2008 年 6 月 のアーカイブ

EURO2008 ロシア対スウェーデン / グループD

2008 年 6 月 19 日 木曜日

■Russia 2 – 0 Sweden
ロシアがここまで魅力的なサッカーをするとは思っていませんでした。この大会で最も現実的で勝つサッカーをしているのはオランダでしょうが、それが魅力的ではないのはカウンターによってポジションを崩すことはあっても、彼らが持っていたトータルフットボールを捨ててしまったサッカーだから。これはあくまで個人的な感想で、オランダのサッカーが魅力的だと言う人もいるでしょうが、あれだけの選手を集めたチームがカウンター主体で戦うことの違和感がそう言わせるんです。

ロシアの前半は、攻撃の意識を強く持ち、全員がサイドに開き全員が中に入る、全員がボールを追い越し、全員が試みる意識を持っていた。パス交換のスピードがあまりにも速いのは、ポジショニングがいいからではなくポジションを取る動きが多く速く的確だから。どんどんとボールを動かしながら人が最も動き、混乱するスウェーデンの守備は、自分のゾーンに入ってくる人数が一人ではなく複数でマークに付ききれず、さらにそのマークに付くべき選手がすぐに自分のゾーンから離れてしまう。そんな状態で強固な守備を築けるはずがなく、運動量を同じように上げてマークをしようとしても、スウェーデンの攻撃陣も全て投入しなければ防ぐことは出来なかったでしょう。ただそれには難点もあって、ロシアの運動量は、前半だけで動きの少ない試合であれば一試合分に相当するほどに動いていますから、その影響を受けて前半終了間際の運動量の低下とスウェーデンの決定的なチャンスを数度作られる要因になったわけですね。後半になってから、ボールを動かす動きが減ったことや左右に大きく開く動きが減ったのもその影響でもありますし、前半と後半のプランを変えてしまったからでもあります。
ロシアが二点目を奪えたことでスウェーデンは勝ち上がるために二点が必要になった。そうなれば一点が必要なだけとは違い、攻撃に人数を多く出さざるを得ませんから、ロシアはカウンターによってもう一点を狙うだけでよくなる。しっかりとしたゾーンを形成しながら、プレスのタイミングを間違わないように連動して仕掛け、奪えばカウンター一本。こうなると魅力的なサッカーとはほど遠いやり方になってしまうので、興味は一気に薄れてしまうんですが、興味がスウェーデン側に移行しないのもまたこのチームのサッカーが面白くないから。
ラーションの動きの質はあまりにも素晴らしくて、彼一人が大きなアクセントになっているのは事実で、テクニックやスピードでそれをしているのではなくて、オフ・ザ・ボールの動きでチーム全体を動かすサッカーをしているんですね。でも彼が活かすべきはずのイブラヒモビッチのコンディションがあまりにも悪く、運動量が少なく、パスを出した後の動きが無く、パスを受けるときの動きもない。ここのだけではなく、スウェーデン全体の関係が、パスの出し手は一つでも早く先にと焦りから前への意識が強すぎるパスを出し、受け手は何とか確実につなぎたい、ボールを触ってなんとかしたいという意識から足下に受けたがる。意識のずれが攻撃の歯車をかみ合わなくしていて、状態を悪化させていましたね。
その意識のずれを作り出したり、意表をつく戦い方や試合中に戦術の思い切った転換をしたり、というところはヒディンク監督らしいやりかた。まぁ、とんでもない金額の報奨金の力ともいわれるかもしれませんがw

EURO2008 オランダ対ルーマニア / グループC

2008 年 6 月 18 日 水曜日

■Netherlands 2 – 0 Romania
クロアチアはスターティングメンバーを大きく変更をしても、自分たちのスタイルを殆ど変えることなくサッカーを進めることが出来、ポルトガルは全く自分たちのスタイルを作れなかった。オランダはどちらに転ぶのか、と見ていたんですが、どちらかといえばオランダは一軍でも二軍でもなくその中間に近い構成でした。もちろんここでいう二軍とは実力が落ちるとかそういう意味ではないので悪しからずご了承ください。

