとしても上手くいかないため、より下がって中盤を前に置いてボールを受けるようになってしまい、イブラヒモビッチとの距離が広がってしまった。イブラヒモビッチもカウンターの一歩目であれば、比較的緩く受けさせてもらえることもありましたが、サポートの距離が遠く密集しているため、正確直利から連動して裏を狙えませんでしたし、中盤の選手が持ったときに飛び出しても行けなかった。
徐々にルビン・カザンの守備は激しさを増していき、人数のかけ方も選手への当たり方も厳しくなっていきましたから、最初の部分でペースを握れず、形らしい形を見せてしまえなかったのは大きな痛手となりました。
ルビン・カザンに攻めきる意識は少なく、サイドを深くまでえぐっても、それ以上中へ入ることもなく、クロスも上げていかない事が多かった。タイミングを待っているようで、その時間帯が来るまではバックパスで最後尾に戻しても問題ないとしているようで、最初から念頭にあるのは、バルサのリズムを崩して守りやすくすること、カウンターの一点をどこかのタイミングで奪うこと、それだけでしょう。
例えば、ピケがカウンターを抑えに向かい、ボールを奪おうと不用意に足を出してしまう部分などが狙い目だったようです。カウンターになった時には、どうしてもセンターバックが一枚残っているフォワードへ対応しなければならないが、そうすると、ポストプレイ後に再び動き出されたときにスピードについていけず、裏を狙われてしまう。ピケの対応の仕方では、そのポストプレイすら必要なく数的不利を作りかねない、本当に不用意なものでした。プジョルは不用意に飛び込まずコントロールミスを誘う部分を持ち合わせていましたが、カウンターの一歩目を押さえるためにぶつかることが多く、もう片方がカバーリングに専念させなければならない。この時にトゥーレ・ヤヤが残ったエリアを埋めてくれているため、安定して防げていましたが、虎視眈々と一発のカウンターを狙われている意識を植え付けられたのは、後方からの攻め上がりや大胆さを奪うには十分で、術中に嵌っていました。
後半になってメッシのポジションが右に戻ってくれる過と思いきや、やはり前半通り中央でプレイするばかりで、高い位置すら取れない。三方向からの囲い込みもあり、ドリブルでも前へ持ち上がれずパスコースが少ない。イブラヒモビッチと近い関係を保っておかなければならないメッシが下がりすぎているため、他の選手たちが上がっていけないのもありますし、メッシがサイドからスタートしないことに関しても、サイドのケアがしっかりしていてマークに付かれてしまう、中央を二列で固められているため、外から中のドリブルが難しいのは解るんですが、運動量もスピードもなく、可能性は殆ど感じられませんでした。
代わりに上手くシャビが中央の小さな隙間に入っていくようになり、イブラヒモビッチと近い関係を保てって、細かいパスから裏を狙ったり崩しを狙えるように、多少なりました。ディフェンスラインの前は相変わらず詰まっているんですが、イニエスタも入っていく。メッシも入っていく回数は増え、イブラヒモビッチが前を向きながらプレイできる環境を徐々に作れている。これまでは背負った後ろ向きのプレイが多く、あるいはサイドに流れたプレイだけでした。が、ルビン・カザンの守備は見事。きっちりとディフェンスライン前のスペースを消し、だからといってずるずる下がるわけでもない。ペナルティエリア中に入らないようコントロールしながらも、入らなければならない場面では躊躇なく多くの人数を送り込み、人で溢れかえさせる。どんな状況でもカウンターの選手が睨みをきかせて、バルサに支配されていながらも、一発の恐怖を持たせた状態を保ち、一方的に押され続ける展開にはしない。
特に66分あたりから一斉に攻撃に出始めた切り替えの部分は見事で、それでも守備を考えたものでしたが、前へ向かう守備が増え、攻撃にも鋭さと人数をかけたものが出始めた。いくつか決定的な形を作られてしまいましたが、ビクトル・バルデスを中心に何とか守り切れたお陰で大惨事は免れましたが、本当に見事。
バルサは最後までディフェンスラインの裏へ抜ける選手がおらず、安全に繋いで崩したい意識が強い。裏へ抜けるとか、フォワードの位置にまで上がって体を張るプレイが少なく、イブラヒモビッチ一人しか居ないところへアーリークロスを上げても効果は薄い。もし追い越していく選手が居たとしても、使おうとする意識が少なく、ボールを失いたくない意識の方が強いように見えて、チャレンジしてませんね。裏のスペースが無く、難しいのは解るんですが、それでも使っていかなければ相手は何も怖くないわけですから。アンリの投入でその辺の変化を期待しましたが、時間も少なかく、効果的な働きを期待するのは難しかった。
こういう引き込まれてしまう試合展開が予想できただけに、開始早々の抜け出しから、イブラヒモビッチが一対一になった場面は決めておきたかった。あれさえ決めていれば、というのが決められないのがイブラヒモビッチなので仕方ないと諦めていますが、アンリも一本ありましたし。でもゴールに直結しそうだったのはその二つくらい。あともう一つ、キエフでの一戦が残っているんですが、その前にインテル戦を勝ち、ルビン・カザンと勝ち点で並ばないようにしなければならない。返す返すもカンプ・ノウでの敗戦が――。