■Real Madrid 3 – 0 Tenerife
前半だけのことをいえば、マドリーがするサッカーはメンバー表を眺めていた方が面白いと思えるくらいに退屈なものでした。テネリフェはプレイ精度こそ物足りないものの気持ちの面と動きでは十分すぎるほどに見る方を刺激してくれるので、そちらを目当てなら退屈はしないでしょう。
試合への入り方からテネリフェは思い切っていましたね。昇格クラブらしく引いて守るのではなく攻撃的な姿勢そのままに前から当たりに行くことが多く、それぞれが連動こそしていませんでしたが、きっちりと前へ向かう意識を削げていました。クリスチアーノ・ロナウドも囲い込むことでカウンターから突破を許してしまわないようにしていましたし、最初のファウルでクリスチアーノ・ロナウドが痛がる素振りをしたことに、それをやられたくない視が透けて見えるようでした。
思いっきり当たられる左側にポジションを取り続けることはそれほど無く、右や中央にポジションをある程度移してくれるお陰でベンゼマはこれまでの試合よりは多少動きやすそうでしたね。自分の得意な左に流れることが出来て、不慣れなゴール前に張り付かなくてもいい。ただ、マドリーの守備から攻撃へ移る動きが前半は最悪とも言っていい内容で、フォワードの三人が守備の際にチェイスをする出もなく戻ってプレスに参加するわけでもないから、ボールを奪ったとしても近い位置にパスコースが無く、テネリフェの守備と相まって長距離のパスを安定して狙えるほどの時間も得られなかった。カウンターに特化していれば、それでもなんとかやれるんでしょうが、そうではないベンゼマにロングボールを当てようとしたり、クリアで逃げるだけでは攻撃が立ち行かなくなるのは明らか。選手間が広く開いているため、攻撃に移ってしまえば後ろから上がってくる選手がおらず、長い距離のパスはカットされやすく、殆ど動きも見られなかった。
テネリフェはやはり力の差が見え、パスで崩して繋いでいけるだけの精度がないようにも見えました。高い位置でカウンター出来たり、精度を欠いたパスをカットしスピードに乗って攻められるようになってからは無理をしてでも中で繋ぐこともするようになり、それでリズムを作っていったようでした。連動性を持って攻撃を続けるだけの意識を持っていて、中盤も左サイドバックが動いているため、こぼれ球を拾う回数が多く、前半の主導権はテネリフェにあるようでした。もっと逆サイドを見る意識が徹底できていれば、片側に寄せて人数をかけて守るテネリフェとその状態から守備になるマドリーで渋滞しているサイドから逃れて幅広い攻撃が出来ていたかもしれません。それほど逆サイドへのスペースがあったんですが、パスの精度には乏しく、クロスのスピードも緩やかなものが殆どの状況ではチャンスにはなりきれなかったのかもしれませんが、果敢でいいですね。連動性もあり、サポートも出来ている。一人一人の間隔はいいものの、テクニックに問題があって、繋ぎきれないこともある。物足りない部分も多いものの、それを気持ちで補っているかのようなプレイの数々もいいですね。マドリーが全く駄目、と言うのもありますが、ミケル・アロンソは相変わらずさすがの働きでした。
クリスチアーノ・ロナウドはスペースが必要なプレイヤーで、中盤で形が作れず、良い形でボールをもらえない環境では苦しく、それが殆どの時間で続いていました。ボールを受けられないのであれば中に入って、得点を取ることに特化することができる選手でもあるんですが、形もなく前へ運ぶ選手が乏しい中ではそれをしてもどうにもならないわけで、彼がボールを受けなければならない場面は出てくる。ベンゼマの役割も似たようなものでドリブルで前へ運ぶ場面こそあっても他が動いていないからパスコースが無く自力でなんとかしなければならなくなる酷な環境でした。パスにしても動いてもらえない分、読まれてカットされやすく、ミスの印象を強く残してしまいますしね。
そんな中でも点が取れてしまうのがここ最近のマドリーで、例によってクリスチアーノ・ロナウドが横へスライドするドリブルからシュートまで持って行ったのはその典型的な形でしたね。それも決まらず、ラウールがこぼれ球に反応した彼らしいプレイも結局キーパーが防いだわけで、多少の活性化させる要素にはなったものの得点には至らず、ベンゼマはマークで動きを封じられ、クリスチアーノ・ロナウドの下がって受けようとしているが、他の動きが乏しいために精度が整わず、狙い所をはっきりとさせられている。ラサナ・ディアラもあまり動けず、前後のつなぎも出来ない。後半開始からカカとグティが入ったのも納得でしたね。
まだ交代から明確な形を作って流れを引き寄せる前に得点してしまうのが、最近のマドリーですね。個々の技術がしっかりしているからこそなんですが、テネリフェの頑張りとそれまでのさっぱりな流れを見る限りでは、この試合だけはこの形を見たくありませんでした。
先制点以後は、攻撃の繋ぎにカカが下がってくるようになり、最後尾からのパスを安定して預けられる場所が出来るようになった。クリアで単純に逃げるのではなく、繋げるようになったお陰でぶつ切りにならないまま攻撃へ出られるようになり、カカへ戻るのに合わせて相手を引き出しつつ繋ぎ、それがカカにまた戻されドリブルで上がっていける。一度預けているが故にスペースは十分に出来ており、それを上手く利用できるようになった。カカが下がって受けても、前の人数が減ったわけではなく、それが攻撃のスムーズさにも繋がっていましたね。交代したグラネロは下がっていたわけですし、同じく入ったグティは下がりきらないわけですから前に人数は増え、で、勿体ないミスから事故のような失点で二点差。
本来ならこれで勝負ありなんですが、テネリフェは最後までよく粘ってましたね。マドリーの攻撃にスピードが出てきて、全体が動くようにもなった。パスを繋いでいる間に後方から選手が上がってくるようになり、人数がかかるようになり、人が動いているからボールが動くようになる。テネリフェは人については守れていたものが、スペースを気にしなければならなくなり、スピードに乗ったドリブルも気にしなければならなくなって、攻撃に出られていたのが守備に忙殺されるようになり、スタミナも切れて前へ追い抜く動きは一時的に減って期待できなくなった。
気持ちはそれでも折れておらず、攻撃に出る姿勢をマドリーの攻撃を受けきった後から再び出すようになったのは驚きでしたね。十分に攻撃になっていてゴールを脅かすプレイも何度もあってカシージャスが連続してピンチを抑えきらなければ、どうなっていたことやら。もしくは、テネリフェにそれを決めきるだけの力があれば。
そこで決められなかったからこその三点目をカカに決められ、さすがに逆転は難しく同点も期待できなくなりましたが、諦めない姿勢はいいものですねぇ。