オランダはブーラルーズをそのまま起用しているところに、右サイドバックの適材がいないのではないかと勘ぐってしまうんですが、いざとなれば途中出場をしたメルヒオット以外にもナイジェル・デ・ヨングもオーイエルもできますから、選手が居ないわけではない。でも彼らが入ったときに今のスタイルを続けられない、ということなんでしょう。メルヒオットにしても堅固な守備からカウンター、というのにはあまり向いているとは思えず、どちらかといえば、今日は出場しませんでしたが、ジオことファン・ブロンクホルストの役割を右から担う方が合っているのかもしれません。でも不思議なもので、バベルが怪我をしなければ、ここの部分にほころびが出来ていたかもしれないんですよね。ブーラルーズは追加招集メンバーですから。
もう一つ書くと、オランダの守備はある程度の高さを無理矢理維持しているように見えました。後半のルーマニアが攻勢に出たあと、オフサイドの笛が増えたように思うんですが、あれは精度とタイミングの問題であって、統率され尽くしたラインでオフサイドを取っているようには見えず、もし裏を狙われたら、という部分のケアがあまり出来ていませんでしたね。カウンターへの対処も戻りは速くても組織だって出来ておらず、自分たちが得点している形を相手にやられたときに、そのままそっくり失点してしまいかねない危うさを感じました。ルーマニアの少ない人数の攻めでそれですから、人数をかけられるとかなり辛いんじゃないでしょうか。

ルーマニアのディフェンスは4-1-4-1を形成して、キヴをこの試合はアンカーで起用していました。左に入ることが多かったムトゥは守備での貢献が少なく、そこを突かれて何度か形を作られてしまいましたが、それ以外の部分では、二つの4人のラインが綺麗に構成されていて、距離も非常に近く、縦パスだけではずるずると下がらない堅固な守備ができていました。中盤でパスを収めさせて前に展開させるのも少なく、バックパスからロングボールは許容範囲でショートパスを繋がれたのは数える程度。決定的なチャンスを作られたもの、となるとさらに少なくてフンテラールにポストプレイをさせてロッベンがシュートを打った場面ぐらいでしょうか。
オランダの攻撃が、これまでの二試合とは違い、裏を狙う回数が少なくウイングもルーマニアのディフェンスに阻まれてボールをもらうことが難しく開始位置が低くなっていました。サイドでのドリブルも縦へのドリブルは許してもらえているような雰囲気でしたが、クロスに対して自信のあるルーマニアからすれば、それで十分なディフェンス。
これまで前に出てきた相手に対して鋭いカウンターで得点を挙げていただけに、どれだけ引いて守る相手を崩して点を決めることが出来るのかと思っていたら、得点は結局カウンターからでしたね。後半開始早々にルーマニアが人数をかけた攻撃に移行してきたところへ、二回連続してファン・ペルシーが裏を取って、そのあとにカウンター。相手の自信があるハイボールで勝負せず、グラウンダーのクロスを入れたのが功を奏しただけで、ちょっと遅れたもののカウンターの形であることには違いが無く、二点目も攻守両面に動いき精神的にも疲弊したルーマニアの足が止まっていたので、崩しきった得点、というのはありませんでした。その辺はがっかりで、これから先のトーナメントを占う上では不安点。一発勝負のトーナメントとグループリーグでは勝負の質が違いますからね。崩しきれなくて困る可能性が高いのはスペイン、ポルトガル、オランダのようなチーム。イタリアやドイツは崩しきれなくてPK戦になっても構わないメンタリティがありますから。スペインはPKの名手が多い国だからなんとかなるかもしれませんけどね。キーパーもキーパーなんで。

