■FC Barcelona 1 – 0 Real Madrid
観客に押されて積極的なスタートを切ったバルサでしたが、ペースを掴み切れていない序盤こそ相手にミスを誘い、選手に思い通りの戦い方をさせずに勢いを持続できていましたが、徐々に流れはレアル・マドリーへと傾いていっていました。昨季のように守備的な布陣を敷いていないマドリーがディフェンスラインを高く保ち、全体をコンパクトに保とうとしていることが流れを掴む要因の一つになっていました。
昨季はメッシが中央にポジションを移してピボーテの間を利用することで相手を混乱させていましたが、この試合ではディフェンスラインを押し上げられているためにピボーテとそこの間にスペースが少なかった。右サイドで窮屈なプレイを強いられていたメッシがポジションを中央に移しても、ボールを受ける頃にはピボーテとセンターバックを目の前に置かなければならず、ドリブルも前を向いてのパスも狙えませんでした。フォワードがメッシ、アンリ、イニエスタという構成で、前を向いた際に出来るパスコースは殆ど一つしかなく、高く保たれているラインの裏側をアンリこそが狙い続ける姿勢を持っていましたが、そこにしかないためにピボーテとセンターバックがコースを消すのは容易かった。
そうなってしまうとアンリを左に出してしまえない構成上、ワイドにボールを展開することが難しく、左右共に利用頻度が少なく、中央に人数が存在するマドリーの守備を広げることが出来ず、スペースを突いて上がってくるダニエウ・アウベスにしても、中の人数がいないためにクロスの狙い所が存在せず、効果的なボールを送り込むことが出来なかった。
レアル・マドリーは素早い攻撃を軸としたカウンターに近い狙いを持っていていましたね。レンジの長いパスで構築しながらサイドを変える。バルサがフォアチェックをしている関係からそれを一つかいくぐることが出来れば、近い位置にパスコースを見つけられなくとも、一つ飛ばしてしまえばスペースはある。上手く利用しながらスピードで上回っているフォワードへとボールを渡す。序盤こそピケがカバーに入り、クリスチアーノ・ロナウドを中盤やアビダルと挟む込もうとして、センターバックだけが直接対峙する形にはならず、挟み込むことで安定したボールコントロールをさせないよう努めていられましたが、幾つかの低い位置のミスが安定した守り外側にあって、流れを失わせる要因になっていました。パスミスやコントロールミス、原因は色々とありますが、カカとクリスチアーノ・ロナウドのスピードに対応しなければならない。ピケのスピードでは対応に苦慮してしまい、ボールを奪うために飛び込んでいけない。低い位置のミスであるが故にカバーも期待できない。リトリートしていくうちにマドリーの他の選手たちの上がりを助ける結果になり、守備は間に合わずにフリーでシュートを打たれる。もし早い段階でいくつもあったそのミスからのピンチをビクトル・バルデスが防いでいなければ、幾度となくこの形を作られていたかもしれません。
その後はマドリーが主導権を持った攻撃から、前戦の枚数を増やしてワイドに開いた四枚を並べてディフェンスラインの間に一人が入り込む。挟み込めるだけの余裕を与えないようにし、ワイドに利用する。サイドで人を引き出しておいて逆サイドにまで展開をするのは、単純に中へ送ったとしてもチャンスになるほどの人数がそこにいたからこそ。
バルサの守備ブロックは、高く保ってフォアチェックの助けをしつつ、攻撃的なポゼッションを上げていきたかったんですが、それを連続してされてしまったことで、後方へと押し下げられて守備の形を保ち続けるのが難しくなった。もちろんレアル・マドリーが前の四人と他の選手で分離しているのもあって、中盤に人数をかけていない。そのため、バルサの攻撃に対して、四人のブロックとその前に二人、もしくは三人を並べておける。そうなると、バルサが攻撃に移ってカウンターをしようとしたとしても、三枚のフォワードぐらいなもので、それがきっちりとフロントを抑えているのだから、ドリブルで抜いていく事は難しく、キープをして深く入り込めないため、ディフェンスラインも上げられない。
ただ、ハイペースだったことが祟ったのか、マドリーは徐々に選手をマークしていた距離が開き始め、きっちりとファウル無しで囲い込んで奪えていたものがファウルでしか止められなくなった。バルサが多少ワイドにボールを展開し始め、タッチライン際のプレイを増やし始めたのもそれに影響を与えたのかもしれませんが、チャビにマークに付いていたシャビ・アロンソの位置を見ていくとよく解るかもしれません。ただ、まだ中盤の選手たちとアンリとの位置関係が広いままで、ポストプレイではなく一発で裏へ抜けようとする動きからオフサイドにかかり続け、バルサが狙わなければならない、ポゼッションを高めて自分たちのスタイルを構築するのには不十分でしたね。
