■Liverpool 4 – 0 Real Madrid
この試合中は、とにかくラサナ・ディアラはよく振り回されていました。リーガの試合では無敵の守備であるかのように感じるほどの彼も、リバプールの縦へ早い展開と、選手の持つ横へのスピードの両方へ対応することが困難で、潰すことも遅らせることも出来ずに苦労しているようでした。特に、ジェラードやバベルらの動きには手を焼いていて、最初はマンマーク気味にして引っ付いていく場面がしばしば見受けられましたが、スピードについていくのがやっとで、一つの切り返しで振り切られてしまっていました。そして外へと横の動きについていって、振り切られてしまうわけですから、中央で構えておかなければならない彼が中央におらず、本来ならもう一枚のピボーテであるガゴがそのスペースを埋めなければならなかったんですが、リバプールの縦の展開がそれをさせませんでしたし、スナイデルら前の選手が戻ることももちろん難しい状況にあるのは確か。そうなると、中央にいる選手にはセンターバックが対応しなければならず、一つかわされてしまっただけで、残る選手はキーパーだけ。非常に危険な守備を強いられていましたね。
危険な状況を作ったもう一つの要因は、マドリーの引いたディフェンスがリーガで復活を遂げた理由だったんですが、勝たなければならない試合で引いて守ることが許されず、全体が前に向かうとしているのも悪影響でした。攻撃の時にはディフェンスラインをハーフウェーライン近くにまで設定し、カウンターチームとしての戦い方を辞めてしまったようにポゼッションし押し込むかのような姿勢を見せながら、守備に回ったときにはペナルティエリア前までディフェンスラインを下げてしまう。なら全体が下がるかと言えばそうではなく、前の選手はフォアチェックを高く設定されていないリバプールの守備に対して行う。それを繰り返していけば前後が分離してしまうのは明らかで、リバプールの攻撃に対してラサナ・ディアラが右往左往しなければならず、そのスペースも埋められないのも明らか。リバプールにとって出所を抑えられることは恐怖でもなく、ロングフィードで勝負が出来るのだから、フォアチェックも大きな意味をなさない。
対するリバプールは、しっかりとカウンターにされそうになった瞬間に、マスチェラーノをはじめとして全員が守備の意識と切り替えを持って、ファーストチェックで遅らせてしまう。遅らせられないのならファウルできっちりと潰す。センターバックの所に来るまでに潰してしまうのだから、失敗したとしてもその後ろにいる選手がカバーすることは容易く、安定感の違いは一目瞭然。フォワードもディフェンスをしますが、追い回すよりも重要なポイントを抑えている、その抑える一点を明確に決めていた戦術の勝利でしょう。
抑える一点は、恐らくラサナ・ディアラ。彼のカバーは的確でポジショニングも抜群でスピードもある。守備においては非常に重要な存在で、一人で中盤の底を担当できるくらいの選手なんですが、それだけに攻守両面でボールの近くにいることが多く、さらにボールを触る回数も多くなる。もちろん、守備から攻撃に移る際に最も多くなるんですが、徹底してその部分にプレッシャーがかかるようにしていました。もちろん同じような役割を担っているガゴの所にも、プレッシャーを強くかけるようにしているように見えました。十分なテクニックとスピードもあって攻撃面でのセンスも持ち合わせているんですが、プレッシャーのある中でのボールの運び方が解らず、ポゼッションを狙う上では大きなブレーキになっていました。さらに、他の選手が持っているときもサポートに向かうんですが、その際にマーカーも連れてきてしまうので、よりパサーの選択肢を狭めている結果にもなり、パスの間隔をも詰めてしまっていた。
慣れるまでの時間がもうちょっとあれば、立て直すことは出来たんでしょうが、大きな問題を抱えていたがために、先制点となった部分で大きな失敗をしてしまいましたね。
ラサナ・ディアラは人につくことばかりを意識しすぎていて、クリア同然のロングフィードの落下点を意識しておらず、遙か後方に落としてしまっていました。どれだけ彼が混乱していたかがそれだけでわかるようなもので、その時にカンナバーロがカバーをしてヘディングにいかなかったことも全体の混乱ぶりを表しているかのようでもありました。ただ、その後のギャンブルなクリアをしようとした姿は頂けず、ペペが安易に倒れてしまったこともお粗末なプレイでした。あれがリーガの試合であればファウルを取ってもらえたかもしれませんが、審判の基準がリーガと同一のものではない国際大会だということを理解していなければなりませんでした。
ただ、あの段階でリバプールの選手が、きっちりと三人向かっていることこそが得点に繋がった全てで、この辺を逃さないところがチャンピオンズリーグに強いといわれる所以でしょうね。
あとの得点部分を振り返るとすると、ペナルティキックになった場面は不運としかいいようがないようにも見えますが、引いた映像で見れば、腕がボールの進行方向に向かって明確に動いている姿は心象が悪く、体に腕が引っ付いたまま方が動いているならともかく、離れてしまっていたところにファウルの笛を吹かれる要素があったのかもしれません。そしてペナルティエリア内だったのは間違いが無く、あのプレイにカードが出される必要はないんですが、ファウルのカードか、抗議のカードなのか、自分には解りませんのでその辺は割愛。そしてPKで顕著だったのが、蹴る側、つまりリバプールの選手たちが全力で詰めに走っているのに対してマドリーの選手たちが、もう立っているだけ、決められるのが前提とした守り方をしていた、その諦め方がこの点差を呼び込んでしまったようでした。
二点を取った段階から、リバプールはピボーテへの圧力も状況に応じて減らして、自陣深くにラインを二つ形成し、完全なカウンターに切り替え戦い方になりました。お陰で、マドリーがバランスを崩すきっかけになったカウンターを捨てて攻撃に自分たちでポゼッションし崩していく、そのやり方をさせ、自分たちはボールを回す位置を下げて、ディフェンスラインとその一つ前で回しながらマドリーを引き出す。自陣でボールを回している時間が長いんですが、そこへプレッシャーをかけていくには全体を前がかりにしなければならない。でもその間にもフェルナンド・トーレスや、バベル、ジェラードらは飛び出す素振りを見せていて、迂闊にディフェンスラインを上げて前からプレスをするのを手助けしようものなら、一発のフィードで裏を取られる。やりたいことをやらせてもらえない、ジレンマを抱えているようでした。
三点目の場面は、ラサナ・ディアラがサイドに引っ張られているのに、ガゴが中央を埋めることがなかった。左サイドに入ったマルセロもサイドバックのカバーに向かわなかった。お陰で、エインセとカンナバーロとの間にスペースが出来、しかもそれは一番致命的なキーパーの真正面に進入できるものを作っていた。四点目は仕方のないものとして割り切るしかないでしょう。
お互いの長所を消し合うガチガチの試合になるかと思いきや、相手の長所を消すことが出来ていたのはリバプールだけで、その仕組まれた土俵の上で右往左往しているのがマドリーだった、それだけでしょう。何度も何度も流れるような展開からシュートに持っていったリバプールの攻撃は、素晴らしいものでした。
あとは、ラサナ・ディアラがここまでチームを引っ張ってきたけれど、戦い方によっては大きなブレーキになりかねないということも判明してしまいましたね。素晴らしい選手なんだけど、周囲との協力がもっともっと必要でしょう。マドリーがカウンターを捨てるのならば、特に。
ただ、日程が楽になってリーガ一本に絞れるようになったのは脅威ですね。
バルサがどうなるかは知りませんが。