EURO2008 フランス対イタリア / グループC

2008 年 6 月 18 日 水曜日

■France 0 – 2 Italy
フランスがスターティングメンバーを変更してきたのは結果からいうと失敗しましたが、試みとしては悪くなかったと思ってます。ただディフェンスラインのデュラムを下げてアビダルにしたことは解せないんですよね。テュラム本人が前回の試合後に「ミスをした」と認めたように彼の失敗があったとしても、キャプテンを務める選手を一試合のミスで外すべきではなく、ギャラスも経験のある選手ですが、イタリアのやり方を熟知しているテュラムを置いておく方が、右にさっぱりだったサニョルに代えてクレルク、左にエヴラと攻撃に特徴を出せる二人を入れたのだから、カバーリングの面で安定していたかもしれませんね。
そこよりも本来なら変えるべき部分があって、ゲームメイクを担当する部分を、3試合通して一切いじってこなかったことでしょう。ヴィエラを招集してしまったことでまったくバックアッパーがいなかったこともそうですが、この低い位置でゲームを組み立てられるだけの人材を配し、前の豪華な人材を行かすことを考えなかったのがドメネクの采配ミス。トゥラランとマケレレの繋ぎでは、確実なパスこそ出ても長い距離にピンポイントで出せるわけではありませんから、大胆なサイドチェンジが出来ず裏へのパスも出てこない。だからといって、アンリやベンゼマがディフェンダーを背負ってプレイして特徴が出せるわけでもない。サイドからクロスを入れてもヘディングも強くないから足下へのグラウンダーを多用しなければならない。選手起用に大きな矛盾があるように思えてならないんですよね。なら何故トレセゲを入れておかなかったのか、とかトゥラランに替えてナスリを先発させ、マケレレと縦関係を作りつつゲームメイクをさせるとか、前二試合で攻撃が機能していなかったのだから、改善すべきでしょう。
対するイタリアのゲームメイクは、ピルロが担っているわけですが、低い位置から組み立てられることで、ロングパスもショートパスも変化がつけられる。この試合は前の運動量が少なく、力を存分に発揮していたとは思いませんが、この位置からでも自分たちの形でスタートできるのは大きく、ピルロを封じてもデ・ロッシが代わりにパスを出せるのも大きい。守備も安定してこなせてパスも出せる、そういう違いですね、この試合は。どちらか一方だけでは駄目なんです。

試合の流れを決めてしまったのが23分頃のPKでしょうか。アビダルがした行為は、ファウルに相当してPKを与えられるには十分なプレイでしたし、シュート体制に入っていましたから、カードが出てもおかしくはなかった。でもレッドカードを出すべきでしょうか。得点チャンスを潰したことはPKを与えることで補われていて、それにイエローカードを出して警告をすることでペナルティを与える。それでも十分なジャッジだったのかもしれません。でも、あれはあまりにも決定的すぎた場面だったことや、トニが前でアビダルが後ろ、という位置関係も最悪なものだったから、レッドカードであっても文句の言えるようなものではありません。ただ、試合は壊れましたね。
あれ以降、ピルロが自由にボールを持てるようになり、持てない場合にはデ・ロッシがボールを持てるようになる。余裕を持ちすぎたイタリアの選手たちはリスクを冒してオーバーラップをしなくなり、ゲームを支配し続けるチャンスを得ながら、それをしようとしなくなってしまった。守備でも運動量が落ちてプレスに行かず、ラインを整えて自分のゾーンを維持するだけ。ボールに向かっていないから、クロスを上げられる回数が増えて、下手をすればチェコの二の舞になることだってあり得たんです。お粗末なディフェンスを割れなかったのもフランスで、彼らはトルコにはなれなかった。あそこまでの必死さも可能性もなかった。
フランスにツキがなかったと言う人がいるかもしれない。でもツキを呼び込むだけの作業をしてこなかったんだと自分は思っています。あれだけの要改善点がありながら、そこ以外を改善してもどうしようもなく、ベンゼマのシュートが入っていれば、とか言ったとしても、クペが防いだ決定的なシュートの数を考えれば、それも言えません。
本当にツキがなかったのはルカ・トニ。彼のゴールが一本でも決まっていれば、これから先のイタリアにとって、ピルロが出場停止でも明るい材料になったんですが。