後半からはマドリーのペースが落ちたことよりも、バルサが特に改善されたように見え、サイドチェンジが使えるほどワイドに使う意識が出て、サイドバックの外側を利用しようとするようになった。そうすることで深くまで入り込むことが可能になり、中へ人数を入れるだけの時間も得られるようになる。徐々に土台ができはじめたところへイブラヒモビッチを投入して、ポゼッションの形を作り出したことで、中の人数と共にポストプレイで収めてボールを引き出す役割も担ってもらえるようになり、高い位置でいったんボールを収められるようになった。そしてゴールも得られた。クロスも中の動きも前半とは大きく違うものでしたね。
ただ気になることが一つあって、セルヒオ・ブスケツは前半の途中から何かを恐れているようなプレイをずっとし続けていました。プレスを受けていなくとも前を向こうとせず、全体的に前を向く意識が低いまま戻したり横に出したり。そのパススピードも遅く、ミスにもなり、ピンチも生んだ。守備にもぶつかりに行かず、後方のケアも上手くいっていない。早い段階で交代させても問題ないほど、目に見えて精神的なコンディションがよくなかったわけですから、できることなら退場前に何らかの行動を起こしておきたいところでした。あのハンドの判定も二枚のイエローカードも妥当なものですから退場の判断自体には問題なく、それを未然に防ぐ必要があっただけ。
退場後はケイタが一時的に移籍当初のようにアンカーを務めていたんですが、後方のケアが無く、フラットなディフェンスラインになってしまい、カウンターになったときに、サイドで一人かわされたあとのケアに向かえておらず、ピンチになってしまっていた。トゥーレ・ヤヤを投入したのは極めて妥当な判断で、素早くそれが出来たのは非常にいいことでしたが、準備が整っていたのなら、なおさら一歩早く対応替え着なかったのか、と思ってしまいます。
それからのバルサは前半のレアル・マドリーがしていたように、ディフェンダー四枚の前に三枚を並べて、守備の形を明確にしていました。高くディフェンスラインを保てず、人数をかけてくる攻撃に対して、引いて守ってペナルティエリア内で体を張る。サイドを使われているため、ディフェンスラインを下げざるを得ない。オフサイドを明確に取ろうとしているとは思えないものの、オフサイドを再三取ってもらえないため、下げざるを得ないのもある。守備に重心を置くのは仕方がないんですが、いつか突き崩されてしまうんじゃないかという恐怖もあったんですが、ラウールが入ったお陰で、中央にマドリーは人数が足りなくなった。引いてボールを受けたがるために前へ迫力が無くなり、ベンゼマもプレッシャーの多いところではなく、サイドのプレッシャーのない位置でプレイしたがる傾向があり、クリスチアーノ・ロナウドのように得点の可能性が一番高い位置で待っておくことをしてこないことが、少し対応を楽にしていました。そのため危険な位置でプレイされることが少なくなり、カカのドリブルが恐怖心を煽る程度で、あとはセットプレイでしょうか。ベンゼマは時間を追うごとに、きっちり中へ入ってくるようになり、危険なエリアでプレイするようになりましたが、効果的ではありませんでした。
バルサが守備に回ってもカウンターで得点を狙うことは難しく、イブラヒモビッチが前線でプレイし、その少し下にメッシが残っている程度。その二人だけで前へ向かうのは難しく、人数の少なくサポートがほとんど無い状況でよくキープを頑張っていたと思いますね。
徐々に時間の経過と共にその効果が少しずつ現れるようになり、メッシ、シャビ、イニエスタでキープしてボールを回し、時間を使って、ある程度崩せるようになった。奪われないボールコントロールをして、パスを回し、それでいて深くまでドリブルで入り込んで戻す。この三人がキープを徹底してしまえば奪うのは至難の業でラサナ・ディアラがキレてしまったのも理解できる気はしますが、試合を決定付けたのは彼の退場でしたね。
一気にマドリーは攻守両面において足が止まり、もうボールを奪えないと意識づけられてしまったようでした。
この試合を無失点で終えられたのは、カピタンとビクトル・バルデスのお陰。