EURO2008 ポーランド対クロアチア / グループB

2008 年 6 月 17 日 火曜日

■Poland 0 – 1 Croatia
4-2-3-1で戦うのなら、ユーロのグループリーグを通してこの試合のようにスモラレクはトップで使わない方がよかったんじゃないでしょうか。彼の身長もありますが、動きの質が1トップには向いておらず、ポストプレイヤーでも純粋なストライカーでもないんです。他の選手と連動して動き、出来たスペースを利用して得点を奪うタイプなので、どちらかといえば、セカンドトップに彼を置いて、もう一枚下の位置か左右どちらかのミッドフィールダーの位置でゲームをコントロールさせた方が、ポーランド代表のやり方からすると活きたんでしょうね。それが出来なかったのは、プレイメイカーがロジェール・ゲレーロで、彼の動きの質を見る限りでは守備を免除されて始めて輝くことの出来るタイプのようですから、トップ下に置いておかなければ輝くことが出来ない、一枚下げてしまうとあのトリッキーなプレイもドリブルも、ピンチを招きかねない位置ですることになるからリスクが高い、守備もあまりしてくれないだろうからもう一枚の選手に相当な守備能力と運動量がなければならない、というわけですね。左に流れることが多いので左で使えればよかったんですが、クジノベクを外すくらいならロジェール・ゲレーロを起用しない方を選択したほうがチームの完成度としていいわけで、実際に開幕戦はそうした、ということなんでしょう。

クロアチアは一位勝ち抜けを決めていたので、先日のポルトガル同様にリザーブ主体でしたが、ポルトガルと違うのはそれぞれがきちんと機能していたということ。さすがにペトリッチやクラスニッチはオリッチのような圧倒的なプレッシングをする選手ではありませんから、前から積極的にプレスをかけてボールを奪い素早いカウンターの形は見られませんでしたが、モドリッチの陰に隠れてしまいがちのラキティッチの献身的な上下動とゲームメイクが効果的で、上手く左からゲームを組み立ててましたね。あとはペトリッチがボールを持ち上がってラストパスを出すなど、ゲームをコントロールしていたのはこの二人。プラニッチのオーバーラップが効果的だったり、中央の底でゲームを支えていた二人も見事で、ニコ・コヴァチとモドリッチが組んでいたときとはタイプが違いますが、完成度の高さは恐るべきものがありますね。右サイドバックのシミッチも衰えたとはいえタイミングは的確。ボールコントロール一つ、状況判断一つとってもポーランドを圧倒していたのは事実で、ポルトガルがした不甲斐なく、試合のコンセプトも見えなかった試合とは雲泥の差がありますね。トーナメントへ出て決勝まで行こうとするのであれば、レギュラーメンバーに怪我や累積による出場停止で欠員が出たときも、遜色なく埋められるメンバーが必要になってきますが、クロアチアにその心配はないようですね。唯一はプラニッチが務める左サイドバックだけが明確な控えを提示できていないことでしょうか。何かあった場合にはシムニッチが務めることになると思うんですが、攻撃力はまるでプラニッチに及びませんし運動量も同じですね。守備能力だけが上回るだけ、と考えればここにもし何かがあればクロアチアは、同じサッカーを継続できるのだろうかと心配になりますが、それ以外のポジションに関してはその必要もなさそうです。

EURO2008 オーストリア対ドイツ / グループB

2008 年 6 月 17 日 火曜日

■Austria 0 – 1 Germany
ドイツ代表は開始からあまり攻めることは出来ず、殆どの時間帯においてオーストリアのペースでしたね。それはドイツが引き分け以上でトーナメントへの進出が出来ることと無関係ではなく、勝てば進出を決めることが出来るオーストリアとは全く別のメンタリティで試合に臨んでいたからでしょう。でも、ドイツはポルトガルのようにメンバーを落としていたわけでもなく、勝つべきだというのは意識として持っていたんでしょうが、3-4-3で挑んできたオーストリアにまるで形を作らせてもらえませんでした。
オーストリアの3-4-3は、守備時には5バックにも近い形になり、運動量が少なかったドイツの攻撃陣と相まって大渋滞をディフェンスラインに作り出していました。それをこじ開けるの非常に難しく、マリオ・ゴメスやクローゼらがもっと掻き回すように動き回り、的確に裏のスペースを狙えば、多少はチャンスを釣ることが出来たんでしょうが、これまでの試合同様に動きが堅い。カウンターをしてオーストリアの守備が整う前に攻撃をしようとしても、3トップが高い位置から中央に絞りがちなドイツのサイドバックのスペースを利用し、そこへウイングバックが加わって人数をかけてサイドを崩すオーストリアのやり方に、両サイドハーフですらディフェンスラインに吸収されてしまっていたドイツでは鋭いカウンターができるはずもなく、連続してクロスを入れられることからフォワードも下がってしまいさらに連続して攻撃を受ける悪循環を作ってしまっていました。それでも失点をぎりぎりのところでしなかったのはドイツそのものなんですけどね。危うかったのは事実。
両フォワードはオフサイドを気にして一歩目の出だしが遅く、ポストプレイを要求するパスにしても一歩目の出だしが遅く、フォワードが主導権を持ったパスではなく、パスの出し手が主導権を持ったパスだとはっきりして、出てきたパスに反応しているだけ。それでも調子がよければ相手より先に触ることが出来るんでしょうが、一歩が明らかに遅いんで、ミスになってしまうことが多かった。さらにはクローゼはゴメスと組んでいると相手を活かすためだけのプレイをしているように見え、もっと効果的な動きが出来るはずなのにそれをしないでいる時間が長いんですよね。ポドルスキと組んだあとはシュートに持っていける動きをするようになりましたから、ゴメスにかかっているプレッシャーを外すためにも得点を取らせておきたい、と気持ちの表れなのかもしれません。ゴメスの調子を上げることがチームのプラスになるとしても、クローゼの積極さが出てきた方がよりドイツのためになると思うんですが……。

この試合の行方を決定づけたのが選手や監督ではなく、審判だったのは非常に残念なことです。国際大会におけるスペイン人審判の異質さは際だっていて、今大会、メフート・ゴンザレス審判が裁いた試合がもう一つあったと思いますが、他の国の審判に比べファウルの基準がずれていてカードの枚数も多かった。いい評判はないですね、スペイン人審判は。
そしてこの試合でも、理解しがたい形で両チームの監督を共に退席処分にしてしまい、その後の展開を大きく変えてしまっていました。特にオーストリアにとってこれは痛い判断で、3-4-3の形で奇襲をかけるほどのことをやったものを、アシスタントコーチがどれだけ把握し、それに添った選手交代が出来たのか疑問の残るところで、細かな部分では、後半になってディフェンスラインから早いボールを展開してサイドを切り崩す場面が減ったのも、もしかすると監督がいなくなった影響なのかもしれません。戦術家としての顔を失いつつあるレーブ監督がいなくなってもドイツはあまり影響を受けませんでしたが、オーストリアにとっては致命傷にも近かった。お願いだから、リーガ・エスパニョーラでそうであるように、試合を壊しまくらないでください。イトゥラルデ・ゴンザレスよりはこれでもましだとはいえ、スペイン人審判は駄目だよ、大事な試合で起用しては。

バラックのフリーキックが決まったときのオーストリアの対応はあまりにもお粗末。ボールを動かしたあとに詰める選手がおらず、あれではプレッシャーがないのと同じだから簡単にゴールを決められて当たり前。守備の綺麗な形は両チーム共になく、人数をかけて攻撃を受け止めるだけ。状況に合わせた守備も少なく、少なくとも守備の部分の見所は少ない試合でした。攻撃はオーストリアの前半はサイドの徹底利用で興味深かったんですが、後半、特に失点をしてから積極性を失って慎重なパスに終始してしまったんで、興味を失いました。

EURO2008 スイス対ポルトガル / グループA

2008 年 6 月 16 日 月曜日

■Swiss 2 – 0 Portugal
両チームが敗退とトーナメント進出を決めていて、本来はこの試合に価値はなく見るほどのこともなかったんですが、一応見ておきました。何のことはない、開催国のためだけの試合でしたけどね。

ポルトガルはメンバーを大幅に入れ替えて、これまでの試合で出られていなかった選手を中心に据えて、継続出場はペペとパウロ・フェレイラとリカルドぐらいでしょうか。対するスイスはフォワードに怪我人が多く出ているものの、キーパーのズベルビューラーとフォンランテンだけが入れ替わった程度。いくらリザーブだとはいえ、ポルトガルの選手たちでしたから、実力が大きく落ちるわけでも戦術的に大きく変わってしまうわけでもなく、勝ちを開催国に譲るつもりでこのメンバーを選んだのではないことは、ファウル数や出されたイエローカードの数から見ても明らかでしょう。
ポルトガルの選手たちがそれでも上手くいっていなかったのはディフェンスラインの部分が不安定だったのが大きかったのかもしれません。ペペはずっと出続けていますが、彼がディフェンスリーダーになれるほどの経験を積んでおらず、ラインコントロールもいまいち。ブルーノ・アウベスにしても高さやパワーはあっても横の動きがよくなく、試合勘の問題から不安定でしたし、右のミゲウにしても同じですね。いくつものパスミスをして決定的チャンスを与えてしまうミスも犯し、セットプレイでは簡単にシュートをされてリカルドが止めなければ、もっと早い段階で失点していてもおかしくなかった。中盤の底を担当したフェルナンド・メイラも悪くはないんですが、やはりスイス側が持つモチベーションと比べると、ポルトガルの選手が持つそれは弱いんですヨ。どこかきちんと統率しきれていない印象が強かったんですが、最後のPKだけはポルトガルのミスではありません。あれは共催国からのプレゼントでしかなく、ああいった行為がオーストリア対ポーランドでもありましたが、大会の価値とチームが勝利した価値を落としているのを気付かないのだろうか。本当に残念でならない。

ポルトガルの攻めも守備も、前からの切り替えが非常に遅く、デコを中心としたメンバーがフォアチェックからコースを限定してプレスをすることでディフェンスラインの負担を軽くするんですが、今日の中盤はまるでその役目を担えておらず、どちらかといえばフォアチェックよりも下がって陣形を整えようとする意識の方が強いようでした。さらにクアレスマにしてもナニにしても結果を残してスターティングメンバーとして次節も出場したいという意識が強すぎて守備が雑でしたから、その部分の負担が他にかかっていたのもあります。ナニもクアレスマもドリブルの技術は素晴らしくてもバランス感覚はまだまだ荒削りで、スローダウンさせることで後ろの上がりを促して人数を多くした攻めを多用してもよかったように思いますし、エウデル・ポスチガも序盤は特に酷くて、得点を焦るあまりオフサイドエリアに出続けて気付かないままボールを要求し続けていたり、相手のミスから得点チャンスをプレゼントされた場面でも迂闊すぎて得点できなかったり、と印象が悪くなるプレイばかりで、彼が今大会の残りに出てくることはなさそうです。
前半で得点できるチャンスは多かったんですけどね。それをものに出来ない選手たちが控えにいてもジョーカーとしては使えませんから、スタメンが頑張るしかない。もしスタメンが完璧に抑え込まれたらあのメンバーで変化がつけられるのか、と考えると、トーナメントを勝ち抜いて優勝するためには不満の残る出来でしたね。主力を休ませられたのが好材料だっただけで。

EURO2008 トルコ対チェコ / グループA

2008 年 6 月 16 日 月曜日

■Turkey 3 – 2 Czech
グループリーグ最終節に相応しい劇的な幕切れと後味の悪さ。

序盤のペースは完全にチェコのもので、中への意識が強いトルコのパスをチェコの綺麗な4-1-4-1のラインが中盤のスペースとパスコースを消し、中盤から前へボールを出させないプレスを完全にこなしていました。全体で見るとトルコの方が大幅にパスの成功数とポゼッションでは上回っているんですが、効果的なパスをさせていなかったという点ではチェコの守備が上回っていました。それが続いたのは、後半が開始してチェコ側が選手交代を利用してフォーメーションを4-3-3に近い形へと変化させるまでで、それ以降は、サイドから攻める意識が強くなったトルコの攻撃を、4-1-4-1のラインを形成したのでは止められませんから、徐々に統制されたラインが崩れて、ボールが来る、来ないに関わらず、ペナルティエリア内に選手を入れてしまうことが多くなってしまい、深い位置までえぐられることでクロスを入れられる回数も増えてしまっていました。それがあのチェフのミスに繋がったのかもしれません。雨が降っていなければキャッチングミスをしなかったんでしょうが、天候とボールのコンディションを考えれば、あれは単なるミスでしかなく、それを生み出したのは、捨て身の攻撃で延々と攻撃を続けるトルコが圧倒的にボールを支配してチェコは攻撃が出来ず完全に受け身に回ってしまっていたことでしょう。キーパーとしてはその流れを断ち切るために、キャッチングをして選手を落ち着かせ、フォーメーションを整える時間を得ようとした。ただそれだけのことがあれだけの結果を生んでしまったわけですね。そこに至るまでのトルコの攻撃は右からのクロスは数多く入れられていましたが、カズムとアルダが右サイドでプレイし、ローテーションのように動いていましたが、既に飽和状態になっており、そこへアルティントップも来て、事実上三枚が右サイドの高い位置でプレイしていたわけですから、あまり上手くいっていなかった。アルティントップが中へ絞ってバランスを取る動きになったときは上手く回っていたんですが、それでも縦関係の二枚ではなく同位置での二枚ですから、連携はいまいち。抑えられるだけの要素は残っていて、あと数分を耐えることが出来ていれば、焦りから自滅していた可能性すら見えてきていました。それだけに惜しく、失点の動揺からあっという間に逆転されてしまったのも――。

序盤のチェコの攻撃は、縦へのロングパスからコレルがポストプレイをし、右ウイングとセカンドトップを兼任していたシオンコのフリーランニングで攻めたり、クロスを送り込むことで、少ない手数で形を作っていましたが、左からの形は極端に少なく、プラシルのフィジカルの弱さを突かれて抑えられてしまっていましたね。両サイドが機能していればもっと楽に攻めることが出来ていたんでしょうが、右からだけでも得点を出来たのはマテヨフスキーがきっちりと中に入ったシオンコの代わりに右へ流れたり、パスを散らす役目を担い、バランスを取ることが出来たからでしょう。ヤロリームになってからこの部分が弱くなり、それが押し込まれる要因にもなっていたようです。怪我での交代だったので、どうしようもない部分ですが、押し込まれてしまうようになった段階で足の速いバロシュやスヴェルコシュ、フェニンらのいずれかを投入して、クリアボールを人へ狙うのではなくスペースへ狙い、選手を走らせることで、状況を打開してもよかったですし、クリアボールの精度が落ちてこれるに収まらなくなったり、コレルが守備に戻ってしまって前に人がいなくなった時点で何らかの手を打って、連続して攻撃を受け続ける状況から解放されるように手を打ちたかった。特にチェコはまだ交代枠が残ってましたからね。

終了間際のヴォルカンがやったコレルへのプレイは状況を考えればレッドカードが出てもしかたがなく、この試合の逆転勝利の価値をも落としかねない悪いもの。それが最初に書いた後味の悪さなんですが、あのプレイはしっかりとボールが外に出たあとのプレイでした? よく見えなかった(確認する時間もない)んですが、ボールがラインを割るまでにそれなりの時間があった部分なので気になっているんですが、ボールが外に出る前にやってしまっていればPKだってあり得たはずで、せっかくの勝利をふいにしかねない軽率なプレイでした。勝っていてもエリア内でキーパーが交代枠を使い切っているのにやるべきでない。もしチェコが焦らず正確なミドルシュートでも打てていれば、圧倒的に優位な状態でPKなどまで持ち込めてしまえるのだから。